幕間

「そ、それで、どうなったんですか? セイカさん、大丈夫だったんですか!?」


 重く垂れこめた雲が今にも雨を零しそうな、夏の野であった。

 湿度の高い風が東から強く吹いている。

 ふわふわとした栗色の髪をそれに靡かせて、真白いローブを着た少女が身を乗り出し、川べりに竿を突き出す少年へと詰め寄っていた。

 耳にかかる程度の艶なしの黒髪をした青白い肌の少年――少女より大分背が高い――は、川面から目を離さないまま面倒くさそうにそれに答える。


「大丈夫じゃなかったら、お前が先月会ったあの人は誰だったんだよ」

「それは……でも、だって!」

「つうかよ、その話後じゃダメか? 忙しいんだよ、見ての通り」

「ダメです! ていうか、私、ヨル君とジンゴさんが初めて会った時の話を聞いただけなんですけど……。何で急にバトル展開になった上にベタなサスペンスみたいな流れになってるんですか?」

「ベタって言うな」


 二人のいる場所から少し離れた所では、荒波のようにうねる黒髪を頭の後ろで無造作に縛った男が、作業着に身を包みながら、同じように竿を突き出しては川面に見入っている。

「集中させてくれよ。負けた方が今日の酒代奢りなんだから」

 ちらりと男のいる方を横目に見ると、少年は竿を握り直して水の流れに揺蕩う浮きに鋭い視線を向けた。その頬に、じっとりと汗が滲んでいる。


 もう、と、栗毛の少女が頬を膨らませ、彼の隣に座り直した。

「分かりました。じゃあ取り合えず結果だけ、結論だけ教えてください」

「結果? ええっと……」

 しばし考え込んだ少年は、ああ、と頷いて、言葉を紡いだ。


「まあ、事件は無事に解決したよ。で、俺たちがその事件を解決したら……」

「したら?」


「街の名前が変わった」


「…………はい?」


 ……。

 …………。

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