第7話 何故、彼らは「転生」するのか

 灰塵です。

 皆様、お久しぶりでございます。

 改元記念超特大GWは如何でしたでしょうか?

 連休を楽しまれました方々は、おめでとうございます。

 連勤を生き抜きました方々は、大変お疲れ様でございました。


 何はともあれ、本日より更新再開とさせて頂きます。

 長らくお待ち頂きました皆さまには、心より御礼申し上げます。

(当方もまさか一度も更新しなくなるとは思いませんでした……)



 さて。

 今回は『なろう』における大キーワードの一つ、

「転生(てんしょう/俗読み(?)=てんせい)」について、です。


 元は仏教等における「生まれ変わり」を指す言葉ですが、『なろう』においては、


「死後、現代人としての知識と記憶を保持したまま、過去や異世界の住人として新たな生を得る事」


 という定義になるかと思います。いわゆる、転生モノと呼ばれるジャンルですね。


 この「転生」ですが、テンプレ化するまでには、ある程度の「流れ」があったようです。

 まず、何らかの方法で現代人が異世界や過去に行く、「転移」モノ。

 続いて、過去や異世界の人間の中に現代人の意識が入り込む「憑依」モノを経て、最後に流行したのが、この「転生」モノとなるようです。


 では、何故「転生」モノが爆発的に流行したのでしょうか。

 これはあくまで私見ですが、


「転移より転生の方が『読者にとって』都合が良かった」


 からだと思います。

 誤字ではありません。筆者ではなく、読者です。


 前項で「現実では出来ない事をする為に異世界へ行く」という話をしたように、わざわざ異世界を舞台にするという事は、その必要があるからです。

 筆者は「現代人主人公に異世界でやらせたい事」があった。そして、そこに読者がついて流行したという事は、「現代人主人公が異世界で○〇する物語」に需要があった、という事に他なりません。

 もしここで、「転生より転移の方が好き」という読者が多ければ、流行は「転移」が主流になったはずです。しかし、実際には元々「転移」が最初にあって、後から出てきた「転生」が台頭、爆発的に流行しました。これは読者が「転移より転生の方が好き」と評価した結果だと思われます。


 では、「転移」と「転生」の違いは何でしょうか?

 それは過去の清算の有無です。


 転移の場合、それは主人公の現人生の延長上に存在します。

 大抵、突然転移するので、地球側から見たら突然の失踪という事になります。

 仕事や学校、家族や友人はどうしているでしょうか?

 とてもとても心配です。

 もしかしたら、いつ帰って来ても良いように、毎日一人分多く食事を作っているかもしれません。あるいは、休日返上で目の下に隈を作りながら、駅前で人探しのビラを配っているかもしれません。もし、転移直前に誰かと喧嘩でもしていたら、その相手は自分との喧嘩が失踪の原因かもしれないと、毎日自分を責めながら悔恨の日々を過ごしているかもしれません。

 あぁ、なんということでしょう! 誰かの叫び声が聞こえてきそうです。


 重いよっ!

 暗いよっ!

 これじゃあ、折角の異世界を楽しめないよっ!?


 そうです。

 異世界モノを支持する読者は「異世界を楽しみたい」のです。

 無論、「転移独特の葛藤が好き」という読者も居るでしょうが、主流では無かった、という事なのでしょう。

 多くの読者は「やりたいけど出来ない事を代わりにやってくれる主人公」を求めていた。そして、それを追体験する事で、異世界でのアレやコレを満喫したかった。

 だから、死後転生が支持されたのだと私は思います。

 また、人外転生も同様の理由です。やりたい事があるけど、場合、必要な記憶や思考だけ現代人を引き継いで、余計な部分は全部カットすることが出来ちゃいます。

 やりたい事だけ満喫して、余計な部分は全部カット。読者サービス全開なエンタメ特化テンプレが『なろう転生』の正体だと、私は思います。

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