お姫様なんてさ

「別に俺、あんたのこと助けたわけじゃねえし。自惚れんなよ、たかがお姫様ごときが。ただ王の元に生まれたくらいで、いいよなあ、みんなに大事にされて」

 なんて口に出かけたが、寸前のところで飲み込む。相手は姫だ。こんなことを言って、国王に告げ口されたら、自分は間違いなく生きていけなくなるだろう。一生牢獄なんてこともあり得る。

「いえ、当然のことをしたまでです」

 紳士ぶってニコリと嘘の作り笑いをし、甘やかされて生きてきただろう姫の手前で跪き、その手に口づけを落として、使い古されて感情も含まれない決まり文句を言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る