第33悪 最低男の最悪な人生 (最高権力の神の父編)

 ゼウスシスは、四神を立ち上がらせて、自分の父親の話をし始める。


「聞きたまえ! 同士よ!」


 四神は、ゼウスシスの目を見ながら、その過去の話を聞く。



 私は、最高のクラスの神だ。

 この世のあらゆる物を支配する神の血族。

 だが、それは父があってこそだ。

 そう思っていると、父のゼクシオが私に挨拶をする。


「おはよう! 私の息子よ! この神の血を次ぐ、最高位の我が希望!」


 私は、片足に地面をつけて忠誠を誓う。

 この素晴らしい父親は、私の自慢だ。

 そして、今いる宮殿は神のクラスの者でしか訪れるのを許されない神聖な場所。

 そんな所に、いるなど奇跡でしかない。

 私は、そんな奇跡に父のゼクシオに感謝の祈りをして喜びを表す。


「……ああ……我が、最高位の血族の父親よ……この素晴らしい神聖な場所に、いられる幸せに感謝する」


「あはは……まったく、我が息子は大げさだな……」


 その私の姿勢を見ても、父のゼクシオはおごることなく、それどころか自分は大したことがないと謙遜する。

 この父はやはり、性格や発言、行いなども素晴らしく、しかも自分の権力を自慢しないそういった神だ。

 私も、その為鼻が高くてしょうがない、部下にも慕われていていて、ダメなところがない。



 だが……父のゼクシオは、自分から率先して人間などに優しくする。

 あれほど素晴らしい父親が、あんな下等な人間に媚びへつらうのは気分が悪い。

 だから、父のゼクシオに何故人間に恵みを与えるのか意味が分からなかった。

 その為、私は父に人間を何故助けるのか聞く。


「何故! あのような、下劣な生物に。あなたのような素晴らしい方が、手を差しのべるのですか!」


 父ゼクシオは、私を悲しそうな目で、その質問に答える。


「お主は、分からなかったか……はぁ……本来、生物と言うのは皆平等で。序列などを付けてはいかん。だから、私はあきれているのだ」


「しかし! 人間と言うのは、お互い意味もなく殺しあったり。私利私欲で、他の者を傷つける。愚かな生物ですよ! それを私達、神と同等に扱うのは……無理があります!」


 私は、神の常識を言っただけだ。

 そんな私の発言に、父のゼクシオは溜め息をつき自分の部屋に戻っていった。

 だが、私は間違っていないのだ。

 最高位の神である、父と私が何故あのような下劣な生物に恵みを与えなくてはいけないのか。

 正直言って、理解は出来なかった。



 その後、父は体が悪くなり、倒れてしまい立てなくなってしまう。

 私は、そんな父を心配して、見舞いに来ていたが、もう寿命が短くなっていたことを本人に伝えられた。


「父上! 大丈夫ですか!」


「……もうダメだ……最後に、人間達を助けてやってくれ……それで……もう……いい……残す……ことはない……バタン!」


「父上ーーーー!!」


 私は、父上の死を嘆くかごとく叫ぶ。

 その叫びは、宮殿中に響き渡り、全神に伝わり他の神もその葬式に来て泣いていた。

 


 それから、暫くたち。

 私は、最高位の神の権力持って、父の代わりに人間達を助けようと奮闘する。

 だが、そんな人間達はどいつもこいつも自分勝手で、お互いの事を思い合う心は持っていなかった。

 そして、戦争を起こして人々は殺し合いを始めて、父の言っていた全ての者が、平等に行く世界を作ると言う夢は叶わなかった。

 


 その後、暫く経ち。

 私は、そんな人間が憎くてしょうがなくなる。

 父上がよく言っていた、素晴らしい人間など一人もいない。

 人間は、全員素晴らしい者だと。

 それは、間違いだったのだ。

 

「こんな者達は……消えてしまえ!」


 私は、ある計画を実行しようとする。

 それは、天使のルシルトが恋をしている、聖母マリカを悪薬を使った人間に襲わせて、人が悪く愚かな生物だとしらしめて、この地球の人々を一匹残らず消してしまいたいと思えるように仕向ける作戦。

 それで、戦争を起こし、人がいかにどうしようないかを改めてみて、いかにどうしようもない生物だとしらしめてやろうと。

 その際、下等な神の父の息子、四神我流の幼馴染みを悪薬を使った人間に襲わせて、更に四神我流本人を悪薬を使うように誘導させて、この世の人間と言う生物を消すと言った命令をルシルトにした。



 そして、暫くたちルシルトは私にこの件に対しての報告をする。


「文字通り……ゼウスシス様の計画は順調に進んでおります……ただ……」


「ただ……なんだ?」


「あの四神我流と言う少年は、他の神に闇の力を抑えられて。地獄に言ったのは、誤算でした……」


「まあ……いいだろう」


 私は、正直言って四神我流なんぞは、ただの実験動物にすぎなかったので、どうでもよかった。

 ただ……人間が、下等な存在で愚かであることが天界で伝われば、これで人を庇う者はいなくなると。



「どうだ? 人間など、どうしようないだろ?」


 ゼウスシスの話は、まさに正論で疑う余地もない事実であった。

 だけど、私はそれでも咲見に対してやったことが、許せなかった。


「あなたは間違ってます! 少なくとも、四神さんと咲見さんは強い人間です! 他の戦争をやっていた人と、違うのは明らかです!」


「はははは!! 貴様は、分かってないな……父上は、人間を信じていた。だが、そんな神を裏切ったのだ! こんな屈辱的なことが、あってなるものか!」


 ゼウスシスは、偉そうに私に説教をする。

 そして、人々は震えていた、しかも未だに自分が殺されないように祈っている。

 四神は、あれから黙ってて何も言わないし、皆は文句と愚痴ばかり言っている。

 こんな状況どうすればいいのか。


「どうすればいいの、私達……」


「俺らには、明るい未来はないのか……」


「どうすればいいんだよ……どうすれば……」


「あいつは、何も言わないし……」


 本当に、自分勝手で誰かがたすけてくれなかったら文句を言う。

 そんな人達ばかりで、ゼウスシスが言ってる人間はこの者達のことを指しているように思えた。

 自分等だけが良かったらいいみたいな事を思ってる……自分から、何もしようとしないで出来ないのを言い訳にして、人に頼ってばかりいる人間。

 相変わらずどうしようもない人達だ。

 ここまで、性根が腐っていたとは思わなかった、どおりで四神も助けたくないと思うはずだ。

 本当に、自分ら人間が助かった方がいいのかと疑問に思い、ひたすら私達のしてきた事が無駄だったのかと、問い続ける。

 本当に、人類を皆助けなきゃいけないのかと思い。

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