第37話 契約更新
泣き腫らした目をしていても、佐倉はやっぱり綺麗だった。
泣くだけ泣いて、やっと笑顔を見せると、立ち上がって居住まいを正した。
「付き合ったら私、もっと我儘言うと思う」
「別に構わないぞ」
「私、独占欲強いから、美旗さんや明梨ちゃんと仲良くすると不機嫌になると思う」
「気を付けるよ」
「これでも一応、我慢してたけど、ベタベタ甘えるかも知れない」
「何それ? ご褒美かよ」
「いいの?」
「全然構わん」
また泣き出す。
「おい、泣くなよ」
「らって、勝手に涙が出りゅう」
……出りゅうはヤメロ。
「門限は厳しいから、夜遊びは出来ないけれど」
「学校で会えて、帰り道に話せたらそれでいい」
「欲求不満になって、浮気したりしない?」
「佐倉みたいな彼女がいて、浮気とか有り得んだろ」
「私の胸、小さいけど嫌じゃない?」
「それはちょっと」
ほんの冗談を交えたつもりだったのに、佐倉は途端に不安そうな顔になる。
俺は佐倉の頭にチョップを入れた。
不安そうな顔が、拗ねたものになる。
心持ち唇を尖らせて、上目遣いで窺うように俺を見る。
「俺はお前の全部が好きだし」
恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「誠君って、呼んでいい?」
「寧ろ呼んでくれ」
「他の子には呼ばせないで」
「判ってる」
「……じゃあ、いつもの私に戻るから」
佐倉はそう言って俺から一歩離れると、いつものように凛々しい顔で、そのくせ、いつもより愛らしい表情で告げる。
「私と付き合うことを許可します」
佐倉は、初めて満面の笑みを見せた。
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