死神さん

「死神さん、私の魂を奪ってみなさい。どうやったって私は死なない」

 死神は、ぴたりと足を止めた。ゆっくりと振り向いた。

 金の髪の白いワンピースを着た少女がいた。その眼には怒り、恨み、悲しみ、そんなものが混ざっていた。

「かわりに私があなたを殺す」

「無理だな」

 死神は、嘘の笑顔を作る。

「きみは、女の子だ。そして、私は男。こうやれば――」

 死神は少女の両手をつかみ、地面に押し倒した。

「――きみは身動き一つできない」

 少女は驚きのあまり、声が出ない。死神はその様子に苦笑した。

「それに、ほら」

 死神は、少女のほうに顔を近づける。唇が触れるか触れないかの近距離。少女は反射的に目をつむり、ぽっと頬を赤くした。

「すでにきみは私のことを男として意識している」

 死神はにやりと笑う。少女は、慌てて思考が追いつかないままでいた。

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