第16悪 必要とされなかった女の人生(本当の幸せ編)

 四神が、当然かの如く、私の家のドアの鍵を開ける。

 なんで、この人は自分の家みたいに私の家の中でくつろぎ、宿主とかにも許可をとらずに開けるとか、非常識すぎるなことが出きるのだろうと、最低な人間だなと思うわ。


「やっと来たか……」

 

 とりあえず、インターホンが鳴ったので、ガチャとドアを開く四神、するとそこには紫が目の前に居た。


「さぁ……さっさと行きましょ……」


 私と四神は、紫の後を着いていくように歩いていく。

 それから、暫く同じような道路が続く道をのりを進んで数分後、紫の足が突然止まる。


「ここよ! じゃあさっさとやりましょうか!」


 私と四神は、身構えるも……その時……聞いたことがある声がする。

 何だか、荒々しい声が。


「ちょっと待てぇやぁ! ゴラぁ!」


 罵声と共に出てきたのは、荒れ。

 何故か、苛立っていて敵意を紫に向けていた。


「私が、あいつを倒す! てめぇ等は、どいてろぉ!」


 荒が先頭に立ち、カウンターの空いた穴から刀を取り出して、構えて戦闘態勢に入る。

 私達も、続けて荒のその行動を見て、身構える。


「あなたが先ねぇ……まあ、良いわよ……うふん……先に始末してあげるわ……ああん!」


「ああ、かかって来い!」


 すると突然!

 荒の方に紫の液体が飛んでくる、それをとっさに避ける荒。

 その液体が、付着した壁は溶けていた。


「何か飛んできた! それに、壁が溶けたぞ!」


「私は、毒のカウンターを使うインフィニターなの、これが私の暗殺術よ……ああん!」


 次々と、危険な猛毒が飛んでくる。

 それをなんとか避ける荒だが、必死に当たらないようにやっている為か、どんどん息が上がり体力がなくなり、疲弊していく。


「私の毒鉄砲の威力は、どお~!?」


 荒れは、なんとか避けているが。それも長く続かなかったみたいだ。

 徐々に、回避速度は落ちていき、ついには角に追いやられいよいよ、逃げ場がなくなり追い詰められる。


「これで終わりよぉん……ああん!」


 指を鉄砲の形にして、荒れの方に向ける。

 前よりも、大きい紫の毒が飛んでくる。

 次の瞬間だった……四神が荒れを庇い毒を自分の体で、受け止める。

 毒をくらった、右手はしゅ~と音が鳴り四神は、かなり痛いのか毒の痛みで顔が青ざめていく。


「いてぇー! 大丈夫かよ……これ……」


「てめぇ、邪魔するんじゃねぇ!」


「その子を、庇ったのね……次は、外さないわ……」


 また、指を鉄砲の形にし 荒れの方に構えて、先ほどのように放つ。

 だが、何とか四神がそれをまた、右手で防ぎ荒には当たらなかった。


「おい! 待て! なんでこんなことをするんだ! あの天使の男に、従うわけがあるんだろ! そうじゃなきゃ、天使の男に従うわけがない!」


 紫は、指をこちらに向けるのを止めて、一旦攻撃するのをやめ、このようなことをしている過去の話をし始める。


「あの人は……唯一私を必要してくれたの。こんな誰一人として必要されなかった私を! 自分は、そのボウヤと同じ時代に生きていた者なの」


 紫は、四神の方に指を差し、その様に説明する。

 こっちは、そんなことは初耳で、全く四神には話してもらえなかったので、そのことを問い詰めた。


「どう言うことなんですか! 四神さん!」


「俺等インフィニターは……同じ2019年亡くなり。地獄に居た者なんだ……こいつにも何かあると思ってな……」


 私は、驚いた。

 それは、何百年前の人だと言うことではない。

 それを初めから、言わない四神の人を信用してなさと行動にだ。

 やはり、それを言っても何の支障はないのに、言わなかった事が無償に気になる。

 だけどこの男は、どんなことがあって人を、信用できなくなったのか凄く個人的に気になる。

 ますます、この四神と言う男の事を知りたくなった。

 この男を更生させるためだけど……決して、四神のことはなんとも思ってない。

 好きとか、はっきり言ってあり得ない。

 そう、自分に無理矢理言い聞かせた。

 

 

だけど、こんな私の思いは皆にはとどかなかった。

 皆は、それより紫のことが気になるようだ。

 紫は、なんとも言えない暗い表情をしながら過去を、再び語り始める。



 私は、産まれながら、誰も必要とされていなかった。

 どうしても、誰かから必要されたいが為に、暴走行為や、殴りあいの喧嘩など不良行為にあけくれた。

 色々とやってはいたが、親にさえ感心を向けられなかった。

 何故なら、親は元々は他人で、私の里親だったので本当の親ではないからだ。

 本当に、どうにもならなかった日々が続く。

 だが、私は必死に勉強して教師になることが出来た。

 だけど……当時の私は、地味で大人しくしていた為か、よく生徒にからかわれて、それを苦にすぐ辞めたっけ。

 そのあとは、キャバ嬢になり、なかなかいい成績を叩きだした。

 それでも……私の心が満たされることはなかった、何故ならそんなものはどうでも良かったから。

 お客さんには、喜んではもらったが、正直言って、心から必要としてくれる人はいなかったので。

 それから、キャバクラの客が、私を他の人に取られたくなかったのか。

 包丁を持ってきて、それを私の胸に突き刺して死んでしまった。

 気が付いたら、何故か地獄にいた。

 

「私は、元々生前必要されてなく親にも捨てられ、他人に育ってられたの……そして、大人になって。誰からも必要とされなかったわ……それだけが苦だったの……キャバクラで働いたりして、客に優しくしてもらったわ。金も稼げるし、良かったのだけれど……やはり……心は満たされなかったわ……そしてある日、死んでしまって。地獄で、あのお方に出会ったわ。そうあなたが天使の男と言っている人……ルシルト様に! ルシルト様は、私を必要してくれた。あの生前の苦しい呪縛から、解放してくれた! オマケに、カウンターの力をもくれたの! ルシルト様の仕事を手伝うと言う名の名目でね」


 四神は、プルプル震えていたそれは何時にもなく怒りを感じていた。

 何処か、思うところがあってとても気分が良さそうには見えない。


「そんなもん! あいつに、良いように利用されてるだけじゃねぇか! 天使の男……ルシルトは……お前のことを必要としてねぇよ! そもそも人に、必要されている奴らは、そんなことを手伝えなんて。言わねぇよ! 本気で、お前の事を信用してねぇーんだ! そんなもんは、必要としているとは言えねぇ! あいつに、利用されてるだけだ! 利用されてるってことと、あいつに必要とされてるかは別だ!」


「そんなはずない! ルシルト様は必要してくれた! こんな私を!! あんたに私と、ルシルト様の関係の何が分かるのよ! それに……あんたなんかに! 私の何が、分かるってのよ!」


 確かに、そうだ。

 紫の過去も、辛さも私達には一切分からないどころか、理解するともできない。

 そう考えると、突然天使の男が現れた。

 しかも、高笑いしながら地上へ舞い降りてくる。

 羽を、バタつかせながら。


「私があなたを必要するわけないでしょ!

あはははは!! いい加減気付きなさい……利用してやったのですよ! けがわらしい人間なんか、必要とするわけないでしょ! あははははは! 実に、下らないですね~」


「そんな……私は……誰からも……必要とされてない……」


 ルシルトは嘲笑っていた、紫はその姿を見て泣き崩れる。

 その光景を見た四神は、武者震いをしながらルシルトの方を鋭い眼光で睨み付けて、誰も必要としてないという、ルシルトの意見を否定する。


「うるせぇぇぇ!! 俺は、こいつを必要してる! それに、人の為に頑張ってきたんだ! それなのに、今までの奴らはコイツを上辺だけしか見てねぇんだ! 俺は、お前が必要だ! だから、こんな奴に従うんじゃねぇ! どうせ、利用されて終わるだけだ! だから!

俺の為に……居てくれねぇか!」


「はい……喜んで……」


 紫は、辛そうにしていたが、何とか四神のその発言によって正気を取り戻して、涙を拭き嬉しそうにしていた。

 今までにない、本当の満面の笑顔だったと思う。



 しかし、ルシルトはその光景を見て。

 いい気分にはならなかったのか、紫に死ねとの命令を下す。

 それも、偉そうな口調で。


「何かと思えば……あなたのことなんて、誰一人必要となんかされてないですよ。わたしだけですよ……必要としていたのは……だけど、残念です……私の言うことに従わないものは、ただのダメな人に過ぎません……必要ないものは死になさい……」


 ルシルトは、光を纏っている弓矢のような物を、光で作り出してその矢を放つ。

 当たってしまうと、思った瞬間!

 四神がとっさに、紫を庇い矢の攻撃を受ける。


「何故だ!? そいつは、必要ないのだぞ! しかも、お前の命を狙っていた者なのだ……そんな奴を庇うなど……」


 四神が、ニヤリと笑う。

 痛そうにはしていたので、かなり辛いとは思うが何故か平気そうに。

 傷口も手で押さえてはいたから。

 辛くないことはないなかったようで、そんな危ない状況でも、必死に四神は紫を庇いルシルトに対して、反論する。


「関係ねぇよ……ただあいつみたいに、これ以上……人に利用されていき……苦しむ奴らを見たくないだけだ!!」


「ふざけるなぁぁぁ! お前ら人間は、私利私欲の為に生き、自分の欲望を叶える為だったら他の者を傷付ける。そんな、腐った生物……それが人間だ!」


「だから! そんなの関係ねぇって言ってんだろ! 他の奴らが、どうだとか! そんな自分勝手で責任感も、信念もない奴らとはな! それに、俺等を一緒にするんじゃねぇよ! 少なくとも、コイツらと俺は! ソイツらとは違う! だから、お前の言う通りなる事はねぇよ!」


「まぁ……いい……そいつは、くれてやる。今度あった時が、最後と思え……」


 ルシルトが、意味深な事を言い終えると、紫が何か決意したのか前に出てきて、ルシルトの方を見ながら宣言する。


「それは、あなたの方よ! 今度あった時、最後なのわ! もうあなたには従わない! 私には、大切な人が出来たから! あなたを倒して、私はこの人を支えていく! そして、同じような人を救うわ!」


「生意気な!……貴様も、文字通り始末してやる……覚悟するんだな! その時は、必ず。お前ら、人間をこの世から消し去ってやる! 一匹残らずな!!」


 歯を食い縛り、悔しそうにしながら、ルシルトは飛んで消えていく。

 私達は、そんなルシルトの後ろ姿を睨み付けて目を離さなかった。


「それは、そうとこいつどうする始末するか?」


 荒は、紫を始末する為か刀を持ち構える。


「止めろって! 余計な事をするなぁ!」


「ああん!? 何でてめぇ私に命令してるんだ! ぶち殺すぞ! ゴラァ!」


 お互い、四神と荒れが睨み合って口喧嘩をしていた。

 そんな四神の事をお構いなしに、紫は腕を組み色目を使う。


「それよりも~私わ~四神君と一緒に。大人の遊びしたいな~って!……ああああん!」


「しねぇよ! 離せよ! ゴラぁ!」


 私は、そんな姿に呆れかえる。

 荒れは、そんな光景を見て馬鹿らしくなったのか、四神との喧嘩を止めた。

 どうやら、どうでも良くなったようだ。


「馬鹿馬鹿しい……はぁ~あ!」


 次の瞬間。

 愛が現れて、四神の首に包丁を突き付ける。


「四神さ~ん……浮気ですか~……浮気はいけないですよ……あの世に、一緒に行って報われましょうね!」


「行かねぇよ! それに殺される気もねぇ! おい!  女共!  助けろ!」


 私は、何故かその光景を見て、ムカムカしたのか無視をして、そっぽを向いてしまった。


 

 堅石も、すぐに来てそんな光景を見ていたが、嫉妬心で溢れでていて、血の涙を流しながら四神に絶交を言い渡す。


「四神!! お前わ! 俺の友達失格だぁ!」


「そんなこといいから、助けろよ!」


「助けたくないですよ~、自分でまいた種なんだから、自分でどうにかしたらどうなんですか?」


「くそぉー! 最悪だぁー!」


 そんな四神の声が響き渡るが、私はどうも庇う気にはなれなかった。

 その姿を見ると、何だかイライラが止まらなくてしょうががなかったから。

 本当に、四神は私にとって害でしかない。

 このように、どうきが激しくなり気分を害するのだから、余計にそう感じる。

 この日は、四神の事を考えると前以上にムカムカしていた。

 なかなか寝つけなくて、疲れが取れず困っていた。

 だから、当然この日は気分が悪いまま、1日を終えた。

 本当にこの男は、自分にとって最低最悪な男だと感じた……私にとって、最低最悪で大事な人なのだといい人だと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る