第8爆弾 ボンバートレーニング

 アーティは人造人間の少女である。ボムと同じ14歳を想定して博士が作った。

 身体はダイヤモンドでできていて簡単には壊れない。


 温度を感じられるが痛覚はない。腕を外したりするためである。

 そしてハートストーンが動力のため血は出ない。


 飲食は出来るが排泄することはなく、お腹を開くとタンクがあり、その飲食物が入ったタンクを取り出すことができる。

 飲食物が入ったタンクは、博士が作った機械に入れて肥料に変えている。


 頭の中には知能を司る基板のようなものが入っていて、その基板に常識など基本の知識が記録されている。


 その中に戦う手段として、“爆撃拳”なる拳法が記録してある。

 博士が拳法を使っていたというが、詳細は不明である。


 ある日、昼間から動いている影があった。――人造人間の少女アーティである。

 指が出ている手袋をした拳を前に突き出したり、回し蹴りなどをしたりして運動している。


 否、運動というより修練と言った方が正しい。

 その修練を始めて2時間はとうに過ぎている。


 アーティは修練を終えたのか研究所に入って行った。


 博士の研究部屋に行くと博士がソファに横になっていた。


「ねぇ博士、ボムはいないの?」


 博士がゆっくりとソファに座った。


「ボムは材料を集めに行ってるんじゃ。少し離れた所に行ってるからしばらくは帰ってこないぞ」

「そうなんだ。ねぇ博士、爆撃拳教えてくれない?」

「別に構わんが、わしも歳じゃから口で教えることしかできんぞ。それでもよいかの?」

「うんいいよ!やったー!」


 アーティは嬉しそうに飛び跳ねた。


 それから博士とアーティは外の地面がある庭に移動した。

 2人は向き合うようにして立っている。


「よいか、アーティ。爆撃拳は壱の型から参の型まであるということは教えたな」

「うん、じゃなくてはい!」


 アーティは背筋を伸ばして返事をした。


「壱の型は爆撃、弐の型は爆風、参の型は爆砕の効果がある。まずアーティには壱の型を修得してもらう」

「爆撃からってこと?」

「そうじゃ。わしが言ったことをやってみてくれ」


 アーティは足を肩幅に開いて深呼吸をした。


「まず、両手の同じ指どうしをくっつけて輪っかを作るんじゃ。その時に腕は前に伸ばしたままにする」


 博士が言ったように、アーティは腕を伸ばしたまま手を輪っかにした。


「こう?」と言いながらアーティは言われたことをマネした。


「そのままゆっくり心臓の前に引き寄せるんじゃ」

「こうだね」


 アーティは輪っかにした手をゆっくり心臓の前あたりに引き寄せた。


 ――すると一瞬アーティが光ったように見えた。


「やはり爆撃拳が記録してあるだけのことはある」

「博士、次は?」


 アーティは博士を急かした。


「アーティ、そのまま右の拳を前に出してみるんじゃ」


「はいっ」と言いながらアーティが右の拳を前に突き出すと、衝撃波と共に地面の砂ぼこりが舞い上がった。


「うわっ、何これ?あたしがやったの?」


 アーティは自分がやったことに驚いている。


「今のが爆撃拳―壱の型、正拳突きって所じゃな」

「すごーい!博士これすごいよ!」


 アーティは目を輝かせている。


「ちなみに突きだけじゃなく蹴りもできるんじゃ。そこは応用次第じゃな」

「へぇー、もう一回やってみよう」


 そう言うとアーティはさっきと同じ構えをして、正拳突きを繰り出した。

 繰り出した正拳突きは、ただの正拳突きだった。


「あれ何で?さっきと同じやり方なのに」


 そこから何回か爆撃拳をやったが、やはりただの正拳突きになってしまった。


「おそらくじゃが…まぐれで出たとしか言いようがないじゃろう」

「そっか。まぐれだったんだ…」


 アーティは明らかに落ち込んでいる。


「じゃが気にするな。わしも最初はこんなもんじゃったよ」

「昔の博士はどんな感じだったの?」


 アーティが聞くと博士は急に黙り込んだ。


「昔の話はまた今度じゃ。それよりももっと集中するんじゃ。次は蹴りじゃ。まだ先は長いぞ」

「はーい、集中しまーす!」


 その後も博士の修行は続くのだった。

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