第5話 we:la ウェーラ
鹿の肉が鍋で煮られていた。
とてもうまそうな香りが漂っている。
さっき捕らえた鹿の肉だ。
ときおりウェーラがエルミーナの尼僧の顔を睨む。
ウェーラはシュルトスの妹だ。
ウェーラの気持ちには気づいていた。
だが、シュルトスは血は繋がっていないが自分たちは兄と妹だと考えている。
二人は本当の兄妹ではない。
"um...
「へえ……ウェーラ、あなたはシュルトスが好きなの?」
突然、エルミシアがとんでもないことを言った。
ウェーラの顔が白くなる。
"me,
「も、もちろん! 兄を家族として愛してます」
"
「嘘ね」
エルミシアが言った。
"
「あんたは兄を『男』として愛してる」
ウェーラは驚いたように大きく目を見開いた。
"
「そして、あんたは女魔術師でしょ」
本当にこの少女はエルミーナの尼僧なのか?
シュルトスは彼女が災いをもたらすためにきたのだと思った。
"
「わ……私は女魔術師じゃない!」
"
「また嘘ね。私は尼僧よ。尼僧は魔術の力がわかるの。あなたも私の尼僧の力がわかるでしょ? 心配はいらない。私は国家魔術師が嫌いよ。あいつらにあんたのことを話したりしない」
一瞬、シュルトスはこの少女は殺すべきだと思った。
しかし、彼女はエルミーナの尼僧である。
エルミーナの神罰は恐ろしすぎる。
"
「理由を説明して。なんであんたたちはこんなところで暮らしているの?」
彼女は強い興味を抱いているらしい。
"
「兄様」
ウェーラが言った。
"
「この女を殺すべきよ」
"
「やめろ!」
シュルトスは言った。
ウェーラが本気なのはわかっていた。
"
「や、やめてよ……」
エルミーナの尼僧もウェーラの気持ちに気づいたようだ。
"
「エルミーナの神罰は……」
少女の声は震えている。
"
「わかった。ややこしい事情があるんだ」
シュルトスが話し始める。
"
「俺たちは本当の兄と妹じゃない。一人のじいさんが両親のいない俺たちを育ててくれた。じいさんは元国家魔術師だった。彼は俺たちが妙な力を持っていると気づいたんだ。ウェーラの力は魔術だった。けどじいさんは俺の力には気づいたが正体まではわからなかった。俺は誰かに呪われているらしい。みんな俺の歳は十三くらいだと考える。けど、俺は本当に二十三歳なんだ。そして俺の筋力は異常らしい。じいさんは国家魔術師が俺の体を魔獣みたいに実験するのを恐れていた……」
少しずつエルミシアはこちらの状況を理解したようだ。
"
「あんた、おじいさんは元国家魔術師だったって言ったわよね。まさかそれって……」
"
「そうだ。じいさんは国の管理から逃げたんだ」
"
「そんな話を噂で聞いたことはある……けど、本当にそんな魔術師が存在したなんて……」
"
「もう、じいさんは死んだ。でもウェーラの『師匠』だった。ウェーラは『自由な』大地女魔術師だ」
ウェーラが眉をひそめた。
"
「兄様……やっぱりこの女を殺すべきよ」
"
「駄目だ! 俺に嫌われたいのか?」
"aw...
「うう……ごめんなさい、兄様」
すぐに、ウェーラは幼女みたいになった。
ウェーラがシュルトスよりずっと年上に見えるので奇妙な光景だった。
"
「いままで俺たちはこの小屋で暮らしてきた。俺たちは狩りで生活してきたんだ。ときどき俺は近くの村に行く。そこでいろいろ毛皮を必要なものに交換するんだ」
シュルトスがため息をついた。
話が苦手な少年なのである。
"ummm...
「うーん……いろんな人たちが世の中にはいるのね」
エルミーナの尼僧は納得したようにうなずいた。
"
「けど……あんたたち、将来はどんなふうに暮らすの?」
"
「将来?」
シュルトスが言った。
"
「そうよ。ウェーラが可哀相」
"
「可哀相?」
ウェーラが驚いたように言った。
"
「なぜ?」
"
「あんたはこの森と小屋しか知らないみたいじゃない。世界は広いのよ。まだあんたが知らないいろんな事がある」
"
「知りたくない。兄様がいる!」
シュルトスは妹の臆病さを知っていた。
彼女の心は幼子のようなものだ。
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