第4話 yuridresa 女魔術師
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「どうやって鹿の肉を料理するの?」
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「いろんな方法がある」
本当に寡黙な少年だと気づいた。
たぶん妹いがいの女に慣れていないのだ。
しばしシュルトスが歩き続ける。
そしてエルミシアは木々の間にある奇妙なものを目にした。
小さな木の小屋があった。
雪で埋まらないように屋根が傾いている。
窓は鎧戸に覆われている。
小屋は妙ではない。
問題は小屋を囲んで立てられた木の棒だ。
おぞましいものが五本の棒の上に載っている。
狼の頭らしい。
腐った頭もあった。
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「あれはなに? 魔術? まさか、魔術師がいるの?」
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「いや」
突如、シュルトスが緊張しだした。
いままでの少年とは別人のようだ。
"co...
「こ……これは……この土地の伝統みたいなもんだ。魔術じゃない」
エルミシアはかすかなを恐怖を覚えた。
この「イオマンテ魔術王国」は魔術師たちに治められている。
魔術師はすべて「国家魔術師」なのだ。
他国の魔術師は特別な「鑑札」を与えられる。
「国家魔術師」ではない魔術師は「非合法魔術師」として扱われる。
普通は「罪人」として処刑されるのだ。
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「あんたの妹は……」
小屋の扉が開けられた。
長身の、ひどく美しい女がいた。
闇のように黒い長い髪と鮮やかな青い瞳をしている。
一般的な古い衣服とズボンを着ていた。
魔術師のようなローブをまとってはいない。
その顔はひどく端正だった。
いままでみたこともないようなとてつもない美女である。
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「兄様? この女は誰?」
女がシュルトスに尋ねる。
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「ああ……彼女はエルミーナの尼僧だ。今夜は俺たちの小屋に泊まりたいらしい」
おかしい、と思った。
どうみても女は少年より年上だ。
だが女はシュルトスを「兄様」と呼んだ。
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「駄目」
冷たく女は言った。
なぜかエルミシアをにらみ続ける。
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「ごめんなさい。帰って」
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「待て!」
シュルトスが言った。
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「彼女はエルミーナの尼僧だ。神罰が怖くないのか? エルミーナの神罰は……」
やがて女がため息をつく。
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「仕方ない。わかりました」
まだ女はエルミシアをにらみ続けている。
歓迎されていない。
シュルトスの妹に嫌われている。
"
「ごめん……妹は人嫌いなんだ」
もうエルミシアは女の目の意味に気づいていた。
あれは嫉妬の目だ。
つまり、この妹はシュルトスを「男」としてみなしている。
ひどく不自然だった。
そして狼の頭の棒も奇妙だ。
やはりあれは魔術ではないのか?
おそらく、この女は魔術師……否、女魔術師なのだろう。
だが少女は恐怖を抑えた。
絶対にエルミーナ女神の「幸運」が私を守ってくれるに違いない。
エルミシアは小屋に入った。
二つ寝台がある。
小屋の中央には炉があった。
粗朶が炉で燃え続けている。
だが、小屋には他に珍しいものがたくさん存在した。
さまざまなものが天井からぶらさがっていた。
燻製肉らしきものが多いが魔術に用いるような道具がある。
不可思議な印が刻まれた小さな木の棒。
金属製の香炉。
そしてさまざまな書物が床にあった。
エルミシアは確信した。
あの女は女魔術師に違いない。
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