第2話 elmisia エルミシア
"wow!
「まあ! あんたとても強い! まだ子供なのに!」
少女がはしゃいでいる。
"
「待て! 俺はガキじゃない」
"aw...
「えっと……じゃあ、少年?」
"
「違う。俺は立派な大人の男だ!」
"
「あんたが? 嘘! あんたの顔はとっても可愛い!!」
シュルトスは怒った。
"
「可愛いって言うな! 俺は男だからな! 俺は二十三歳だぞ!」
"
「二十三……?」
少女はシュルトスをじっと見つめた。
少しずつ顔を近づけてくる。
"fm...
「うーん……ありえない! こんな可愛い男の子が大人の男のはずがない!」
なぜかシュルトスは恥ずかしくなった。
実際、少女の顔はシュルトスにとってひどく愛らしかったのである。
"
「可愛いのはお前の顔だ!」
(訳注 これは明らかな非文である。ちなみに非文とは文法的におかしい、もしくは母語話者にとって容認できない文を意味する。おそらくシュルトスは相当に混乱していたのだろう。なお tom caf era mo:yefe vim sar であれば文法的には正しくなるがこれは「あなたの顔が俺より可愛らしい」となり、結局、自分の可愛らしさを認めているので、本気でいうならまず自分が可愛らしいと思える表現を否定しなければならない)
おかしなことを言ってしまった。
"
「知ってるわよ! あたしは可愛い女の子だって!」
"
「お前、ホスに憑かれているのか?」
少女が笑いだした。
"
「違うわ。私はエルミーナ女神に憑かれているの。私はエルミーナの尼僧よ!」
"
「エルミーナの尼僧……」
シュルトスは驚いた。
エルミーナの尼僧はひどく珍しく、そして奇妙な存在である。
エルミーナ女神は幸運と偶然を司る。
だが非常に気まぐれな女神なのだ。
エルミーナの尼僧になる方法は一つだけだ。
女神に選ばれなければならない
エルミーナがどのように自らの尼僧と僧侶を選ぶのか誰も知らない。
だが、エルミーナの尼僧に選ばれた者は素晴らしい幸運を得られる。
とはいえ、問題もある。
エルミーナの尼僧はいつその力を失うかわからないのだ。
一生、力を持つ者をいれば、ある日、力を失う者もいる。
そして人々は力を失ったものの人生は悲惨だと信じている。
今までと逆に多くの不幸に見舞われるともいう。
だからエルミーナの尼僧は常にいつ自分の幸運を失うか怯え続けているという話だ。
だがこの少女は違っている。
たぶん山賊たちの矢は「幸運にも」外れたに違いない。
シュルトスも「幸運にも」ここに来たのだ。
すべてエルミーナ女神の力に決っている。
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「ありがとう」
少女は言った。
シュルトスが困惑する。
面倒に巻き込まれていると思った。
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「あなたの剣はすごいわ! それにあなたの剣の腕前も!」
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「普通だよ……」
少し恥ずかしい。
褒められることに慣れていないのだ。
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「この剣の名前はなに?」
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「『吹雪斬り』だ」
シュルトスは答えた。
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「かっこいい名前ね! ところで……」
厭な予感がする。
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「いま、あたしとてもお腹がすいているの! それにまだ今夜の寝場所を見つけてないし……」
シュルトスは状況を理解した。
この少女はエルミーナの尼僧である。
もし尼僧をこの親切にもてなさなかったらエルミーナにどんな神罰をうけるかわからなかった。
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「わかった。森の奥に俺たちの小屋がある。今夜はそこに泊まれ」
"
「あんたはとても優しい男の子ね! 感激したわ!」
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「やめてくれ……」
シュルトスは妹いがいの女とほとんど話したことがなかった。
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「けど……あんた、『俺たちの小屋』って言ったわよね」
"
「ああ……妹と小屋で暮らしてるんだ」
"
「あなたの妹? きっとすごく可愛いんでしょうね。妹の歳はいくつ?」
"
「十八だ」
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「待って! じゃああんたのお姉さんじゃない!」
やかましい女の子だ、と思った。
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「違うんだ……」
"ow!
「あっ! ごめんなさい! 私の名前を紹介するのを忘れてた!」
楽しげに少女は言った。
"
「あたしはエルミシア! いい名前だと思わない?」
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