第4悪 最低な夫婦の人生(後編)
どうやら、すぐに現場の家についたようだ。
だが、人っ子一人すらいない。
可笑しいな~と思い家を確認するが、標識を見てもあっていた。
「とりあえず来るまでここで待つ!」
「本気ですか!?」
「本気だ! 今日会わなければ逃げられる可能性があるからな!」
そう言っているうちに、女性が出てきた。
母と、同じような少しシワがある、いかにもおばさんって感じの人が。
「おい! お前が朝顔の知りあいの女か!」
「はい……そうですが? 何か?」
なんで、母親の名前を知っているのかはともかく、いきなり知らない人に声をかけてタメ口聞くとか、どんだけ礼儀知らずないんだよと思った。
それはともかく、よく見るといかにも何も悪いことをやらなさそうな優しそうな人だと、みてとれる。
それもそのはず。
姿を見る限り、何処かの良いところのマダムみたいな人だと思える印象。
本当にこの人がやるのだろうかと、信じられない。
「本当にこの人がやったんですかね?」
「当たり前だろ! 他に誰も居なかったんだからな! 手がかりがない以上こいつしかいない!」
「あの~何のことですか?」
「 実は……」
私は、冷や汗をかきながら、ことのてんまつを説明する。
だって初対面の人にいきなり、人殺しの犯人だって言うのは、あまりにも失礼で申し訳なかったから。
渋々、ニュースのことや、この人を疑っていることを話した。
だがその女性は笑っていた。
「うふふふふ。そんなことは、ないですよ! 私は、夫のことを愛してましたし」
「四神さん本当にこの人が犯人何ですかね?」
「ちょっとあっちで話すぞ……」
私は、不思議にそうに思うも、四神の言うことをとりあえずきく。
なんでこの人、また人を疑うんだろ。
まあ考えてもらちが明かないので、妻に気付かれないり聞かれないように、建物の裏の影がある方へと隠れていき、話をすすめる。
「いいか? 何で旦那が死んでいるのにあんなに明るいんだ? 可笑しいだろ!」
「え?……それは……人がきたから笑顔で返しているだけでは?」
四神は、睨み付けながら私の顔を見て、目はつり上げていた。
それは、母が見せた顔よりも怖い顔で、私に怒鳴ってきた。
四神は、やはり滅茶苦茶だ。
「馬鹿野ろぉぉぉ!! どう考えたってあいつが犯人だろ! 他の人間は、目撃されてないんだからな! それっぽい人間も、怪しい人間も、いねぇし。車とか移動する物も、現場になかったんだだろうがぁぁ!!」
「でもどうやってあの人がやっている証拠を見付けるのですか?」
「それは、だな~……」
ゲスな顔をして、笑って口を開いたと思ったら、その口から発せられた言葉は、まさに最低で姑息な内容だった。
こんな事を考えてもよく実行できるよ、ある意味凄いと思った。
「え~! 現場にまで行って、隠れて妻がボロをだすまで待つって!」
人差し指を立てて顔の真ん中につけ、いかにも静かにしろと言わんばかりに、こそこそ私に注意する。
「し~……バレたら元も子もねぇんだから絶対にばらすなよ……」
「分かりました……」
渋々同意するしかなかった、それしか今は、方法が無いから。
しょうがないので、家の中の殺人現場まで行くことにした、簡単に家の扉は開いていた為に、入ることが出来たが、その部屋に着いてみたら異様な感じがする。
「何か変な感じがするのですが……」
「感じとれるようになっちまったか、これが悪薬を使いすぎた奴を発見できるインフィニターの感覚悪感だ!」
そうこうしていると、家に妻が帰ってきた。
とりあえず四神と一緒に隠れる。
なんで来たのだろうと思うも、四神がそんなことは分かるだろうの、一点張りだったので、仕方なくそちらの妻の方に意識を集中する。
「あいつが悪いのよ!! あいつが浮気なんてするから! あいつは、殺されて当然の事をしたのよ! 私がこんなに愛してたのに!……あ……い……つ……が……わ……る……い……」
妻がそう叫んでいると、黒い霧のような物に包まれていく。
そして、黒い化け物へと変貌していく。
それは、徐々に黒い化け物へと変化するという、気味が悪い光景。
私は、薄気味悪いその姿が見ていて、気持ち悪くなってくる気分が良くない。
「いまだー!」
四神は、カウンターのスイッチを押し、でてきた刀を手に持ち。
そのまま、その化け物へ向かっていったと思うと、斬りつける。
切り口からはどんどんと裂けて割れていき、妻がでてくる。
そして、妻は坦々と悪薬を使った経緯を喋り始める。
あの日は、旦那の帰りを待っていた。
だけど、一向に現れず。
私は、一人寂しく夕食を食べる。
そして、旦那の携帯を取り上げて見ると、浮気相手のメールが見つかった。
それにカットなって、天使の羽のような物が生えている、男から貰った悪薬を使い殺した証拠を残さない為に飲んだ。
その後気が付くと、旦那は死んでいたと、妻は経緯を話した。
「だって! あいつがどう考えても悪いのよ! 殺したのも、私は悪くない! あいつが、浮気なんてして、愛してくれなかったから! それに、どのみち証拠がないから殺人にはならない! だから、私は法律では裁けないわよ!」
四神は、唇を震えさせ妻の方を睨み付ける。
いかにも、怒りが爆発しそうになっていた。
「どう考えても、お前が悪いだろ! 悪薬を使ったお前が! それに、浮気だって証拠もそんなメールじゃわかんねぇだろ!」
妻が四神の方を睨み付け、怒った顔で怒鳴りながら答える。
「信じられるわけないでしょ! 一応メールもあったんだから! どう考えても浮気をしてたのは、その証拠で分かるでしょ!」
それはそうだ。
女とメールしていたら誰だって疑う。
「はあ!? お前は旦那も信じてやれねぇのかよ! それでも愛していたのかよ!」
「そんなのって! 愛じゃないじゃない!
それに、あいつは私がご飯を作って待ってた時、私がどんだけ辛かったかあんたに分かる!? 帰ってくるのは遅くてその間、どんだけ私が寂しい思いをして、待ってたかあんたに分かるって言うの!?」
四神は真剣な眼差しで、妻を見て反論する。
それは、自分の事のような真剣な表情で。
「そんなのは、言い訳だろ! それに愛してるならどんなクズでも、その人のことを思い、反省させるべきじゃねぇのかよ! それにお前には、愛せる人がいたんだろがぁ!! なんで、お前らは話あえる人が要るのに、話さずにそう言う事をやってしまうんだよ! 殺しても解決するわけねぇだろがぁ! それにだ、話せば分かることだってあるだろ! もしかしたら反省して、浮気を辞めさせる、ことも出来たかもしれねぇじゃねぇか!」
妻は、四神のそんな話を聞いて、自分のやってしまったことは、どうしようないことだと悟ったのか茫然と立ち尽くす。
それはそうだ。
だって、妻は旦那の話も聞かずに決めつけてこんな事をしてしまったのだ。
それに四神の顔はいつもと違い、真剣な物言いだった。
その表情と言動からは、寂しさと切なさえも感じとれた、何故かは知らないが。
漸くして、自分がした愚かな行いが完全に分かったのか。
犯人の妻は、大人しくなった。
それから、漸く経って徐々に自分のしたことを振り返り、語り始める。
「そうね……私がどうやら悪かったみたいね……それに、あなたは強いわね……あなたみたいな心の持ち主だったら……あの人と話し合って、殺さずに解決したかも知れないわね……もういいわ……地獄なりなんなり連れていって……」
四神が、カウンターからだした刀を振り下ろそうと、構って斬ろうとするも、私は地獄に送る、その行いを必死に止めるために、体をはって妻の前に出た。
「この人は、あなたが地獄へ送ってはいけない! 警察の所に行って自首しましょ! そうすれば、いずれ反省して……」
そんな私の発言に四神は、いい加減にしろといい、何で地獄に送らないといけないのかを説明し始める。
「馬鹿やろぉぉ!! こいつを警察に届けても、なんも証拠がないから釈放される! だから意味ねぇーんだよ! 後、前にもいっただろがぁ! 悪薬を使ってやったことは証拠が残らないって! それと! 悪薬を使った者は、自分の負の感情と、一生戦い続けるしかねぇんだ! それに! いつ暴走して化物になって暴れるか、わかんねぇんだぞ! 今のところ地獄へ送るしか、解決方法がねぇんだよ!!」
私は、茫然と見ているしかなかった。
四神が言う通り、今のところそういうやり方しかないのだろうと。
正直言って私には、妻を救う方法もそのことを解決する方法も全く思い浮かばない。
その後は、あまり覚えていないが、四神がインフィニターの力を使って、地獄へと送ったことは覚えている。
また私は、一人の人間を救えなかったのだ。
こんな事を悔やんでも仕方がないのだろうが。
悔やんでも悔やみきれない。
そんな私に四神は、無駄だのやるだけ意味ないだのと説教をする。
「努力すれば、必死に何かをやれば人生何とかなるかもしれないじゃないですか! なんで、無駄だのやるだけ意味ないだの、言うんですか!」
四神は、暗い顔をし深刻な表情で、うつ向きながら現実の話を語り始める。
「世の中には、努力をしてもどんなに頑張っても、上手くいかない事は、沢山ある……だから、意味ねぇんだ……」
私は、はぁ~なんだそれと思うも、母が遅くなると心配するのでひとまず自分の家へ帰った。
だけど、モヤモヤは収まらなかった。
しかも、自分の部屋で自分の無力さを感じるしかない。
確かに、自分でも分かっていた。
どんなに、どんなことをしてもどうにもならない時もある。
だけど、ああいう四神の決めて着けた言い方やら、最初から人を見捨てて助けてやりもしない行動や言動は可笑しい。
そんな事を考えてはいたが、自分ではどうにも出来ないと分かっていた。
そう思うと、涙を流しながら帰って寝転がっていた、ベッドにうつむきながら泣く。
涙が止まるまでずっと、思いの丈をぶつけて解消されるまで。
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