第3話 sad rxuk 雌鹿
エルミシアはなぜこの少年は自分の年齢について嘘をついているのだ、と思った。
不思議な少年は「シュルトス」と名乗った。(訳注 シュルトは「氷」を意味する)
顔はとても可愛らしい。
あるいは美しいといってもいいかもしれない。
だが少年の大剣はすごかった。
とても大きく、長く、そして重そうだ。
シュルトスは明らかにこのとてつもない剣を使いこなしていた。
普通の少年ではない。
たくさん毛皮を着ているので、少年の体型はわからない。
たぶん力強い筋肉を持っているのだろう。
可愛い男もたくましい男も好みだ。
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「女としたことある?」
シュルトスはエルミシアの質問に驚いたらしい。
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「して……しらない!」
エルミシアは微笑した。
さらにこの少年を好きになった。
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「あたしとしたい?」
少年の顔が強張った。
沈黙した少年が森のなかを歩き続ける。
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「あたしが嫌い?」
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「……俺はあんたを知らない」
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「私とすればすぐに私のことがわかるよ。とってもいいんだよ」
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「だ……だめだっ」
エルミシアは少し悲しくなった。
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「あんたって妙な男ね。たいていの男は私とするのを喜ぶのに」
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「俺は……よくわからない」
エルミシアは考え込んだ。
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「私は娼婦だったの。男を楽しませるいろんなやり方を知ってるよ」
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「ふーん……お前は娼婦だったのか。娼婦については知ってる。とても立派な仕事だ。じいさんがよく言っていた」
少女は悩んだ。
少年の言葉が皮肉かあるいは本心なのかわからなかったからだ。
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「娼婦はとてもつらい仕事だって聞いた。でも娼婦は男を楽しませるので立派だって」
"
「おじいさんの言葉?」
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「そうだよ」
嘘ではない、と思った。
普通は男は娼婦を見下すかいやらしいことを考えるものだ。
だが、シュルトスの言葉は本心のようだった。
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「あんたってすごく変わっている男の子よ」
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「そんなことはない……あ」
少年がなにかを思い出したように言った。
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「俺の妹にはあんたの元の仕事については言わないでくれ。妹は妹はあんたの元の仕事を嫌っているみたいなんだ」
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「わかった。たいてい、女は娼婦を嫌うものよ」
"
「よくわからないな」
突然、少年が叫んだ。
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「やった! ウェルシオンミリスに感謝を! 鹿が罠にかかってた!」
エルミシアは一頭の牝鹿が雪の大地に倒れているのを見た。
縄の輪が鹿の片足に絡まっていた。
"
「お前は本当にエルミーナの尼僧なんだな! お前が俺たちに幸運をもたらしてくれたんだ!」
少年が走り出す。
いつのまにか腰のベルトから短剣を引き抜く。
突如、鹿が動き出した。
しかし少年は冷静だ。
"
「ウェシルオンミリスに、ウォーザに、アシャルティアに、そしてこの鹿に感謝する」
少年は祈りをつぶやいて鹿を屠った。
すぐに鹿の動きが止まった。
鹿は苦しまなかったようだ。
少年は鹿を血抜きした。
そして雪を鹿の毛皮にこすりつける。
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「なんで……なんでそんなことするの?」
"
「体の汚れを雪で洗っているんだ」
イオマンテで最も多くの人々が住んでいるイマナールの都でエルミシアは育った。
だからこんな光景を見たのは初めてである。
次に少年は驚くほど素早く皮を剥いだ。
まるで魔術のようだ。
桃色の肉があらわになっていく。
残酷だと思った。
しかしなぜか不快さは感じない。
少年の鹿への敬意が感じられた。
さらに器用に鹿を肉へと解体し続ける。
やがて作業は終わったらしい。
少年が肉の体の部分を縄で巻いた。
それを担ぎ上げる。
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「エルミシア……お前に肉を運ぶのを手伝ってほしい」
少年が二本の鹿の脚を少女に手渡した。
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「わ……わかった!」
鹿の二本の足はエルミシアにはひどく重かった。
またシュルトスが黙ってあるき出す。
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「あんたは狩人なの?」
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「似たようなものだ」
あたりはすぐに暗くなり始めた。
南イオマンテの冬の昼は短い。
大丈夫だ、とエルミシアは思った。
私はエルミーナの尼僧なのだから。
「昔」に比べて今はなにもかもが素晴らしい。
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