第11話 まるでゲームのような世界(後編)

 では、2つ目の魅力は何でしょうか?

 私は「レベルアップという概念」だと思います。これは主に主人公(≒読者)に優しい仕様ですね。


 ゲーム風の世界において、主人公は戦闘を重ねて強くなって行きます。

 例えば、序盤の弱い主人公は「角ウサギ」「大ネズミ」「巨大ガエル」のような、『あまり狂暴ではない動物系』が相手です。それらを何度も倒していると、次第に主人公が強くなって、今度は「スライム」や「ゴブリン」のような怪物系、あるいは「大イノシシ」や「魔狼」のような猛獣系を倒せるようになります。またそれらを何度も倒していると、更に主人公が強くなって、次は「オーク」「オーガ」「ミノタウロス」……etc といった具合にインフレして行く訳です。


 考えてみて下さい。


 ―――― こんな楽な世界が、他にあるでしょうか?


 これは筋トレしたら筋力が上がった、などという範疇の話ではありません。

 弱い者の〇太いじめをしていたら、強い奴ジャ〇ア〇に勝てるようになる、というシステムです。

 あるいは、ただ延々と目玉焼きを焼いているだけで、ある日突然、美味しいオムレツの作り方を閃いて、そのオムレツを作りまくったら、いつの間にかに絶品のプリンが作れるようになっている、くらいの話です。


 もう一度、言いましょう。


 ―――― こんな『ラクな世界』が、他にあるでしょうか!?


 なろう読者諸兄の中には「ゲーム風の世界を楽しみたいなら、VRMMOとかでいいじゃない」と仰る方も居るかもしれませんが、これこそが正に『まるでゲームのような世界』に『転生』したい理由の最たるものです!(当者比)


 出来る事ルーチンワークを繰り返す。ただそれだけで、出来ない事が出来るようになり、それに伴って、収入や周囲の評価も上がって来る。そんな『楽な世界』だからこそ、多くの読者が『住めるものなら、是非、住みたい』 ――『転生したい』と憧れるのです。

 『成せば成る』とは限らない、『努力が報われる』保証は無い。そんな現実世界を生きる読者諸兄だからこそ、物語フィクションの中くらいはそう在って欲しいという願いは強いもの。『成り上がりモノ』のような成功譚が支持されるのも頷ける話です。


 そして、だからこそ、『努力が実ると保証された世界』――すなわち、『まるでゲームのような世界』を求めている人が少なからず居る。

 そういう事なのではないでしょうか。

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