第31悪 四神家の秘密と咲見の居場所

 俺は、あの過去から、ずっと父親の事が大嫌いだった。

 まさか、父親が神だとは夢にも思わなかったが。

 そして、今ここにいる父親は、息子に対して反省したような顔をしているが、正直言って今更遅いんだよ。

 俺は、もう死んじまって、その後地獄に行って生き延びてその心を無くしてしまったから。


「まあ……申し訳なかったと思う……お前には……」


 俺は、その態度に無性に腹が立った。

 それは、自分がムカつくとかではなく、神の力を持っていたのにも関わらず。

 天界に行った俺に協力して、咲見を助けにきてくれなかったことに対してと、探してくれなかったことに。


「そんな事は、もうどうでいいんだ! 別にそんなことをやってもらいに来たわけじゃねぇ! あいつの居場所を、聞きに来たんだよ! 神の力を手に入れる次いでになぁ!!」


 父親は、笑いながらいかにも自分より弱い者を嘲笑うかのような、態度をする。


「あははは!! 今のお前に、神である私を倒す事が出来るとでも? 冗談は、それぐらいにしてくれよ……あははは!!」


「笑うんじゃねぇ!! それに、お前みたいな上にペコペコ頭を下げてるだけの、弱い奴らと一緒にすんじゃねぇよ!!」


 父親の、目が鋭くなり眉間にシワを寄せ、どうやら言ってしまってはいけないことを言ったようだ。


「調子のるんじゃない! 若僧が! 上には上が要るってことを教えてやるよ!!」


 父親は、おもっいきり両手を使いパンチを繰り出す、だが俺はそんな攻撃を受け止める処か、喰らってしまう。


「ぐはぁ!……」


「なんだ……この程度か、話にならんな……」


 俺は、なんとかボロボロになりながらも立ち上がり、父親に向かっていき、また攻撃を仕掛ける。


「クソ親父ぃぃ! お前を倒す!」


「そう言うのは、神を一人でも倒して実績がある奴が言わんと、説得力はないな!」


 父親は、俺の連続パンチを手で受け流しその隙に腹を殴る。


「……ぐはぁ!……なんで効かねぇ~んだ!……はぁ……はぁ……はぁ……ぢぐしょお!」


「それは、そうだ。お前には、今神の力がないからな! そのために、私が来たのだ…」


 そう言うと、父親は玉を俺に渡した。

 意味がわからなかった。


「何だよ! これは!」


「ああ……それは、神の力を入れてある玉……神玉しんぎょくだ! それで、カウンターをパワーアップ出来る! カウンターと神玉を触れ!」


 俺は、渋々従って触ってパワーアップすると、カウンターは銀色に変わり、玉は割れて粉々になった。


「やはり、耐えきれなかったか……まあ、いい! 戦うぞ! 我流!」


「言われなくても、お前を倒して次いでにお前の力も貰う!」


 俺と父親の、戦闘は数時間と続いた。

 それで、両者とも顔を殴りパンチとパンチのぶつかり合い、そして両者ボロボロになる。


「やるな……息子……はぁ……はぁ……」


「お前に……息子とか……言われたくねぇ……よ……はぁ……はぁ……」


 俺と父親は、既に体力はほとんどない。

 だが、ここで決めなければ、この親を倒しあいつを救わなきゃならないのに、救えなくなる。

 絶対に、今まで助けられなかった分まで幸せにしてやるんだ。



 お互いの顔面に、お互いのパンチをくらい、今にも父親は倒れそうだ。

 俺も、鼻から血が出ていた。


「はぁ……はぁ……」


「はぁ……はぁ……今まで悪かったな……」


 父親は、改まってそう言った。

 しかも、申し訳なさそうだった。

 だが、そんな事は、俺にはどうでも良かった。

 そんな事よりも、あいつを助けられなかった時の力不足の方が問題だった。


「そんな事より、あいつの居場所教えろよ! いい加減!」


「はぁ……はぁ……いいだろう……教えてやる。詳しい話は知らんが、いつもお前と一緒にいる誰かだと、そうゼウスシス様は、言っていた……はぁ……はぁ……」


 俺は、そんな事聞きたいんじゃない。

 あいつは、何処に要るか聞きたかったんだ。


「それ以外は、知らん! それより、私の力をお前に授けよう……これで、お前は最強のインフィニターになれる……」


 そして、この力の使い方を教えてはくれたが、条件が厳しすぎて、正直言って使いものにほとんどならない、それぐらいのものだったとしかいえない。


「後、四聖神獣の力を貰えば、四神の伝説のカウンター……七式カウンターが使えるから、さっきの奴より使いがってはいい。だから、なるべくそれを使って戦うんだ」


 つまり、父親は最後に息子の事を思って、四神家の力を全部分けてくれたのだ。

 せめてもの、今までの償いとして。


「分かった……だがな! 何で、今までのその事を話さなかったんだよ! 伝えれば、どうにかなったかも……」


 俺がそう言いかけた瞬間、父親は話を割り込む形でその答えを言う。


「……それは、お前がその時未熟だったからだ……あの時の力では、所詮私が力を与えても神には愚か、天使にも勝てる状態ではなかったからな」


 その後、父親は笑顔を見せて、俺の頭を撫でる。

 だが、俺はそんな今更親っぽい事をしても意味はないと思った。


「よく今まで頑張ったな。お前は、よくやったよ……地獄にも耐えたお前なら、これからも安心だな」


「別に……今更、そんなことをやってもおせぇんだよぉ! それに、あんたなんかとっくに越えてんだよ! あんたみたいな、弱い人間と一緒にするなってんだよ!」

 

 父親は、そうかそうかと言い、納得して息子の成長を喜んでいた。

 正直言って、俺は四神天龍の事を親だと思っていたなかったので、その態度がウザイなとしか思えない。


「じゃあな!……我が息子よ……」


「ちょっとまて! 話が……ある……」


 父親は、消えてあの世に行ってしまった。

 本当は、文句が言いたかったがもう時間がないから、あきらめて結局相手にしなかった。

 何にせよ、もうすぐゼウスシスが攻めてくる時間が数分しかないから。


 俺は、地上に向かって暫く歩いて、外に出てあいつらと合流する。


「四神さん、大丈夫だったんですね!」


「ああ……大丈夫だ! それより、お前らもやったのか」


 そう言うと、皆は神達を倒したと話すのだが、肝心の元凶のゼウスシス本人が居ない。

 本当に、あいつは何処に行るのだろうと思った。

 その瞬間、ヒカルが急に現れて話をし始める。


「ああ! ヒカルかどうしたんだ? それより、ゼウスシスの奴は何処に要るんだ!?」


「ああ……それなら…………」


 ヒカルが言うと、背がでかくなり細長い体型へと変化した。

 顔も前は童顔だったが、今はそれよか大人っぽくなっていた。


「私が、ゼウスシスだ! まんまとはめられたな! あはははは! 貴様ら、下等な人間どもが、私みたいな上級生物に逆らうおうとは……身のほどを知れ!」


「どう言う事ですか、どう言う事ですか!?」


 何故か、皆は知っていた。

 鈍感な、偽善者眼鏡女雫以外は。


「それに、四神我流……お前の知りたかった情報を伝えよう……」


「それは、なんだ!」


 俺は、真剣に聞く。

 本当に、何がなんだか分からなかったから。


「貴様の、探していた女は……実は……天候晴と言う女なのだよ!……フハハ!……」


「な……に!?……」


 俺は、気が動転した。

 だって、咲見は悪薬を使っていて、まともに精神がコントロール出来ていなかったから、何故あいつがコントロール出来るように、なったのか不思議だったのだ。


「教えてやろう……咲見とやらは、そのサングラスによって、力をコントロールして貰っていたのだ! 本来、その女のような人間は、悪薬に染まったら。簡単に心をコントロールすることは、ほとんどは出来ない! そのはずだからな~」


 俺は、よく分からなかった。

 それに、なんでそんな事を咲見は俺に相談して話してくれなかったのか、喋ってくれなかったことが、何より寂しく思えた。

 そんな事を思い、立ち尽くすしかない。

 こんな、諸悪の根元を倒さないといけない時に、その事を話されて戦う気力を完全に失ってしまった。

 暗い顔をしながら、ひたすら下を向きうつ向く。

 自分の今まで、咲見がいることに気が付かなかった自分の甘さと、今までやってきた行為が無駄処か、かえって真実から遠ざかっていたことを知り、俺はやる気をも失う。

 本当にこんな事をしていて意味があるのかと、もう何もすることがないと思い。

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