第12悪 少女の最悪な人生(敗北編)

 私は、人々に愛されて欲しいと言う思いを込めて、親に愛となずけられた。

 だが、父親は毎日パチンコや酒を飲んだり、タバコをすったりと、自分の欲望を満たすことしかしない。

 しかも挙げ句のはてに、暴力までふるってきた。

 母は、私に愛情がないのか。

 いつも、男性と遊んでいて、ほとんど食事さえも作らない、ネグレクトという状態だった。

 私は、ずっと苦しんでいた、空腹、寂しさ、孤独に。

 何度思ったか分からない、愛されたいと。



「私は、愛される事がなかった! それどころか……父親は私に暴力を振るってきて、酒を飲んで酔ってるだけ……母は、私にご飯一つまともに作ってくれなかった……そしてまともな食事すら与えてくれない。私はだから、貴方に愛されている人が羨ましく思うの……うぅ……全然両親は愛してくれなかった! だから!  私はあなた達が、羨ましいの!」


 え?

 私何を言われてるのか、さっぱり分からなかった。

 あまりにも酷い、その少女の親の虐待を聞いても、ピンと来ない。

 そう言う境遇に、たたされたことがないからなのかもしれない。

 自分が愛されていたからだと、心底その時感じた。

 そんな話を聞いた、四神は又お説教でも言うかと思ったら。

 以外な、事をいい始める。

 それは、普段こんな事を言うとは思えないことを発したから。


「俺が愛してやるよ……」


「え……」


「俺が、お前を愛してやる! だから!

 悲観的になるな! そんなまともじゃない親の為なんかに! 自分を犠牲にするなよ! あいつみたいな人間を、二度と生みたくないんだ! お願いだ! だから、こんなことやめてくれ!……よ……うぅ……頼む!」


 四神は、涙を流していた。

 この人でも泣くんだと思い、意外な一面を目の当たりにする。

 それよりも、少女も泣いていた。

 何か四神と、心が通じあっているのか、とても悲しそうだ。

 私には、正直分からなかったが、辛い人生を二人とも今まで送ってきたのは、分かったのだろう。

 だから、そんな私は何も言えなかった。

 世の中には、そんな人達も要ることさえも知らなかったのだから。


「私を助けて下さい! そして愛して下さい!お願いです……ぐず……ぐず……母のように無視しないでください……父のように暴力をしないでください……そして! 私を愛してください……私に優しくしてください!」


 その少女は、泣いていた。

 今までこんなにも、酷い親がいて、そんな現実があったのかと思うと、自然と泣けてくる。

 何で悪いことをしてないのに、そんな事になってしまうのだと、理不尽な目に合う少女に。

 これほど、酷い話はそうそうにない。

 私は、そう思うと心の底からそんな少女を救いたい、助けてあげたくなってしまう。


「絶対に……救いましょう……うぅ……ぐず……ぐず……四神さん……」


「なんで、お前が泣いてんだよ! それに当たり前だ! こんな事を見過ごす訳にはいかねぇ! アイツみたいな人間を出さない為に! そして、社会の悲しみを終わらせる為に!」


 その四神の顔は、真剣そのもので本気で怒っていた。

 静かな怒り、その覚悟と信念がかいまみえたような気がした。

 明らかに、今までに見せたことのないような眼差しをしていた。


「もう良いですかね、イキマスヨ……ピコーン!」


 そのロボットの男が、四神の方に突撃し自分が持っている刀で斬り付けようとする。

 四神は何とか、自分の刀で防ぐ。


「てめぇ……インフィニターだな……」


「そうですよ……デスケドアナタノテキニハ、カワリマセン……」

 

 お互い、つばぜり合いになっていたものの。

 一枚、ロボットの男の方が上手であった為か、四神の刀は押し負けそうになっていた。


「これゃ駄目だ! 四神を止めた方が良い!」


 え?

 私は、荒の言っていたことが正直分からなかった。

 どう考えても、まだやれそうに見えたから。


 そうこうしている内に、四神はロボット男の刀の押している力に負けて、吹き飛ばされた。


「ぐは!……てめぇを倒さなきゃいけねぇんだよ!……はぁはぁ……絶対に倒さなきゃ!また、あいつみたいな被害者が増えちまう!」


 何時にもなく、熱くなっている四神。

 逆に、四神と正反対で冷静沈着なロボット男。

 そして私は、その戦いを応援することしか出来ない、やるせなさを感じる。

 どうにか、助けられることはないかと。

 その戦いの最中、四神が大技で勝負にでる。

 だが明らかに、力的には不利なのは変わりはない。


「絶対に倒す! 我流流、技術わざ!」


 そう言うと四神は、ロボット男に突進していく。

 私は気付いてしまった。

 明らかに力の差がありすぎて、今回はまけてしまうと。


「四神さん止めて下さい! 前に出たら斬られて、やられちゃいますよ!」


 そうの私の助言も、虚しく前に進む四神。

 それをチャンスだと思った、ロボット男は。

 そのまま刀を構え、斬り付けようとする。

 だが、そこには四神の姿はない。


「なに!? ドコヘイッタ……ドコダ……」


 四神は、突然ロボット男の目の前から姿を消した。

 だが、気配は近くに感じる。

 次の瞬間、四神がロボット男の頭上に来ていたそれから落下していく。


「七転び龍気!」


 四神は、落下しながらそう言って、燃えている足で、そのまま踵落としを食らわした。

 その後ロボット男はその衝撃で倒れた。


「ついに倒しましたね! 四神さん!」


 私が言い終わり、泣きそうになるとロボット男は立ち上がった。


「四神……やりますね。コンドコソ……タオシマス……」


 嘘だ!

 四神さんの技は、効いていたはず……そんな言葉も虚しく。

 その男には、ほとんど効いていない処か、どんどんキズが回復していく。

 だけど、四神の方は技を使ったことで、ボロボロなって倒れて膝を地面に着ける。

 相当、体力を使ってしまったのか、動けなくなってしまった。


「しょうがねぇ……あれを使うしかねぇ……」


「止めろ……四神! 止めるんだ!!」


 そんな荒の言葉に、耳を傾けなかった四神。

 その場にいる、ロボット男を倒す事で、頭がいっぱいだったのだ。

 四神には誰の声も聞こえない。

 もう、とうの限界を越えていて、それしか方法がない、それしか助ける方法がないと言い、自分の禁断の技を使おうとする。

 仕方ないと、四神は言い訳しながら黒いカウンターを使う。


「陰龍……闇のカウンタースイッチオン……」


 四神が言い、その周りには黒い霧が立ち込めて、化け物へと変化する。


「まさか! 四神さんも悪薬を使ったのですか!」


「違う! だが……四神も悪薬を一時使っていた。その時出来た力を今使おうとしている……だが、まだ1%も使いこなせていないどころか。暴走して誰かれ構わず攻撃して手がつけられねぇ!」


 荒がそう説明していると、四神は完全に黒い化け物と化してしまう。

 ロボット男が追い付けない、滅茶苦茶なスピードの攻撃を繰りだし始める。


「貴方に……こんな力が合っただなんて……イッショオノフカク……」


 ロボット男は、冷静に言っているが明らかに四神の怒涛の攻撃に押されて、追い詰められていく。



 次の瞬間。

 ロボット男の体を、四神の黒い爪を刺そうと突進してきた。

 その爪に当たった衝撃で、吹き飛ばされる。

 爪を刺すと言うよりか、おもいっきりタックルをするくらいの、その勢いで吹き飛ばされた感じと言うのが正しい。

 そう考えていたら、ロボット男の体の腕が取れ足も取れ頭だけが残り、かろうじて動くと言う状態になっていた。


「ワタ……シ……ハ……マ……ケ……ノカ……」


 ロボットの男は、すでに体がボロボロでとても、先程まで四神に勝ちそうになっていたとは思えない。


 だが、四神はロボット男にまだ突進していく。

 明らかに、もう勝ちは決まっていたのにまだ戦おうとしている。

 暴走して、止められなくなるのは本当みたいだ。

 これ以上、暴れられて被害が出ると困るので、荒と一緒に四神を止める。


「止めるぞ! 眼鏡女!」


「眼鏡女じゃなくて! 朝日雫って名前があるからちゃんと覚えて下さいよ!」


 私は、カウンターの使い方を思い出すかのようにやってみる。

 横にある丸い所を回し、出てきてた数字で力を使える事を覚えている私は、カウンターの数字を見る。


「前と違って増えているじゃないですか!

 2500って!」


「まあ、増えるのは当たり前だ。そうやってだんだんと、カウンターの力を解放していくのだからな。それに、カウンターの力の源となるもののエネルギーはそれぞれ違うものだからな」


 私は、そのことを始めて聞いた。

 四神さんは、ろくに教えてもくれなかったから。

 そうなら、そう言ってほしい。

 その事を、知っていれば力を上げることも出来たのにと、過ぎた事を後悔する。


「まあ、良い! それよりもそいつの左から一番目と左から二番目スイッチを押せ、最大の攻撃技が繰り出せる」


「ああもう! 分かりましたよ! やりますよ!」


 私は、ヤケクソなりながらも、言われたようにする。

 そしたら手が光り、何かを悟ったかのようにその手を四神の方に向ける。

 すると、四神は透明な箱に閉じ込められた。

 だが、四神はまだ暴走していてその箱を壊そうとする。

 暴れていて手がつけられない。


「どうするれば……良いのですか……はぁはぁ……」


 私は、何故か疲れていた……そんな中、荒が言う。


「押さえておけ! 私が今アイツの力を押さえる技を繰り出す」


 私は、だんだんと体力がなくなって、もう限界になろうとしていた。


「いける! 押さえておけよ!」


「もう……限界ですよ!」


 私の力が、無くなりそうになった……そうの瞬間!


「闇破壊斬り!」


 そう荒が言い、四神を斬ると、まとっていた黒い霧が消え四神が現れた。


「なんでこんなことをしているんだ? 俺はロボット男は倒せたのか!?」


 どうやら、黒い化け物になった時の記憶を覚えていない四神。

 そんな中、ロボット男は残された力を使い体を修復し、立ち上がる。


「な~んだ貴方の力では、なかったのですね~」


「それでは、ゴキゲンヨウ……」


 そうロボットが言った後、ロボット男は肩から、ジェットブースターみたいなものがでてきて、飛んでそのまま少女のもとへと向かって手を引っ張り、連れ去られそうになる。


「私を助けて下さい!お願い……嫌だ!これ以上辛いのは……」


 そう言う少女は、嫌だと叫び辛そうな顔をして暴れていたので、ロボット男が腕で抱えてダッコのような体制をとり、連れていかれてしまう。

 四神は、叫ぶしかなかった。

 それしか出来なかった。

 自分の力を及ばず、助けられなかった事を悔むしか。


「俺が力がなかったから……又助けられなかった! なんでいつもこんなるんだよ!……うぅ……うぅ……チクショウ!……チクショォォォォ!!」


 四神は、泣いていた。

 地面に、膝をつきながら。

 いつも見せる、下衆な笑顔はどこにもない。

 何処か、自分達の力のなさを感じながら、私は一緒に泣くぐらいしか出来なかった。


「ぐず……ぐず……うぅ……うぅ……」


 そんな四神と、私を他所に荒はこう言う。


「そんなに弱ければ強くなれば良いじゃねぇか! 泣いていても、何も解決出来ねぇのは分かってるだろ! 辛くても、行動するんだ! 強くなって人を守れるように……しょうがねぇから私が四神の修行に付き合ってやるよ!」


 荒の言葉は、今回1番身に染みたのか四神みたいだ。

 ようやく立ち上がり、私達に断言する。


「ああ! 絶対に強くなって助けてやる! アイツもあの子供も!」


 そう、四神は言いながら荒と、一緒に私の元から去って行った。

 又、あの少女が現れた時の為に修行をしに。

 自分を貫き通し、そして今度こそ救いたいと思う人を助けられるように……力を付けるために必死に。

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