第25悪 最悪な美少女が好きな男

 私はこの日珍しく、時間ギリギリで登校した。

 いつもなら、朝早く目覚めるが、何だかやる気がでない。

 教室に着いたのは、朝のホームルームギリギリで行くだけで、どっと疲れた。


「……はぁ……はぁ……」


 私は、何とか息切れしながら走っていた為か、呼吸を整えるのに時間がかかり、それまで言葉を発することもできずにいた。

 授業は、大した内容ではなかったので良かったが、苦手な英語の授業が今日あったらと思うとやるせない、本当になかったのが幸いである。



 そして、放課後になり、相変わらず火炎ちゃん(四神)は大人気であった。

 学校の授業が全て終わったのに、クラスの皆が火炎ちゃんのもとに集まる。


「火炎ちゃん! 相変わらず、可愛いいね!」


「ありがとうございます……私……嬉しいです」


「はぁ~! 可愛い過ぎる! 性格もいいし! 天使だー!」


 私は、この人の何処が天使なのか聞きたい。

 いつも、滅茶苦茶な事をするは、迷惑かけても謝らないは、オマケに人を見下している。

 こんなもん、どっちかと言うと悪魔じゃないか。

 これが天使なら、私は女神様になれるよと心底思う。


「男子!! 純粋無垢な、火炎ちゃんに変な事をしないでよね! 汚れるわよ! あんた達のせいで!」


「えー! 俺は、別に火炎を愛でたいと思っただけで……」


「それも、禁止よ! 私達が可愛がって、大事に育てるんだから!」


 クラスの女子は、火炎を純粋無垢な女の子だと思ってるらしい。

 だから、クラスの男子を火炎に近付けないようにしていた。

 私は、正直正体を知ったらきっと一生立ち直れなくなると思った。

 だって、火炎は四神であって、全然純粋無垢とはかけ離れた存在なのだから。

 むしろ、悪魔とか、悪霊とかの方が正しい。

 

「皆さん……ケンカしないでください……このクラスの人達は、いい人ばかりです。ですから、許して上げてください。男の人達も、皆親切でいい人です」


「あ~ん! 可愛い過ぎるし! 純粋すぎるわぁぁ! やっぱり、私達女子が大切に育てましょ。……グへへ」


 確かに、火炎は背が低くて、女性と言うより子供っぽいが。

 別に、女性だからといって両手で抱き付いていいわけではない。

 それと、その人間は全く持ってそのような者ではない。

 後、クラスの女子達は意外とヤバい人間だったんだな。

 だって、火炎を見て凄いヨダレ垂らしてるもの、見てて気持ち悪くなる。

 だから、このクラスにはまともな人は居ないんだなと、落ち込みうつ向いて溜め息をする。


「苦しいです……」


「ごめん! つい……火炎ちゃんが可愛いくて」


「いいですよ。私は……クラスの皆が大好きですから」


 クラスのほとんどが、火炎の魅力にやられて、メロメロになる。

 だが、火炎(四神)が言った普通にこの人が言わないであろう発言を聞いて、可笑しくて笑いを堪えようとしていたが、思わず吹いてしまった。


「ブブブゥ! あははは!! ひぃ~! ひぃ~! 可笑しすぎますよ! ひぃ~! ひぃ~! 似合ってないから! ひぃ~! ひぃ~! 笑わせないでくださいよ!」


 クラスメイトが、私のほうを睨んでいた。

 空気読めよと言わんばかりに。

 そして、四神も歯を食い縛り、顔を真っ赤にして私の方を睨んで怒っていた。


「はぁ~……マジで、インテリ眼鏡女空気読めてないわ~」


「本当に、この根倉……ウザイ」


「可愛くもないしな……オマケに、火炎ちゃんが可愛いからって……嫉妬かよ。本当に、中身も外見も、可愛いくねぇ~……むしろ、ムカつく」


 クラスメイトは、いよいよ私の悪口と愚痴を言い始めた。

 そして、暫くたった後クラスの皆が下校して帰っていった。

 火炎(四神)を除いてだが。


「おい! お前、いい加減にしろよ! このクラスどもをマインドコントロールして。俺の奴隷にする計画がパーじゃねぇか」


「すみません……って、何その計画わ! どうせ、そんな事だろうと思ってしまったよ!」


 私は、そんな四神の性格の悪さに、懐かしく思うやら呆れるやら、安心すらやらで色々と反応に疲れる。



 そうこうしていると、いきなりクラスの一人の男子が教室に戻ってきた。


「どうしたんですか……何かあったんですか? よろしければ、私が聞きますよ」


「ブブブゥ!」


「笑うの止めろって……言ってるだろ……」


 四神を、思わず笑ってしまった私に、その男が聞こえないであろう小声で注意する。

 だが、その男は様子が可笑しい、しかも四神の事をずっと見ている。

 しかも、はぁはぁと息を切らして、太っていて明らかに見た目と行動で分かる、関わってはいけないひとだった。


「火炎ちゃん! 大好きだぁぁ!」


 そのクラスメイトの男子は、火炎(四神)に抱き付いてた。


「ちょっと! 四神さん! 何やってるんですか! その人をいつものように、力ずくで突き飛ばして離れてくださいよ!」


「俺は、そんな事はしたことねぇよ! それに、離れられないんだよ……コイツの抱き付く力が強すぎて!」


 そのクラスメイトの男子は、どうやら抱き付く力が強すぎて四神は離れられないらしい。

 だけど、その発言を聞いてようやくそのクラスメイトは抱き付くのを止める。


「……え? 火炎ちゃん? そんな言葉使わない……純粋で、可愛くて人に優しい。火炎ちゃんだよね……」


「……はあ? 誰だよ、お前?」


 そのクラスメイトの男子は、獣が吠えたかのように叫ぶ。

 その後、黒い霧に包まれて悪人になってしまった。


「……火炎ちゃんわ……純粋無垢な、優しい美少女なんだ……火炎ちゃんをかえせぇぇ!! あの、可愛くて優しい火炎ちゃんを返せよぉぉ!!」


「……何なんだ……コイツわ……」


 四神が、顔をひきつっていたが、それよりこの男は何か攻撃を仕掛けようと、その長くなった爪を四神に向けて、襲ってくる。


「危ない!!」


 私は、咄嗟にカウンターの力を使い、透明な箱の中に私と四神を入れて守る。


「大丈夫……ですか……」


 何とか、ギリギリで間に合ったが、もう少しで危なかった。


「おい! これを解除しろ! 俺がコイツを攻撃する!」


「何言ってるんですか! 今、私が力を使って守ってるんですよ! それを解除したら……」


 私が、いい終える前にその箱は割れて、何とか攻撃を避けた。

 だが、よく見たら四神がその悪人になったクラスメイトの両腕を両手で掴み、攻撃を出来ないようにしていた。


「四神さん!」


「……おい……大丈夫かよ……」


 何とか、四神はクラスメイトの男子の両腕を抑えていた。

 だけども、もう少しでその抑え込んでいる両腕も離れそうだ。


「おい! そんなことより、早くコイツを地獄に送れ!……早くしろ……もう……限界だ……」


 私は、その光景をみて動揺していたのか、カウンターの力を使えなかった。

 そして、クラスメイトの男子の両腕は解放されて、四神に向かって攻撃する。

 四神も、何とかその爪の攻撃を避けて、自分のカウンターの力を使って攻撃する。


「ファイヤーブラスト!」


 クラスメイトの男子に手から放たれた火が直撃するが、全く持って効かなかった。


「やはりダメか……あの体じゃないと……」


 その時だった、四神の持っている神アイテムの神ホンから突然電話がかかってきた。


「ごめ~ん! もう、体は元の姿に戻したから! だから、あまり責めないでね」


 そのエロ神の発言が、教室中に響き渡ると、四神の体は元の目が死んでいて、機嫌が悪そうな男の姿に戻る。


「よっし! 戻れた!! いくぞ! 地獄斬り!!」


 そして、いつものようにカウンターの力を使い、刀を出してそのクラスメイトを斬って、地獄に送った。


「うわぁぁぁ!!」


「ふぅ~これで、元の生活に戻れたな」


 四神は、その後ヒカルに連れられて天界で修行する為、姿を暫くくらます。



 そして、明後日当日。

 皆は、学校に集まりヒカルの指示を聞く。


「さっさとやりましょう! 皆さん早くこの地図の載っている獣の方に向かってください!」


 そう言うと皆が、散り散りに東西南北それぞれの場所に向かうのだが、ヒカルは四神を追って行ってあの世に行ったので、それ以降は姿を現さなかった。

 仕方がないので、私も四聖神獣がいる南の朱雀スザクがいると言う場所に向かう。

 だが、本当に大丈夫なのかと心配になったが、とりあえず向かうしかなかった。

 何故なら、その前に神を倒せるのは神だけと言うのを聞いていたから、だからやるしかないのだ。

 それに、四神家は本来の力を発揮するには、四聖神獣の力が必要とも言っていたので。

 しかも、人を滅ぼそうとしている神に対抗するべく策が私にはなかったし、それしか方法がないので、しょうがないと思い向かう。

 だから、私はこの戦いに勝つため力を手に入れるしかない。

 例え、力を手に入れるのがどんなに苦しいことだとしても、やるしかないのだ。

 本当は、嫌で、嫌で、仕方がなかったとしても、それがこの世界を救うことになるのだから。

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