第1章

第1悪 史上最低な男(前編)

 以上これが、悪薬戦争の起こった出来事である、と言うかそうとしか書かれてなかった。

 その他には、ページが真っ白で何も書かれていない。

 それ以外はこの本には、本当の悪役戦争の真実であると、書いてあるだけだ。

 しょうがないので、私は本を読むの止めて、仕方なく本を閉じた。


「何度見ても、悲しいですね~この物語は


 私は朝日雫あさひしずく、この物語読むために、図書室に来るほど好きな女子高生だ。

 何故かこの物語を見ると、元気がもらえたから。

 本当に好きで、毎日読みたいほど好きである。

 だが、この物語にはこの他には続きが何もない。

 だから、図書室に行く用事がある時に、続きを探してはいるものの、何故かこの本の続きだけは、一向に見つからない。

 本当に不思議だなと思う。

 意図的に、誰か隠しているとしか思えない。

 しかも、この本以外は全部あり、最初から最後までの話が揃えてある。

 不自然極まりない。

 今の現状も似たようなもので、これも30年前位の出来事だから、度々こう言う悪薬が使われた事件は目撃される。

 大体的には、表には出てきていていないものの、悪魔でそう言う噂ばかりだが。

 これ程の、戦争には流石になってはいないだけで。

 

 そう、この世界の現状にフケているうちに、トイレに行っていた親友のふみが帰ってきていた。


「行くよ!」


「うん!」


 私は、元気よく返事をする。

 本当に、こんなにいい親友を持てた事を感謝するしかない。

 私は、あまり皆に好かれていないのだ。

 それは、あまりにも説教臭くて、面倒臭いからだ。

 だけど、文だけは違った。

 そんな、いつも一人でいる私を仲間はずれにすることもなく、親しくしてくれた。

 文は本当に人気者で、皆に好かれていて羨ましく思うこともある。

 だけど、そんな親友を嫌うことはなかった。

 むしろ、誇らしく思っていたし、尊敬もしている。

 この日は、文と一緒に家へ帰った。



 翌日、ホームルームの最中で、何処からともなく声がする。

 そんな中、教室では皆が一斉にグランド側の窓の方に集まっていた。

 本当に、迷惑だ。

 今から、クラスの委員会決めるってのに。

 そんな私の思いは届かず、誰も全く私の話を聞かないどころか、相手にもしてくれないで、見向きもしない。

 声のするほうばかり注目していて、全く授業を真剣に受けていない。

 そんな状況で、インフィニター達の少年少女達の声が聞こえてきた。


堅石かたいし今日ここに来た理由は、分かるだろうな」


「この中に悪薬あくやく保持者が居ると言う事ですよね」


 どうやら、皆はインフィニターが珍しいのか、授業そっちのけで興味津々で楽しそうに語っている。

 その後インフィニターの、少年と少女は急いで走っていった。

 少年の方は、サルみたいな顔つきで、女の子は柄が悪そうなそんな感じではあったが、可愛い風貌をしていたと思う。

 どうやら、悪薬保持者が居ないか、どうかを探していたらしい。

 まあ、当然と言えば当然か、悪薬を使うと、悪人と言う化物になり、犯罪ばかりするようになり、被害がでるし。

 この人達が、悪人を探すのは彼らしか悪薬を使っている者を、物理的に裁くことはできないからだ。

 スピード勝負の仕事なので、一刻も早く見つけ出さなければならないということらしい。


 彼等は、インフィニターというもので。

 悪薬保持者や、悪薬を使った者を取り締まる仕事もやっているから、必死にみつけださなければならない。

 インフィニターは、そう言う役目だからだ。

 しかし、私達には何の関係全くないので、それで生徒達が授業を放棄してまで、そのような行動をして騒いでいい訳がない。

 自分達、一般人には関係のない話しで、授業をサボっていい理由にはならない。

 私は皆に、真面目に静かに授業を受けるよう説得する。

 それと、今は関係のないインフィニターの話を言わないように注意もして。


「皆さん! 静かに! それと、授業に関係のない行動や発言は止めてください!」


 だが、皆は私が何を言っても聞く耳をもたない処か、暴言と罵声を浴びせてくるばかりで、全く反省することもなく各々で好き勝手に罵詈雑言を言い始める。


「はあ? なんでてめぇの言う事聞かなきゃならないんだよ!」


「そうよ! そうよ!」


「リーダー気取りで物を言わないでよ!」


 リーダー取りと言うより、私以外仕切りたがらなかったから、やらしされいただけだ。

 そう思うも、皆は結局言いたい放題言い、私に酷い暴言を浴びせてくるばかりで、一向になにもことは進まなかった。

 そんなことより、私は悔しくて悔しくて堪らなかった。

 間違っているのに、何も言い返せなかったことに。

大人数で責めてきて、味方もいないこの状況では、当然太刀打ちはできないが。

 このクラスで、私は彼らに滅茶苦茶嫌われている、何を言っても反対される。

 つまり、私の発言など意味など持たない。

 結局、彼らの気に入るか気に入らないかで、物事は決まってしまう。

 私は何も言わず、立ち尽くしてひたすら時を待って黙るしかない。

 だけど、一人の女の子が助けてくれた。

 良く見て見ると、私のたった一人の友達文だった。

 その子だけは、他の人とは決定的に違う。

 いつも、私を裏切らないで助けてくれる。

 そんな彼女がいるだけで、私は何処か元気が出てきて心が救われているような気がした。


「皆酷いよ! 雫はちゃんと授業受けて欲しいだけなのに!」


 文の言動に、皆は何も言わなくなるだけだった。

 教師も、私が酷い言葉を言われているのにも、関わらずさっきから何も言わない。

 むしろ、教職者であるあなたが、何も言わず対処しないのはどうかと思う。

 多分だけど、面倒だからスルーしているのだろう、所詮大人はそんなものだ。

 そうこう揉めていると、チャイムだけが鳴り響き、学校の授業の終わりを告げて、放課後になる。

 皆は、教室から出ていく私など居ないかのように、無視して次々と。


 そんな状況では、私は茫然と立ち尽くすだけしかない。

皆が思い思い叫びながら、文句やら愚痴などを言っていたが、そんなことはどうでも良かった、それよりこの状況が辛くて辛くて、泣くしかなかった。


「もういいよ……行こ……」


 文は、そう言いながら私の手を掴み引っ張り、一緒に窮屈な教室へと出してくれた。

 そんな私を、文は帰り道で何度も励ましながら、一緒に帰ってくれた。

 私は、たとえどんな言葉を投げ掛けられても、虚しくなるだけだった。

 無性に、涙が溢れ出してくる。

 ポロポロと、まるでダムが決壊しているかのように。

 この日は、家にたどり着くまで、止まらなくて困ったけ。



 思い返すと、初めて伊藤文いとうふみと最初に出会ったのは、私が一人で寂しそうにしている時だったけか、そんな私をみかねて声をかけてきてくれた。

 あの日の出来事がなければ、今頃私には誰も味方はいなくて辛かっただろう。

 そう!

 それは、まさに運命的な出会いだった。

 文と話すと、不思議と私の心はすぐにラクになり、文といるときだけが幸せに感じられた。

 あの時も、クラスメイト達は私に面倒だからといった理由で、委員長にさせたくせにやりたくないなど、生意気に命令するななどと、文句ばかり言われて気分が落ち込んでいたっけ。

 あの時も文は庇ってくれて、そんなクラスメイトに対して、私を庇うように怒ってくれた。

 散々な目にはあっていたが、文が居てくれたおかげで助かったし、毎日が楽しく感じられた。



 私は、気が付くといつの間にか何故だか寝ていたようだ。

 しかも、もう朝になっていたので、急いで朝食も食べずに慌てて家を出る。

 何だか、胸騒ぎがしたようだが気のせいだろうと思い、家の玄関のドアを勢いよく開けて、早足で学校へと遅刻しないように急いで向かう。

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