曇りと雨

 パラパラと雨が降っている放課後。

 教室の窓から外を見ると、いくつかの部活動が活動していた。

 この程度の雨なら休みにはしないのだろうか。

 大変だなあ。

 衣緒ちゃんに昼休みの出来事を話した。

 話を聞き終えた衣緒ちゃんが何やら黙ってしまったため、私は特にすることがなくなって外を眺めていた。

「ね、ありさっち」

「何?」

「さやっちは? もう帰ったのかな」

「……どうだろうね。私も沙耶ちゃんのこと怒らせちゃったから分からないの。でも今日はさすがに帰ったんじゃないかな」

「そっか。……ごめんねありさっち。今日は私も帰る」

「……分かった」

 衣緒ちゃんは真面目な顔で帰る準備を済ませると、もう一度私の方を見てこう言った。

「今からさやっちの家に行ってくるよ」

「え? 本当に?」

「うん。だってさやっちをどうにかできるは私しかいないから。ああそれとね、部活の事なんだけど」

 そうだった。

 昼休み、私と沙耶ちゃんが話している間に、衣緒ちゃんは顧問の先生と今後のことについて話に行っていたのだった。

「部活、大会まで残ることにした」

「……!」

「やめようと思ってたんだよ、本当は。でも先生にめっちゃ説得されてさ。選手になれなくてもとりあえず大会までは……ってことになった」

「そう、なんだ」

 私はほっとした。

 私だって衣緒ちゃんにやめてほしかったわけではないのだ。

 何も知らずに言った言葉のせいで衣緒ちゃんがやめることにならなくて本当に良かったと思う。

「さやっちにそれ話して、謝ってくる」

「そっか。うん、いってらっしゃい。頑張ってね」

「ありがとう!」

 衣緒ちゃんはそういって元気よく教室を飛び出した。

 正しくは足を怪我しているからそこまで勢いよくはなかったけれど、気持ち的には元気に飛び出していたのだと思う。

 衣緒ちゃんを笑顔で送り出してから、教室にいるのは私1人だけになった。

 大きな窓からぼんやりと外を眺めてみる。

 衣緒ちゃんが入っている陸上部の活動が見える。

 そこを衣緒ちゃんが通り過ぎて、お互いに手なんかふっちゃったりしている。

「はあ……」

 自然とため息が漏れた。

 多分衣緒ちゃんと沙耶ちゃんは仲直りすると思う。

 とってもいいことだ。

 でもなんか……。

 お互いの気持ちを話して、2人はきっと今以上に仲良くなる気がする。

 そうすると私の立場はどうなってしまうのだろうか。

 沙耶ちゃんは自分の気持ちを吐き出していたけれど、私は別に言っていない。

 親友って感じの2人に、必死にしがみついていた私は振り落とされてしまうのだろうか。

 ……考えれば考えるほど気分は沈んでいく。

 無理やり気分を変えるために、私は似合わない流行の、歌詞さえ知らない曲のメロディを口ずさみながら教室を出ていった。

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