第6爆弾 ボンバーメモリー1

 時は7年前、ボムが7歳の時に遡る(さかのぼる)。ボムの父親は冒険家である。母親はその付き添いでいろいろな場所に行った。ボムが生まれてからも冒険を繰り返していた。


 ある日も洞窟に入って鉱石などを採取しようとしていた。

「もうちょっと奥まで行ってみよう。珍しい鉱石があるかもしれない」


 ボムの父親は右手にランプを持ちながら進む気満々だ。


「もういいんじゃない?十分鉱石採れたでしょ」

 ボムの母親は父親を止め、慎重気味だ。


「わたしもー。もうここから出たいよー」

 ボムは母親にしがみつきながら泣きそうになっていた。


「そうか。そこまで言うならもう出ようかなー」

「やったー出れる!いこっ、お父さんお母さん」


 3人が洞窟から出ようと踵を返した時、奥の方からぐおぉぉという声が響いた。


「何?お母さんこわいよー」

「お母さんとお父さんがいるから大丈夫よ」

「なんだ。モンスターかな」


 父親が右手のランプを洞窟の奥に向けた。すると2メートルぐらいのモンスターが姿を現した。それは二足歩行のドラゴンのような姿をしていた。


「あれはまさか。次元竜!?何年か前に封印されたはず。こんな所で会うなんて最悪だ」

「次元竜?何それ?」

「次元竜は冒険家の中でも恐れられている竜だよ。なんでも、その爪で切り裂かれると違う次元に飛ばされてしまうらしい」

「それって戻って来れるの?」

「戻って来れたという事例は聞いたことがないな」

「ねえ、早く逃げようよ!」


 ボム達3人は洞窟の入り口まで走って逃げた。次元竜はボム達に追いつきそうな速度で追いかけてきた。するとボムの父親が突然走るのをやめ、次元竜の方を向いた。


「母さんはボムを連れて逃げてくれ。おれが時間稼ぎをする。必ず追いつくから」

 そういうとボムの父親は、持っていた袋からナイフを何本か取り出した。そして手に持っていたランプを渡した。


「分かったわ。絶対戻って来てね」


 しばらくすると洞窟の奥から男の叫び声が聞こえた。ボムの父親の声だった。


「まさか、あなた…早く行かなくちゃ!」

「お母さん。お父さんやられちゃったの?」

「大丈夫よ。逃げれば何とかなるわ」


 ボムの母親は涙をこらえながらボムの手を引いた。

「お父さんと約束したの。もしおれに何かあったらなんとしても生き延びてくれって…だから逃げないと」


 ボムは静かにうなずいて母親に引っ張られながら走った。

 しかし、次元竜のドスンドスンという足音が徐々に近づいてきた。


「お母さんもう足が疲れたよー」

「もう少しで外に出れるから頑張って」


 ボムと母親は必死になりながら次元竜から逃げている。次元竜も相変わらず追いかけている。しかし、走っている途中でボムが転んでしまった。

「いたっ。痛いよー」


「ボム、来て」

 ボムの母親はボムを前にしてまた走り出した。しかし、次元竜がもうすぐそばまで迫っていた。


 そして、ボムの母親がボムを前に放り出した瞬間、次元竜の爪がボムの母親の背中を切り裂いた。

「ボム…逃げて!」

 ボムの母親はそう言い残して赤い光と共に消えていった。そこにはランプだけが残った。

「お母さーーん!」

 ボムは泣き叫んでその場に座り込んだ。

 

 その場に残ったボムに次元竜が近づこうとした時、次元竜が光り輝いたように見えた。

 そして、誰かがボムの手を引っ張っていった。


「早く逃げるんじゃ。奴に投げた光弾は一時的な目くらましじゃ」

 ボムを引っ張っていたのは白衣を着たおじいさんのような男だった。


「ひっく、ひっく…あなたは、ひっく…だれ?」

「わしはどこぞの博士じゃ。君の両親は残念じゃったのう。じゃがおそらくは死んではいない。違う次元で生きとるかもしれん。まあ推測じゃが」

「ひっく、ほんとうに?」

「ああ。じゃから泣くな。今は逃げることに集中するんじゃ」

「うん」


 少しずつ外の光が見えてきた。そして遂に洞窟の外に出た。

 洞窟の外には博士の物らしきバギーが止めてあった。


「わしの研究所が南西の方にあるんじゃが一緒に来るか?まあ君一人でここに置いとくわけにはいかないがな」

「わたし行くよ!もしお父さんとお母さんが生きてるなら、いつか戻し方を見つけたいから」

「そうか。じゃあ行こう、次元竜が来る前に」


 ボムと博士はバギーに乗り込み、博士の研究所へ向かって出発した。

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