翌日。

 教室に入ると、楽しそうに話をしている沙耶ちゃんと衣緒ちゃんが目に入った。

 仲直りできたようで何よりだ。

 邪魔しないようにこっそりと自分の席に向かう。

 でも、私の席は沙耶ちゃんの席の後ろで、私たちは普段ここで話をしている。

 つまり、当然私は気づかれた。

「ありさっち、おはよー」

「お、おはよ」

 微妙に笑切れていない笑みを浮かべながら私は応じる。

 そのやりとりに気が付いた沙耶ちゃんがこちらを振り返る。

 どきん、心臓が跳ねた。

 私は沙耶ちゃんと仲直りをしていない。

「……お、おはよう」

「あ……おはよ」

 私と視線を合わせないようにして挨拶をしてくる沙耶ちゃん。

 それ以上会話が続くことはなく、静かな時間が流れる。

 いつもいつでも元気に騒いでいる衣緒ちゃんも、今日はさすがに黙ってこちらの様子を窺っている。

 ここでいつものように衣緒ちゃんが騒いでくれるとありがたい。

 その流れでなんとなくいつも通り、仲良く話せる気がする。

 そう感じたのは沙耶ちゃんも同じようで、2人で衣緒ちゃんに視線を送る。

 突然2人から見つめられて戸惑っていた衣緒ちゃんは、しばらくその視線の意味を考えると声を上げた。

「わかった! 私は今日部活があるから、帰りは2人で帰ってね! これ私からの命令!」

『え』

 予想外の言葉に私と沙耶ちゃんの声が重なった。

「え?」

 私たちの反応がまた予想外だったらしい衣緒ちゃんも困惑の声を上げた。

「……」

「と、とにかく、今日は2人で一緒に帰ってね!」

『は、はい……』

 微妙な空気の中、鳥がチュンチュンと鳴く声が響いた。

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