読書の邪魔はやめなさい

 私は休み時間に読書をする。暇だからだ。背後に誰かがいる気配がした。しばらく動かないかと思えば

「なんだ、てっきり女の子が読むような、あまーい恋愛小説でも呼んでたのか、と思えば、違うんだな」

 と私の肩の上に顎を載せる形で覗き込んでくる。不意をつかれ、びくっと体が跳ねる。すぐ真横に彼の顔の存在を感じ、それから逃れようと無意識に床を足で蹴って椅子をずらし抜ける。後ろから喋られるとぞわぞわするからやめてほしい。

「なに? 感じた? 敏感だなあ……」

 ニヤニヤと憎たらしく笑う意地悪な顔が、容易に頭に浮かんだ。本当にデリカシーのかけらもない男だ。イライラしたので彼の足を思い切り踏んづけてやった。

「イテッ!」

 ざまあみろ。

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