第10話 まるでゲームのような世界(前編)

 皆さま、こんばんは。灰塵でございます。

 この企画も、明々後日で終了ですね。長らくご覧頂き、ありがとうございます。

このエッセイも残すところ、あと数話ほど。最後までお付き合い頂ければ幸いです。


 さて。

『なろう』の異世界にはしばしば、『まるでゲームのような世界』が登場します。

単に、魔法が使える、とか、モンスターが居る、とかではなく、「ステータス」「スキル」「Lv」「経験値」などの概念がある世界の事です。

 この系統は多少下火になりつつも、未だに根強いファンを持つ、強豪設定テンプレの一つですね。という訳で今回は、『まるでゲームのような世界』の魅力について迫って参りたいと思います。


 まず一つ目の魅力。それは『物理法則に左右されない』という事です。

 これは主に「作者に優しい」部分ですね。小難しい事を考えずに、やりたい演出が自由に出来るのは、シロウト作家にとっては垂涎の設定テンプレです。

 なかでも有名なのが<二刀流>ですかね。ゲームとリアルでは、<二刀流>の立場は、ほぼ逆転します。物理法則が基本の世界においては、二刀流はやや厳しいのが現状ですので。


 というのも、極端な言い方をするなら、一般的な刀剣類において、その破壊力を決める最大の要素は「速さ」だからです。ある程度の質量と十分な強度を持った物質(刀剣類)をどれだけ勢い良く叩きつける(あるいは、擦り付ける)かが「威力」を決めます。となれば、重い金属の棒を2つも3つも振り回すより、一つに絞って全身全霊で打ち込んだ方が「威力」が高い、という結論になるからです。

(逆に、所定個所に当てれば勝敗が決まる=装甲を貫通する必要が無い環境、つまり試合や決闘の類だと、二刀流に意味が出てきます。マンゴーシュの類がその代表例と言えるでしょう)


 一方、ゲームの世界はどうかというと、「威力」はその攻撃に設定された「攻撃力」によって決まります。別途に何か設定されない限り、見た目や過程は問われません。巨人の踏みつけだろうが、少女の駄々っ子パンチだろうが、「攻撃力100」と設定されていたなら、それはどちらも「100の威力を持つ」のです。

 こうなると、「如何に当てるか」が最大の焦点になってきます。当たり判定が2ヶ所あり、それぞれの可動域も広く取れる<二刀流>が輝く環境ですね。ちなみに、「ラ〇トセ〇バ〇」「ビ〇ムサ〇ベ〇」「ヒ〇ト〇レ〇ド」あたりも似たようなものです。速さで斬るのではなく、押し当ててダメージを与える武器ですから。


 これ以外にも、ゲーム風の世界であれば、様々な無茶が通ります。例えば、「全身の『攻撃力』当たり判定を指先一点に集中して、凄まじい威力のデコピンを放つ(代わりに、それ以外の部位では虫も潰せず、割り箸も割れない)」という演出ネタも余裕で容認される世界です。


 (作者が)やりたい事が簡単に実現できる世界。それが『まるでゲームのような世界』の魅力の一つ目なのです。

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