第10悪 最低ないじめ(後編)

 僕は、いつも天使の男にいじめられていた。

 しかも、クラスの皆はその男の権力が怖かった為か。

 誰も、僕のことを庇うものはいない。

 だけど、幼馴染みの女の子だけは自分を無視しなかった。

 僕に気を遣ってくれた。

 だが、そんな日々は続かなかった。

 天使の男が、僕を脅してきた。

 幼馴染みの女の子が、襲われたくなかったら。

 死ぬんだなと、何かのゲームでもやるかのように責めてくる。

 多分、憂さ晴らしに気分が良くなるためにやっているだけなのだろうと思う。

 だけど逆らえなかった。

 だって、逆らったら今度は庇ってくれた女の子さえも、酷い目にあってしまう。

 しょうがなく、その天使の男に従い。

 自殺して、幼馴染みを救うほうを選び。

 自殺をするために、屋上へと行くことにした。



 その話は、本当に酷かった。

 聞くだけで、気分が悪くなる。

 それも、誰も助けてくれないなんて。


 

「分かったか! だから! しょうがないんだよ! 仕方がないじゃないか! あいつの要求を飲めまなかったら、どうなるか……だから……あいつを倒さなきゃ……今度は、僕の大切な幼馴染が襲われる! だけど僕には力がない! この方法しかなかったんだよ!……うぅ……うぅ……」


 霧搭が言うも、四神は聞く耳持たず。

 カウンターを使い、出てきた刀で斬りつけようとする。


 だが次の瞬間!

 女の子が現れ、霧塔を庇う。


「止めて! 私が悪いの……だから斬るなら私を斬って!」


「助けなきゃ……いけないんだ!」


 霧塔は、泣いて答えた。

 私も泣けてきて、涙を流す。

 何でこんなにいい人が、酷い目に合わなければならないんだろうと思い。


「ああ……そうだな、こいつを救ってやらなきゃいけない!」


 そういうと、刀を構えて、霧塔の方に刀の先端を向ける。


「ちょっと! 待ってください! なんで! そうなるんですか!」


 だが、四神は止まらず。

 幼馴染みの女の子を避けて、霧塔の胸の真ん中に刀を刺す。


「四神さん! なんてことをするんですか!! 酷い……じゃ……な……いですか……ぐす……ぐす……」


 私は、なんて酷いことをするのかと泣いていた。

 それどころか、殺意すら湧いた。

 こんなに、苦しんでいて辛そうなのに、助ける処か地獄へ送ろうとする四神に。

 その四神の行動に、悪意すら向ける。

 だって、一番気持ちが分かりそうな、そんな人がやったのだから。


「僕は……もうダメか……」


 彼がそう言い、もう地獄に行くのかと思っていると、四神は私の様子を見て呆れ返り。

 やれやれ、こいつは全くと分かってねぇなと言わんばかりの表情で良く見ろと言う。


「ば~か、そうなんことするかよ!」


 はあ?

 私は驚く。

 だって、明らかに四神が人としてやってはいけないことをしているのにも、関わらずそう言うのだから。


「なんですか? それ? 何が馬鹿なんですか! 何が可笑しいんですか!!」


 私は、怒っていたが四神それを見て笑っていて、明らかに私の質問に真剣に答えようとしない。


「俺の刀の先を見てみろ……」


 そう言うので、刀の先を見てみると黒い薬が刀の先端に刺さっている。


「え? どう言うこと? 一体何が……起きたの?」


「しょうがないなぁ……はぁ……仕方ないから説明してやるよ! 悪薬ってのは…薬を最初に飲んだ日はこうやって、インフィニターの力を使って取り除くことができる……だから、俺はこいつを助ける為に刀を刺した。俺がそんな考えなしで行動すると思ったか? うんな訳ないだろ! こっちも仕事としてやれることはやる! そんなことも、察する事も出来ないから偽善者で、人に騙されていることも分からないブス眼鏡なんだろうが!」


「さらっと悪口言わないでくださいよ! それに、ブス眼鏡じゃないですし! と言うか、最初からそうなら、そう言えばいいじゃないですか! 全く!!」


 私と四神で、言いあっている。

 それもそうだ。

 だって、私にもこの事を最初から言わなかったし、何も伝えてくれなかったから、一瞬本当に終わると思い、ヒヤヒヤさせられた、心臓に悪いよ、この人と要ると。

 本当に、この人だけは最低最悪だな。

 それから霧塔は、困惑した表情で言う。


「なんでこんなことするんだよ! これじゃあ……どうにも出来ない……どうにも……ぐす……ぐす……これじゃあどうにも出来ないじゃないかぁぁ!!」


 そのとき霧塔は、四神に向かっていくのだが四神は、攻撃を避けて両手で抑える。


「お前に僕の気持ちが分かるかぁぁ! 僕みたいに虐めにあい苦しんでいる者や、自分の大切な物を傷つけられそうになり。それでも尚、自分を犠牲にしてでも。大切な人を守ろうと、たとえ自分の人生が悪くならうとも。守りたい気持ちが分かるのかー!!」


 じたばた暴れる霧塔と、それを抑え何かを伝えようとする四神。

 確かに、痛いほど気持ちが分かるのは、この人しかいない。

 実際、私はそのような場面にあったことがなかったので、想像もつかなかったけど。

 だからこそ、この話は私の今まで辛かった過去より酷いものだった。


「俺には、お前の気持ちは痛いほど分かる!」


 何時にもまして、真剣に言う四神には決して霧塔をバカにしたりしなかった。

 最後まで真面目に話す。

 私には、何も話さなかった四神だったが、そんな光景を見ていたら余計に泣けてきた。

 どんなに辛かったのだろうと、涙を流さずにはいられない。


「だから……生きてそいつのことを守ってやれ! この世の中にはな! 助けたくても大切な人を2度と、助けらない人間だっているから……だから! 生きて助けるんだよ! それに、そんな事をすると後悔するぞ! 後悔しても遅いんだよ! この俺のように……」


 意味深な言葉を発する、四神の表情は、いつにもなく辛そうで、悲しそうな表情になった。


 痛いほど分かるのだろう。

 自分も同じ目にあったように言ってるから、こんな悲劇みたくもないが目に入ってしまう。

 だって、私は本当の正義になりたいから、そして何時か四神の過去の事を全部話してもらい、四神を元のいい人に戻してあげたい。

 だって、こんなに人を思えるのだから本質的には悪ではないだから。

 そう考えていると、いつの間にか数時間たっていた。

 照れ臭そうに、四神は霧塔にどうすれば勝てるようになるかを伝授する。


「しょうがねぇなぁ……そんじゃあお前に、あいつに勝てる方法を教えてやるよ!  ブス眼鏡と幼馴染みの女は先に帰ってろ!」


 四神の、真面目な言葉を信じて。

 家にこの日は、霧塔の幼馴染みと帰ることにした。


 それから、2週間たった日。

 ある日幼馴染みの女の子と、護衛の付き添いで、外に出て買い物をしていると天使の男は、私たちの前へ来て道をふさいだ。


「ちょっと彼女達~着いてきて、もらえるかな?」


 天使の男が言うも、私はこの人達が彼女に対して、性的暴行をしようとしていたのを知っていたので、当然拒否をする。


「なんで、着いてかなきゃならないんですか! それに、知っているんですよ! 貴方が霧塔さんをいじめ、その大切な幼馴染みさえも性的暴行を加えようとしていることを!」


 あはははと笑う。

 そして薄気味悪い表情で、ニヤニヤとこちらを見てくる。


「まあ、気付かれていたか……まあ、あいつがあんたらに話していても無理もないな……なら仕方ない……ここでこの女も犯して! こいつらの写真をとり! それで、更に脅して黙らせればいい! 俺の女にしてやる! 全世界の女を牛耳ってやる! あはははは!!」


 次の瞬間!

 待ってと言う声が、周りから響いてきて聞こえてきた。

 それは、処かで聞いたような声だった。


「誰だ! 俺の趣味を邪魔するやつわ!」


 そこには、筋肉ムキムキの明らかに怒らせると危なさそうな人が一人いた。


「誰?」


 私は、動揺していた何故ならばそんな知合いは、誰一人居ないからだ。


「僕だよ、霧塔だ!」


「ええええ!!」


 私は、困惑していた。

 以前の霧塔と全く別人に見えたから、どうしたらそんなにたくましくなるんだろうと、疑問にすら思う。


「驚いただろ! こいつちゃんと鍛えたら、こんなにも強くなりやがった! 恐ろしい奴だ!」


 偉そうに、後から意味ありげな言動を言い登場する四神。


「いやいやいやいや! 2週間鍛えてもこんなに筋肉ムキムキになりませんよ!」


「俺を無視するんじゃあねぇ! 人間のどもの分際で!!」


 天使の男は、無視され大変ご立腹のようだ。

 だから、顔を真っ赤にしながら怒っていた。


「それより! あの天使の男を倒しましょう」


「分かってる! よしやれ! 霧塔! お前の覚悟と、本当の力をそいつらに見せてやれ!」


「はい!」


「嘗めやがって! いけ! お前ら!」


 天使の男がそう言うも、味方は四神によって既にボコボコにされた後で、残っていたのは天使の男ただ一人。


「使えねぇ奴らだ! まぁいい!! どうせ てめぇらなんかにやられねぇからな!!」


 天使の男は、無理して余裕な表情を装ってはいたものの。

 半ばやけくそになり、天使のカウンターの力を使い倒そうとする。


「やれ! 霧塔! お前の力をみせてやれ! そしてあの天使に目にものみせてやれ!」


「はい! カウンターを使います!」


「えええ? なんで霧塔さんがカウンターの力を使えるんですか!」


 私の質問は、当然の如く無視され、四神に言われるがまま霧塔は、カウンターの力を使いその力で天使の男を一撃で吹き飛ばした。


「なんでお前が……カウンターの……力を使える……」


「なんでかって? 俺が、火のカウンターの力の源となっているこいつの熱意を引き出しからだ! それは、どうでもいい! さあ! てめぇに権力を与えた奴を教えてもらおうか!」


 天使の男は、顔を青ざめ震えて声をだす。


「それは……言えねぇよ……あのお方の名前を言うとを何されるか恐ろしくて……無理なんだぁぁぁ!!」


 自暴自棄になった天使の男は、そのまま四神に向かって刀を降り下ろすが、それを四神は呆れ顔で避ける。


「あ~、もういいわ! てめぇらが話すわけねぇし! これで終わらせる!」


 四神が刀を天使の男に向け、降り下ろそうとする。


「待て! 天使の力だけは、奪わないでくれ! 頼む!」


「なに言ってるんだ! てめぇ見たいなクズにそんな権利ねぇよ!」


 天使の男は、斬られ天使の力を失なったのか、羽が無くなっていく。


「天使の力が……無くなって……いく……あああああーー!!」


 天使の男が叫ぶも、さらに四神は追い討ちをかけるかのように霧塔に天使の男をボコボコにする許可をだす。


「霧塔! 構わねぇやっちまえ! そんな奴!」


「はい! こいつだけわ! 絶対に! 許さない! 僕だけでなく僕の幼馴染みまでも、苦しめたこいつだけわ!!」


「止め……止めてくれ……頼む! 何でもするから謝るから! 今はもろに人間の攻撃も入るので、やめてくれよ!……絶対に痛いから! 止めてくれ! 止めろーーーーー!」


 ボコボコに殴られ天使の男は、そのまま気絶し、その場に倒れ呆気なかった。

 本当に弱い人だと思う。

 こう言う、人に権力を振りかざして、何でも上手くいってる人は特に。


「僕は、倒した……天使を……そうだ……これで心配ない……」


 霧塔を感動していた。

 そして、幼馴染みは喜ぶ。

 天使の男からの呪縛が無くなったことを。


 そして、私はぐすぐすと泣き涙が出てきた。

 やっと報われたのだと、四神と居て初めて良かったと思える。

 笑顔にもなる。

 これでこの人達は、本当の意味で強くなったのだと。


「おい! 四神!」


 何処かで、声がする。


「あれ? なんか……どこからか、声がしますよ?」


 四神も、照れ臭そうに内心喜びにふけていたが、その声がするところに目を向けると、急に顔を青ざめて嫌そうにする。


「まさか! あいつが来たんじゃないだろうな……」


 そう言っているのもつかの間、サングラスをかけている少女がそばの家の屋根の上に立っているのが見えた。


「まさか! てめぇわ!」


 その少女は、ニヤニヤと不気味に笑う。

 明らかに、四神をみて楽しそうに。


「まさか、てめぇが人助けとわな……世も末だぜ」


「なんで来てるんだよ! そもそも、俺は復活したんだしお前がこの世にいる必要ないだろ!」


「私が、お前の探している。天使の男の情報を知っているから、教えてやろうとしたって言うのに……それをてめぇわ! なんだ! その態度わ! あああん!?」


 急に屋根の上から降りてきて、四神の肩の上に落ちてきた。

 その後、四神はその重みでうつ伏せに倒れる。

 そして、そんな四神は何度も、その少々に踏むつけられる。


「この人、誰ですか!」


「ああ……言ってなかったな……ぐは! こいつは、インフィニターになって間もない時の知り合いで……ぐは! 名前を、天候荒てんこうあれとゆう……ぐは!…いいから踏むのも止めろ! 次いでにさっさとどけ!」


 その女は、四神を睨み付け眉間にシワを寄せ怒鳴る。


「なんだその態度わ! てめぇ! あぁん!?」


 四神は、又何度も踏まれ口からは、血が出ていて疲れた表情をしていた。

 そのあと正気を失った顔は真っ白になっていて意識がない。


「四神さん! しっかりしてください! 四神さーーーーーーーーーーーん!」


 私は何度も叫ぶも、四神は既に気絶していていて、声が届かなかった。

 その後、一向に四神は目を覚まさない。

 本当に、この人の知り合いはろくな人がいないと思った。

 実際、これより酷いことが始まるので、地獄の序章には過ぎなかったけど。

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