第6悪 最低な生徒(後編)
その後、機嫌は直ったのだが。
また、怒り狂うかもしれないので、何も言わず黙って四神の話を聞く。
「まあそれは、どうでもいいとして……さっさとこれを使って悪人を倒しに行くぞ! 着いてこい!」
私は、四神が言われるがままに。
悪薬を使っている者がいるであろう、場所まで一緒に向かう。
歩いて進んで行くと、ピコンピコンと音が鳴り始める。
実に、不愉快な音なので、あまり聞きたくないが何かを見付ける物みたいなので、諦めて捜索する。
「何ですかこの音わ」
「この辺りだろう……」
そんな、私の疑問に答えずに、不思議な機械を慣れた手つきで、操作する四神。
進んでいくと、音が激しくなる。
音が鳴る方向を行ってみると、そこには……優等生くんがいた。
私は何故、その人がそこにいたのかと思うも言わないようにした。
イチイチ、そこにいうと四神が怒るので。
「おい! てめぇか! 悪薬使って強盗しているって奴わ!」
優等生は、不敵に笑いながら答える。
いかにも、何事もないように。
「そんなわけないじゃないですか! あははは! どうしたらそうなるんでしょかね~?」
「このレーダーが、反応してるからに決まっているだろ!」
はぁーと呆れて、溜め息をしながら言う優等生。
その表情が、如何にも愚かな事を言っているなと言う顔をしていた。
「いいですか……そのレーダーが壊れているかは、疑わないんですか? 後、僕が犯人だとどうして断言できるのですか? そんなことする理由が、僕にあるんですか? そうでしょ? 今まであなた達が地獄に送った主婦や学生じゃないんですから」
それもそうだ。
優等生が、そんなことをやる動機も証拠もない。
今までの悪薬を使っていた人間と違って、充分生活は充実しているし、成績なども幾分か問題ない。
しかも、卒業した後有名な良い学校にも入れると言う、お墨付きも貰っているそうだから。
「あ~悪かったな! 疑って!」
「分かればいいんですよ! 分かれば」
そう答えて、優等生は急いでいるようだったのか、早歩きで帰っていった。
それは、何か大切な用事があるように見えた、多分塾にでも行くのだろうと。
「そうですよね~そんなわけないですよ~多分、四神さんの勘違いだったんですよ~」
私がそう言うと、呆れた顔でだから駄目なんだよ、お前はみたいな表情をしていた。
「はぁ~!? そんなわけないだろ!
あいつは、何か隠してるんだよ!」
「何を根拠に、そんな事を言ってるんですか? もう人を疑うのを止めましょうよ! 別にいいじゃないですか。何もなかったのだから」
駄目だこいつと、言わんばかりの表情でまた四神は私の顔をじっと見ながら説明する。
「あのなーあいつが、何で、未まで俺達がやってきたことを知ってるんだよ! どう考えても可笑しいだろ!!」
そう言われれば確かに、何故知っているのかと考えると、疑問に思う。
それも、何時も見てきたのかような、口振りでそう捉えられる。
「何で、ですかね?」
私がそう聞くも、また馬鹿にしてきたような表情で、手の平を目に当てて、その後どうしようもない人を見るかのような目で見ながら質問に答える。
「それは、あいつが悪薬保持者で強盗の犯人だからに決まってるだろ! 馬鹿かお前わ!」
結局馬鹿にされる私は、仕方なく四神の言うことを聞くようにした。
私も薄々は感じていたが、思いたくもなかったのだ。
優等生で、しかも正義を重んじている人が犯人なのだと。
「今度は、何処に行けばいいんですか?」
「あ~今度は、あっちの銀行の扉の前に向かって待ち伏せをする。そうすれば言い訳も言えないだろうよ!」
確かにそうだ、これは頷いて指示に従って行くしかない。
しかたなく、銀行の扉の前の茂みから、待ち伏せをする私達。
するとどんどん音が大きくなる。
見つからないように、レーダーの電源を四神が切ると、優等生が現れた。
「くるぞ……隠れろ!」
「分かりましたよ!」
仕方なく、四神に言われるまま側にある植木の後ろに隠れた。
四神は、私に人差し指を縦に立てて見せる。
「し~静かにしろ逃げちまうだろ……」
四神が小声で喋るので、仕方なく私も小声で話すようにした。
「何であの優等生が強盗やるんですかね……」
「正直……俺にも分からん……」
私達が、そう話をしていると、銀行の中で『キャー! 助けてー!』と叫び声が聞こえる。
「助けましょう四神さん」
私が銀行の中へ入ろうとすると……四神は止めた。
手で肩をおもっいきり、握りながら。
「待て待て待て待て!! もう少し、様子を見るぞ……」
四神が言うので、仕方なく待つことにした。
暫くすると、漸く銀行の自動ドアが開き、黒い化け物が出できた。
その瞬間四神が、いきおいよく飛び出す。
「今だー!」
そう言いながら、カウンターのボタンを押し、四神は刀を取りだしそれを持ち、縦に振り下ろして斬りつけると、黒い化け物が切れた。
斬られた黒い化け物の中からは、優等生がでてきた。
いきなりのことに、私が動揺していると。
四神はすぐさま、また、刀を構えて地獄に送ろうとする。
「てめぇは、さっさと地獄に送る!」
「待て待て待て! 僕のような優等生が何故強盗をやっていたのか気になるだろ?」
どうでもよさそうな顔で、四神は再度優等生を地獄に送ろうとする。
「待て! 今から自供するから! 自分は、退屈だった。何時もの平凡な毎日が………」
聞いてもいないのに、饒舌に話しをし始める優等生。
「そんな中、君達が悪薬保持者を地獄に送った所を見て思った。あの薬があればと……そんなある日、たまたまあの天使のお方が現れた。そのお方は、僕に不思議な薬をくださったそれが文字通り悪薬だ! 使っていくごとに上がる能力 薬を使うことに、段々と抵抗がなくなり、ますます気にいって使うようになった。あるとき暇潰しで強盗をやってバレなかったので癖になり。そして、それを皮切りに暇潰しで強盗をやり、続けた。金も稼げるし、暇潰しもできると一石二鳥だと思うと、楽しくなってきた。だんだんとそのスリルが快感へと代わり、辞めるに辞められなくなっていた。だが後悔はしていない。だって……退屈な人生に刺激が与えられたのだから……それに、アイツら学校の奴らは、僕が真面目で、健全な高校生だと思っていてくれる……ニヤニヤ……」
凄くニヤニヤしていて、優等生の面影もない処か。
そこには、異常な犯罪をも楽しみに生きている。
異常な人間が、いるようにしか見えない。
「どうせこんな事だろうと、思っていたぜ! さっさと地獄に送る! 下らない動機を聞いて損したな!」
四神は、呆れ刀を再び構え始め斬りかかる。
どうやら、さっさとことを終わらせたいようだ。
「んじゃあな!」
「待て待て待て待て!」
優等生がこちらを見ながら、困った顔で私にまだ四神に斬らないよう言ってくれと言う。
まあ、仕方なく聞き入るも、何故か人に説教し始める。
「あんたは、いいのかよ! こんな強盗犯、警察に言って逮捕しなくても! 大体、警察でもない人間が。罪を裁くのが、意味が分からないだろうが! そう思うだろ! 君も!」
私は、それもそうだと思ったが。
そんなことは、悪薬を使った時点で警察の力ではどうにも出来ないことを知っていた。
だから、私はこの人の言ってることは滅茶苦茶だし、ただ自分がその事から逃れようとしているようにしか見える。
とても、反省してるように見えないし、余計に印象が悪くなった。
正真言ってクズな人ぐらいにしか思えない。
「はあ? 何を言ってるんですか? あなたは、悪薬を使った時点で警察では裁けないのだから、地獄に送られることは、分かっているはず……なのにまだ引き下がるの?」
私がそう言ったら、優等生はこちらを睨み怒鳴り付けて、罵詈雑言を浴びせてくる。
自分の事を棚に上げて。
「何だ! あんたは、人を助けようと思わないのか! 口ばかりでどうしようもないよな!
そう言う奴らを、なんて言うかしっているかい? 偽善者って言うんだよ!」
私は、その言葉に苛立ち怒鳴り付けた。
こんな人間に今まで、あの人達は従っていたのかと思うと、クラスメイトやはりどうしようない人達なのかもしれない。
「はぁ~? もとわと言えば、あなたが薬を使って強盗しなければいい話しですよね~? あなたのような、私利私欲で人を傷付けて迷惑かける人は、救う価値のもないただのクズです! 今まで、会ってきた中で一番最悪で害しかないろくでもない人ですよ! あなたは!!」
その優等生は、さっきまでの余裕が嘘のように無くなり、ひたすら助けを求めてくる。
「助けてくれ! 頼む~! 君の事を話して皆の人気者にしてあげるから~お願い!」
私は、正直言って人を物や立場で釣ろうとする優等生の行為がクズすぎて、同情の余地もないので頼みを無視した。
優等生が、地獄へ送らていくのを、ゴミを見るかのような目でずっと見ていた。
すると優等生は、黒い渦が消えると共に姿を消した。
「世の中には、どうしようもない悪っているんですね」
四神は、その発言を聞くと大笑いをしながら、私のその言動の性でバカされた。
悪なんて物はないと言い、さらに小馬鹿にしながら説教をする。
「馬鹿を言え! ほとんどの人間は、どうしようもないクズな奴らだ! まあ、これを気に。人を助けたり人を庇うのを止めるんだな!」
私は四神に、この日ばかり何も反論を言えなかった。
そう、この日は正直言って自分のイメージで、人を判断してしまっていたから。
これからは、ちゃんと反省してこのような人達に、騙されないように気を付けようと思う。
それ意外は何も思えなかったから。
静かではあったが、何故か悲しみとかは全然ないようだった。
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