第2話 小説家になろう、とは

 では、『小説家になろう』とはどういう場所なのか、という事が問題になります。


 ここで一つ、お断りしておくと、今回は伝聞情報が多数含まれます。というのも、私自身がネット小説界隈から長く身を引いていたので、『なろうの成立~隆盛まで』の時期に関して、自身の目でその流れを確認していないのです。ですので、あくまで『なろう成立以前の私の経験・記憶』と『自称・当時を知る者からの伝聞』と『現存する幾つかの事例・情報』から導いた推論、である事をご承知おきください。


 なろう成立より、少し前。それはインターネットが普及し始め、たくさんの人が自分のホームページを立ち上げていた時代でした。中には自作の小説を掲載していた人も少なくありません。私もその一人です。

 当時、読者を獲得するためには、自分のホームページまで来て貰う必要がありました。そのため、他のサイトに相互リンクを申し込んだり、リンク集サイトに掲載してもらったり、様々な方法でアクセス経路を確保する必要がありました。

 そんな中、投稿系サイトの存在が大きくなりました。『自分の読みに来てもらう』のではなく、『皆が読みに行く場所に自分の作品も置かせて貰う』という、発想の大転換! これによって、ウェブ小説の発表にHTML知識の習得やアクセス経路確保などの手間がほとんど不要になったのです。


 大規模な小説投稿サイトが出来上がると、そこには当然、『自称・プロを目指している』人たちが少なからず現れます。彼らはお互いに掲示板などで激論を交わし、日々しのぎを削るようになったそうです。

 ですが、小説投稿者はそんな人たちばかりではありませんでした。例えば、二次創作系の皆さんです。彼らは別にプロなんか目指していません。ただ、自分達が手掛けた二次創作作品を持ち寄って、同好の仲間たちと共に、楽しく語らいたいだけなのです。

 そんな彼らは、次第に声を掛け合って、とある小説投稿サイトに移住して行くことになります。そのサイトこそ、『小説家になろう』だったのです。


 なんということでしょう!

 彼のサイトはプロ小説家を目指そう、などという登竜門的サイト、むしろ、二次創作作家たちのまったり系同人サイトだったのです。筆者も最近知りました。驚愕の成立秘話です。

 確かに『小説家になろう』は二次創作の許諾枠の多様さが群を抜いています。この点については、原則として自社作品(の一部)しか許諾を出せない、出版社系サイトとの大きな違いと言えるでしょう。


 つまり、プロなんか目指さなくたっていいじゃない、好きなものを持ち寄って、ここで『小説家(気分に)になろう』という、同好会のようなもの。それが『小説家になろう』の原点だったのです。

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