第30悪 最低な父親と最低男の喧嘩

 俺は、神殿に行くがそこには誰もまだ居なかった。

 そして、その中の地下へと続く階段を下って行く。

 暫く進むと、大広場に着くそこに居たのは俺の父親、四神天龍しがみ てんりゅうだった。

 俺は、一発パンチを入れようと殴るが片手で受け止められる。


「酷いな~久しぶりに、再会したと思ったらこれだ、本当に親に対してとる態度じゃないよ~それ~」


「そんな事、知るかよ……それに、さんざんほかっておいて、今更父親面とか……どの面下げて来たんだ!」


 俺は、無性に腹が立った。

 それは今更父親面したことではない、あいつを助けられたのに何もしなかった事だ。

 それで、へらへらとしていてふざけてるようにしか見えなかった、特に笑顔とかが。


「父親だったら! 俺が大切と思っていた、あいつを助けろよ! なんで、そんな事もわかんねぇ~んだよ!」


 そう、自分を助けてなかった事より、あいつをどうにか助けられる立場に居たのにも関わらず。

 助ける事はおろか、手をさしのべる事もしなかったからだ、そこまで無関心な癖に親の面していきなり現れて、修行を着けるとか意味が分からなかった。

 だから……殴ってやりたかった。

 このクソ親父を。


「しょうがなかったんだ……私の立場上それは、出来なかった……」


「そんな言い訳聞きたくねぇ! それより、ノコノコ現れやがって! 恥ずかしくねぇのか!」


 俺は、残った左手でまた殴ろうとしたが、このパンチも受け止められてしまう。

 俺の手を力強く握り、押さえる父親。

 本当に、最悪だ。

 こんな、何一つ子供の事を思ってやってくれない、父親なんて居ない方がましだ。

 結局、子供の時からそうだ。

 何もしてくれない、それに加えて何処にいるのかさえ、教えて貰ってない。

 ただ、遠くで仕事していて姿を見たのが保育園児くらいの時だけってことぐらいしか、正直言って親らしい事は何一つやってない。

 だから、こんな奴は親じゃない。

 そう思わなければ、このままこの親に怒りをあらわにして、ぶっ倒そうとしてしまうから。

 


 俺は、高校一年になったばかりの時、喧嘩ばかりをしていた。

 それも、くるひもくるひも、あきもせず。

 その為、姉にボコボコにされて、ヒモで手足を縛られて天井に吊るされた。


「あんた! いい加減にしなさいよ! 毎日毎日! 喧嘩ばかりして!」


「しょうがないだろ! アイツらが、俺の中学時代の事を言ってくるんだから!」


 俺は、正直自分の事だったら我慢は出来た。

 だが、咲見を淫乱だとか、そう言う事が大好きだから男としていたんだろとかの、咲見に対しての侮辱は許せない。

 だから、今日も殴り合いをしてしまい、オマケに相手にケガを負わせてしまった。


「しょうがなくないでしょ! 確かに、咲見ちゃんが悪く言われていて腹が立つかもしれない。だけど! そんなことをしても、咲見ちゃんは喜ばないよ!」


「分かってるよ……そんなことは……」


 そう……自分でも、咲見はそんな事を望んでないことは分かっていた。

 だけど……やはり、アイツみたいな人の事を大切に思う奴を、侮辱させるのは許せなかった。

 しかも、その下らない誰かの噂でしかない話を鵜呑みにして、言われるのが我慢ならない。


「それに! お母さんにも、迷惑がかかったんだからね!」


「別にいいのよ……この子も、悪気があるわけではないのは、知ってるから……」


「よくないよ! お母さん、仕事とか家事をやって。クタクタになって、帰ってきてから。そう言う、我流の問題に向き合ってるの知ってんだから!」


 この時は、本当に大して金もないので、母親が必死に働いていて、俺ら姉弟を養っていた。

 その為、俺が問題を起こすと、こうやって親の代わりに姉が叱っていたっけ。

 だけど……父親は、こんなときも帰ってきてきてはくれなかった。

 どんなに、息子が酷い目に合っても、顔一つ見せてもくれないし、相談にものらないのだ。

 俺ら、姉弟は半ば父親が帰ってくるのを諦めていたのだ。


「父さん……ずっと帰ってこないね」


「ああ……そうだな」


 そんな会話は、長い間続くは毎日の習慣のようなものだ。

 俺は、そんな父親を憎んでいた。

 本当に、居なきゃいけない時にも出てこないから。

 その為か、母は父親に変わってあの時の同級生をほとんどボコボコにした事件の後始末をやってくれたっけ。

 姉も、その前科がある俺には、厳しく言うのは当然と言えば当然。

 母親が、あんなに仕事をしてきて疲れても、俺の事に謝ってきていた姿を見れば、責めたくなるのは仕方がない。



 父親は、反対に何もしてれなかったが。

 父親が、してくれたことと言えば、幼稚園児の時にキャッチボールをしてくれた事ぐらいか。

 それ以降は、急に仕事が忙しいとか言って、出ていったきり帰っては来なかった。

 もしかしたら、俺らを見捨てたのかと思い母親に聞いても、遠くで仕事をしていて会えないとしか言われなかった。

 それはまだ良かった。

 実際、俺も姉もあまり父親に甘えたいとは思ってはいなかったから。

 だが、金の仕送りの額が少なすぎて、母親が働かなくてはいけないのが問題だった。

 その事に関しては、俺は一生父親を恨むと思う。

 本当に、クソ親とはこのことだなと思いながら、あの時は刺されて死ぬまですごしてきた。

 ろくでもない、クソみたいな人生をずっと。 

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