第3話 もしかして、『なろうテンプレ』とは……

 さて。

 一般にテンプレ批判というと、やれ『似たような話ばかりで飽きる』だの、やれ『オリジナリティが無くて面白みに欠ける』だの、ようするに未知への欲求や願望をぶつけている様に思うのです。

 人間の欲望には終わりがないとはよく言ったもので、新しい刺激を渇望するのは、人間心理として当然の事です。


 ですが、ちょっと待ってください。『小説家になろう』が元々、二次創作系サイトだとするなら、話は少し変わってきます。

 二次創作とは原作(一時創作)を元にした派生的作品群の事です。ですから、原作と同じ(ような)登場人物が出てくるのは、二次創作なら当然です。舞台設定や、話の筋なんかも、原作を継承する限り、同じ(ようなもの)であって当然です。そして、想定された読者は同好の士たる原作ファンや二次創作仲間ですから、そんなことは当然理解しています。


 彼らは自分が書きたいと思った『原作に対するif(もしも)』を書いているだけです。

 だから、その部分以外は、原作に倣います。記号化・テンプレ化します。原作ファン同士なら、台詞一つや仕草一つで、どれが誰だか解るそうです。それで構わないんです。書きたい部分、伝えたい部分は、そこじゃないから。


 時は流れ、流行りも変わり、もはや『なろう=異世界転生』などと揶揄されるに至った昨今ですが。二次創作同好会だった頃の『読み方・考え方』は今の"なろう"にも継承されているような気がします。


 "なろう"で似たような作品が量産されているのは、本質的に"何かの二次"だからです。

 『あの作品、自分ならあのシーンをこうしたいな』とか、『この場面だったら、この方が面白くね?』などというような、現行作品(小説とは限らず、市販のゲームやアニメなども含む)に対するちょっとした不満や思い付きこそが、執筆の動機になっているのではないでしょうか。


 もし、RPGツクールやSRCをご存知であれば、それらで作られた作品群をイメージして頂けると分かりやすいでしょう。彼のフリーゲーム群はデフォルトの素材や機能だけで作られている部分と、外部あるいはオリジナルの素材やオプションを総動員して作られた部分とで、明確に差異が出ます。だから、作者が何を表現したいのか、作品のどこに愛が注がれているかが、一目瞭然です。それと同じようなものだと、考えてみてください。


 そうであるならば、書きたい部分以外が似たり寄ったりなのも当たり前の話です。他の部分まで手を加えてしまったら、『あの作品のあの部分を自分好みに変えたい』という、そもそもの前提が崩れてしまいます。


『もし、A作品の○○とB作品の◇◇が出会ったら?』


 例えば、そんなスパロボ的発想で作られた作品があったとしたら、その登場人物が『どこかで見たようなキャラ』なのは当然です。それが作品の前提条件であり、見せたい部分はキャラ本体ではなく、出会わせた事による化学反応の部分なのですから。


 そう、つまり『なろうテンプレ』とは、『よく来てくれた、同志たちよ! あぁ、その部分は"いつものアレ"だから、知ってる奴はザックリと読み流してくれたまえ』という、作者様からの親切メッセージなのではないでしょうか。

 少なくとも、私はそんな風に思います。



 というわけで、『なろうテンプレ』に関する私なりの概論でした。

 具体的なテンプレの内容については、次回以降に扱います。


 それでは、ひとまずはこの辺で。

                          from 灰塵

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