第11悪 少女の最悪な人生(戦闘編)

 あの後、もうろうとする四神を背負って家へと送り届けた。

 朝学校の廊下で教室に入ると途中四神に会う。

 昨日あった人は誰だったのか問いただすが、あまり答えたくないのか言おうとはしない。


「四神さん! 結局あの人とはどう言う関係だったんですか!?」


「お前には、言う必要ねぇし! あいつとは、関わりたくねぇ!」


 何時もなく、面倒臭そうにその人の話しをするのを拒む。

 どうも、そこには四神の弱点があるようにしか思えない。

 そんなときだった。

 教室に入ると皆の歓声が聞こえた。

 それは如何にも、魔王が倒された町に平和が訪れた村人のような雰囲気だった。

 その中に霧搭がいて、全くもって良いほど、その表情からは笑顔はない。

 どうして、当の本人が喜ばないのか不思議だ。

 こう言う時は、普通本人は明るくなるものと決まっている。

 だが、私にはその理由は全く分からない。


「良かった~これで俺らは、自由だー!」


「私達にやっと春が来たのね!」


 クラスメイト達の表情は、正反対と言っていいほど明るい。

 対して霧搭は、何かを言いたそうだけど我慢しているように見える。

 明らかに、気分は良さそうに見えないし、大して喜んでもいない。


「霧搭! お前は、素晴らしいよ! 皆の誇りだ!」


「そうよ! そんな霧塔君を皆で胴上げしましょ!」


「そう! それが一番喜ぶだろう! このクラスの英雄に!」


 皆が、色んな案をだして霧搭を歓迎するが本人は、全く何も言わないどころか、本当に興味がなく顔がひきつっていた。

 それは、明らかに自分らがしがらみから解放されたからであって。

 本人の事を思っての、行動ではないと分かる。

 だが、私も皆に賛成だった。

 こんないい日はないから、皆の意見には賛成だ。

 私も、そんな彼らに触発されつい合わせて喜んでしまう。


「こんな日は、皆で一緒に、胴上げしましょう! みんなと仲良くなるチャンスは、こんな日にしかないじゃないですか!」


 私は、そんな奇麗事を言われても信じるしか他なかった。

 なにより自分は、寂しくてたまらなかったのだ。

 文が居なくなって、誰も私の味方が居ないから。

 その、寂しい状況が嫌でしかったなかったから、とてもじゃないが耐えられなかったし。

 そんな事になってしまったのでつい、皆の言葉に賛同し本人にお構い無しで、勝手に本人が喜ぶと思ってやってしまう。

 今までの事が無かったように、今までの事が帳消しになるように思えて。


 そんな時だった、四神が皆や私を睨み眉間にシワを寄せながら、また良い雰囲気をぶち壊す暴言をはく。

 正確に言うと、自分らに都合が良い雰囲気だったのだが、それはどうでもいい、この男は本当に発言が最悪で、基本的に人をバカにした言葉と侮辱しかしないから。


「何が歓迎だ! ふざけるなぁ! てめぇらは、なにもしてねぇーだろが! 人のフンドシで相撲とってるんじゃねぇよ! それに、勝手が良すぎたろうがぁ! 自分らが、解決出来なかったからって、押し付けてよ! 今までこいつの事をほっといてよ! 声をかけることもせずによ!! どの面、下げて言ってんだ!! あぁん!?」


 そんな言葉が、教室の中に響くそれは四神にとって心の叫びだった。

 皆は、静まりかえりさっきまでの、お祭り騒ぎをしていた人達とは思えない。


「だけど四神さん、こんなに皆仲良くなってるんですよ! 良いじゃありませんか?」


 四神は、私を睨み付け震えながら何処か悲しそうだった。

 何か、真剣そうな顔をしていた。

 私達をその場で、睨み付けて再び罵倒する。


「何が良いんだよ! お前もこいつらに暴言をはかれて、無視されただろ! いい加減気付けよ! それにだ! あの女に騙されてまだ気付かないとか……お前は、バカか! どんな人生送ったら、お前みたいに脳みそお花畑みたいな、思考になるんだ!!」


 私は、ぐうの音も出なかった。

 だが、だからと言って何も言わなかったのではない。

 明らかに真剣な目で、全くふざけてる感じがないので、どうにも何も言えなかったのだ。


「後、お前らに言いたいのは霧搭がいじめらていたことと、霧塔の女が襲われそうになってたのも実は、知っていたんだろ! それを知っててなお見てみぬ振りをして、ずっと無視していただろ! そんな奴らが今更仲良くなろうとか……本当に呆れるぜぇ! 自分勝手なクズどものくせによ! それに、お前らで全員で掛かればあの天使の男だって倒せたんじゃねぇのか! ああん!? 違うのかよぉ!! オラァ!!」


 そんな四神の、言葉は皆に少しずつ刺さったらしい。

 今まで、無視して霧塔に責任を押し付けてた、ツケがまわったのだと。

 それからは、自分らの擁護に入る、相変わらずこのクラスメイトは、最悪である。

 本当に、霧塔の事を心配し、本人の事をおもって助けようとした者が、いなかったのを思い知らされる。


「良いじゃねぇか、俺らが喜んでも霧搭も嫌がってないんだから!」


「そうだ! そうだ!」


「私達は、性格いい人なのだけれど出来なかったのよ! 虐げられていたから! あの天使のクラスメイトが全部悪いの! 私達のせいでは決してないわ!」


 皆、本当に、自分を守ることに必死なだけだった。

 このクラスは、気味が悪い人達がいっぱいだった。

 心から通じあってる物は、誰一人としていない。

 全くもって、反省などみじんもしてはいなかった。

 そんな人達のクラスだと思うと、吐き気を催すほど気持ちが悪く不快でしかない。

 本当に最低で最悪なクラスメイト達だ。

 私がこんな人達と、先程仲良くしようと思ったことは、一生の恥でしかない。

 こんな人達と一緒に、霧塔に余計な事をしようとした。

 そんな自分に、無性に腹が立つのと同時に泣けてきた。

 自分は、こんな事をしていたと、客観的にみえた気がした。

 そう思うと、情けなくて無性に自分がダメ人間のように思えて涙が出てくる。


「お前も泣くんじゃねぇ! つれぇのは、本人にだろがぁ!」


「……辛いのは、霧塔さんですよね……うぅ……うう……」


 私は、再び泣いた。

 自分の浅はかさを、心に刻んで。

 その後ガラガラと、教室のドアが開き先生が入ってくる。

 私達の状況を見て、心配はしてはくれてはいたが。

 だが、どうもばつが悪いのであえて席を外していたのだと、先生は説明した。


「どうしたんだ? 取り込み中悪いが、聞いてくれ! 転校生が今日やってくる!」


「わぁぁー!」


「マジかよ! 可愛い女の子かな?」


「いや! イケメンの男子だったりして!」


 先程、霧搭の話題で勝手に盛り上がり、本人以上に喜んでいた人達だとは思えない。

 その光景を見て、私は泣きやみ。

 こんな人達との、いざこざで悩んでいたのかと思うと、呆れて溜め息が出てきた。


 そんな最中、男子達が堅石に話しをする。

 どうやら、ここも盛り上がっているようだ。

 だが、その話の内容はどうもろくでもない事なのは、明白である。


「待て待て待て待て! お前ら男子! そんなことじゃあ女子受け悪くなるぜ」


「堅石先生!」


 何故かクラスの男子だけが、堅石を好評化しているらしい。

 それから、男子達は堅石とボソボソと秘密の話をしていた。

 きっと、この人の事だから、女性絡みのエロい話で盛り上がって、仲良くなったのだろう。

 まあ、絶対にろくでもない話題をしていたのは確かだと思うけどね。


「……後で……お前らに秘蔵の女子の写真やるからな……この前のお礼に……」


「堅石先生! 俺一生着いてきます!」


 ぐっと親指を立て、合図する堅石とクラスの男達に、私は呆れていて突っ込む気力もなかった。

 だが、このとき先生は鋭い眼光が光ったようで、写真は全部取り上げられた。


「皆静かに!」


 先生の言葉で、皆が黙りいよいよ転校生が扉を開けて入ってくる。


「では、入って来て自己紹介を!」


「私は、天候晴てんこうはれと申します……皆さんと仲良くしたいです。良かったら色々教えてください」


 そう転校生が言うと、歓声が上がり霧搭の時よりわ、盛り上がる、主にクラスの男子が。

 私は、その転校生を見て不思議に思った。

 何となく、初対面には思えないからだ。


「四神さん! あの人何処かで会った気がしますが、私の気のせいですかね?」


「……う、う、う、うん!……き、き、き、気のせいだろ、ろ、ろ、ろ!」


 何時もと違って、変な汗をかいてるは、凄く嫌そうな顔をしていて、顔は青ざめていたし気分が悪そうだった。

 その後、動揺を隠せない四神。


 なんでこんなにも震えていて、顔が青ざめていたのかと疑問に思った。

 どう考えても、その女の子は可愛くて大人しい子なのになぜ?

 そうこうしていると、チャイムが鳴り授業が終わる。

 だが、皆は何時ものように帰らず。

 天候の方に集まって、色々と質問をしていた。


「晴れちゃんってさ~何処の学校に行ったの?」


「晴れちゃんって、好きな男のタイプって芸能人で言えば誰?」


「ちょっと男子! 天候さん困ってるじゃん止めなよ」


 皆転校生ところに、集まって話をしている。

 それもそうだ、転校生の髪の色は白く髪型は、ロングストレートで肌は白く顔は目が二重でぱっちりしていて、鼻もしゅっとしていて顔面偏差値は高めだから。

 顔のパーツが全て整っていて、まるで……漫画やアニメ出てくるヒロインみたいに、可愛いのだから。

 特に、男子にとっては滅茶苦茶理想的で、男が好きそうな上品な性格と顔をしている。

 これで、チヤホヤするなと言う方がおかしいかもしれない。

 その最中その転校生は、立ちあがり四神の席の方へと歩いてくる。


「ちょっと、そちらの方よろしいですか?」


 四神は、相変わらず顔が青ざめたままだった。

 明らかに震えていて、まるで怪物にでも遭遇したかのような表情をしていた。


「何だよ……」


「ちょっと、屋上の方へと来ていただますか?」


 四神は、深く溜め息を吐き、その後転校生と共に屋上へと向かう。

 私は、気になったのでその後を追うように着いて行ったが、どうも四神はその女の子が苦手らしく、その子の側から離れようとする。


「……お前は、着いてかなくもいいんだぞ……」


「いえ! 私も気になりますし、それに四神さんが探していた女性の情報も、ひょっとしたら知れるかもしれないので!」


「だ・か・ら!! そんな事気にしなくて良いって言ってんだろ!」


「どうかしましたか?」


「……別に……何でもねぇよ……」


 何時にもなく、声が小さい四神。

 なんで、こんなに怖がっているのだろうと、不思議に思っても、多分この人の事だから教えてはくれないのだろうと諦めた。


「着きましたよ」


 屋上へと着くと、その景色は絶景だった。

 天気も快晴で、如何にも遠足に最適な陽気だった。

 太陽に照らされている、天候は何だか天の使いのように思えてくる。

 だが、それは全く持って違った。

 転校生は、いきなりサングラスを取り出してそれを付け始めると、ガラリと姿が変わる。

 私は正直言って、驚きを隠せない。

 何とその場に、別人が立っていたようだった。

 その少女は、如何にも柄が悪く眉毛が濃くて、先程の天候とは違う。

 目も鋭い感じなので、余計に。


「だから! 嫌っていったんだ!」


「何が嫌だ! てめぇ喧嘩売ってんのか! あぁん!?」


 先程と、うって変わってその女性の態度は不良みたく一瞬で変わってしまった。

 本当に、マジックみたいに見事に体型から声質性格までもが……こんなことありえるのかは、疑問ではあるが。


「何で、この人顔とか性格までもが変わってるんですか? どう言うことでしょうか?」


「……まあ……ここまで知ったんだしょうがねぇな! 話すぞ!」


 相変わらず、四神は顔を青ざめていたが、たんたんと渋々話しをし始める。

 四神が話をしている時は、少女は大変ご機嫌が斜め。


「アイツは、二重人格でサングラスをはめると性格が変わる……異常者だ」


「え? どう言うことですか!?」


「だから! アイツのサングラスの中にもう一人の人格が入ってんだ! しかも、その人格は狂暴でかつ。手がつけられない……」


「え? あんな優しそうな人が? 天候さんがそんなことするんですか!?」


 まさに、驚愕だった。

 そんな人が居ることもそうだし、ああ言う女性がそう言う人なのも。


「それよりも四神! てめぇの探していた天使の男の情報が入ったぞ!」


「それは本当か!?」


「私が嘘つくわけないだろ! それに、お前みたいに隠さないといけない、過去があるわけじゃねぇし! そんな、ふざけた事ぬかすとぶっ飛ばすぞ! まあ、いい……そんなことより明日午後10時に、新しく悪薬を使いそうな人間を探すという情報が入った!」


「分かった! 明日行く!」


 真剣な表情で天候の話しを聞く四神には、何となく助けてあげなきゃと思ってしまう。

 だが、そんな空気をぶち壊す男がいた。

 そんな事をするのは、ただ一人……堅石しかいないと思っていたら、まさしくその通り!

 空気を読まなすぎて、陽気に話しかけてくる。

 スケベ野郎男こと、堅石守。


「いや~酷いよ~荒ちゃんは~俺を置いて行くなんてさ~」


「あぁん!? てめぇが遅いからだろ!」


「そんなことより、俺とイチャイチャしようよ~またね~」


「てめぇ! 真剣な話をしてんだ! それ以上ふざけてみやがれ! ぶっ殺すぞ!」


 右足で思いっきり堅石を蹴り、その反動で倒れた堅石を踏みつける。

 私は、荒の行動を見て口が開いて塞がらない。

 この人達の可笑しな行動と言動には、呆れる他なかったから。


「それは、そうと……堅石!! てめぇも今回は協力しろよ!」


「はい! おうせのままに!」


 この人、分かってるんだろうかと私は不安になる。

 この人達に任せて良いのだろうか。

 憂鬱になった私は、溜め息をつき何でこんな人達といるんのだろうと思うと、気分が落ち込む。



 遂に、その日がやって来た。

 四神達と一緒に、レーダーの反応した方向に向かう。

 慣れたのか、四神はレーダーを上手く扱いその場所にすぐに着いた。

 その場所には、天使と人がおり、悪薬を渡そうとしていた瞬間に着いたようだ。

 その後、受け取ろうとした人は、何処か逃げていった。


「おい!! 天使! アイツの居場所について吐いてもらおうか!」


「あははは!」


 その天使は、不気味に笑い宙をまっているいて、尚且つ四神を嘲笑うかのような、態度をとる。


「そんな事知りませんよ!」


「とぼけるな! 分かってんだよ! お前がアイツを可笑しくして、どっかにやったのわ! よぉ!」


「ほほぉ、気がつきましたか……まあそうでしょうね……しょうがないですね……はぁ~……」


 そう話をしていると、次の瞬間一人の男と10才位の少女が、宙に浮かんで現れた。

 どっからどう見ても、その子は小学生にしか見えない。


「その男を倒してしまいなさい! 神専用機、機械第8号機かみせんようききかいはちごうき


「はは! コノオトコをタオシマス……」


 そう、天使の男がいうと、ロボット男は地面におりたち。

 ロボットみたいな、口調で話をする。 

 更に、四神の方に向かってくる。

 その時天使の男は、笑いがながら羽で羽ばたいて飛んでいったと思ったら、消えていた居なくなった。

 天使の男は、どうやら四神は眼中になかったらしい。


「まだ、見せてなかったな俺の本当の力を!」


 そう言うと、四神のカウンターからは龍の絵が浮き出てきて赤く光る。

 その瞬間、いつの間にか四神は龍の形をしていた鎧をみにまとっていた。

 しかも、兜も龍の顔の形をしている。


「見せてやるよ! 俺の本当の武器を!」


 その瞬間、カウンターが又光りだし、四神の手も光り、その光りの中で龍の形をした刀が出現し、それをロボット男に両手で持ち、刀の先端を突き付ける。


「てめぇを倒して! あの天使を引きずり出し、アイツの居場所を吐かせて貰う!」


「良いでしょう、カカッテキナサイ……ピコーン!」


 ピコピコと音がなり、そのロボット男と四神が互いに睨み合っている。

 その10才位の、少女が突然何かを叫び始める。


「私にもそんな愛が欲しかった……」


「どう言うことだよ……」


 一旦、四神とロボット男は睨み合うのを止める。

 その少女は私達の方へと顔を向けて話をし始める。

 その話は、とても切なくて悲しい話だった。

 

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