家庭内の虐待から家出した少女キララは、スーパーで万引きをして捕まったところを売れない小説家の東雲司に助けられる。写真でしか知らない実の父親に瓜二つの司にキララは一目惚れしてしまい……。仲の良い父娘のような、年の差の恋人のような二人の疑似家族ラブストーリー。
キララを保護した司の通報で駆けつけた警察により、数々の余罪で彼女の母親は逮捕され、キララは自由の身に。身寄りのないキララの後見人を引き受けた司は、キララを家族に迎え入れるが、彼女は一人の男性として司を見ていて、積極的に誘惑してくる彼女に戸惑いながら始まる親子関係が初々しい。
生まれたときに出生届けを出されなかった無国籍児で、学校にも通ったことがないキララの暮らしは問題ずくめで、社会復帰を目指す彼女を手助けする司や、さまざまな人々の努力も見どころだ。
温かい家族と安らぐ自宅、同年代の子との交流や学校生活。子供が当たり前に得られる愛情や環境を、14歳にしてようやく与えられた少女の姿に思わず涙がこみ上がってくる。
悲惨な境遇でも前を向き、一途な想いを抱いて歩くヒロインの成長が胸を打つ人間ドラマだ。
(「養父と娘の物語」4選/文=愛咲優詩)