第17爆弾 アーティバトル

 朝なのか夜なのかよく分からない朝だ。寝て起きても同じ景色、明るさだ。


 アーティはテントの外に出た。

「おはよう!」

 リンスは笑顔で「おはよう、アーティちゃん!」と答えた。

「おうアーティ。よく眠れたか?」クエストは作業をしながら聞いた。

「うん!眠れたよ。ボムパパは何してるの?」

「昨日作った地図を整理してたんだ」

「えらいねボムパパ」

 クエストは照れながら「そうでもないさ…」と呟くように言った。


「そうだ、アーティちゃん!お腹空いてない?」

「うん、空いてるかも」

「じゃあどうぞ」そう言ってリンスは食べ物を渡した。

「クッキーの上に昨日もらった木の実を乗せてみたの」

「わーい!」

 すると、アーティはあっという間に食べてしまった。

「はっ!いつの間にか無くなってる…」

「まあ、アーティちゃんったら」

 二人は笑い合った。


「アーティ、もうすぐ行こうか」

「もう行くの?」リンスが聞いた。

「ここから近い所だからすぐ帰ってくるよ」


 クエストとアーティは拠点から南西に50メートル行った所に来た。

「何かないかなぁ…」

 アーティがクエストと地図を作成していると、遠くから叫び声が聞こえた。

「あれは拠点の方だ!リンスに何かあったのかもしれない。戻るぞ、アーティ!」

「うん!」


 アーティとクエストは急いで拠点に戻った。すると、リンスが四頭の狼に囲まれていた。

「こいつらは石(せき)狼(ろう)だ。牙に石化の毒があって、噛まれると石になってしまうんだ」

「あなた…アーティちゃん…」リンスは震えていた。

「待ってろ。おれがなんとかする…」そう言い、袋からナイフを取り出した。

「ボムパパ待って!」

 その時アーティがクエストを止めた。

「ここはあたしに任せて。あたしも役に立てるよ!」

「いや…でも」

「あたし、強いんだよ!」アーティは自信満々だ。

「分かった、頼む…」


 すると、アーティは深呼吸して足を肩幅に開いた。それから腕を前に出して両手で輪っかを作った。そのまま手を胸に引き寄せた。

「爆撃拳、壱の型…爆撃!」

 アーティの体の周りに、気の膜のようなものが張られた。


 爆撃拳を使ってからは早かった。四頭の石狼に向かって走って行く。

 まず、一頭の石狼がアーティに襲いかかる。

 それをかわして石狼の腹に掌底を軽く当てた。軽く当てただけだが、石狼は絶命した。爆発するような衝撃を体の内側に与えたのだ。


 その後、次の二頭が向かって来た。ものすごい連携でアーティを翻弄する。アーティもよけることしかできない。その時、一頭がアーティの腕に噛みつこうとしてきた。

 しかし、アーティはあえてよけずに腕を差し出した。そして、遂に噛みついた。思った通りになった。石狼の歯はボロボロにかけてしまった。

「ダイヤモンドだから硬いよー!」


 噛みついた石狼の顔に拳を当てた。顔に衝撃が走り吹っ飛んだ。そこにもう一頭も迫って来ていた。今度は懐に潜り込み、持ち上げるようにして石狼を投げた。地面に落ちてすぐに石狼は動かなくなった。


 最後の一匹は様子をうかがっていた。お互いに距離を取る。

 先に動いたのはアーティだった。足早に石狼に近付く。石狼は身を低くして体当たりしようとする。アーティはそれをよけつつ回し蹴りを食らわせた。もろに食らったので反撃できずに息絶えた。


「ふぅーーっ……」アーティは息を吐いて手を合わせた。


「すごいなアーティ!本当に強いんだな」

 リンスはその場に座り込んでしまった。

「あー…怖かった…。本当にすごいわね、アーティちゃん。驚いちゃった!

「えへへ…」

 アーティは照れている。


 クエストはと言うと、動かなくなった石狼の近くにいた。

「それどうするの?」

「ああ。さばいて食料ににする」

「そっか、食べるんだね」

「人は生き物の命をもらって生きる糧にするんだ。おれがさばき方を教えるからアーティも手伝ってくれ」

「うん」

「私も手伝うわ」

 この日は石狼をさばいて終わるのだった。

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