第5爆弾 ボンバーワーク2(後半)

 ボムが1対4の戦闘をしている一方、アーティはタイマン勝負の真っ最中だった。アーティは両手の指を合わせ円を作った。そして意識を集中させ、格闘リザードに左手の平と右手の拳を向け、いかにも拳法らしい構えをした。格闘リザードは一瞬ひるんだが、突きを繰り出した。


「やあっ」


 アーティは格闘リザードの突きを左手で受け止めた。すぐさま右手を突き出したが、格闘リザードは易々とかわして見せた。そして突き、掌底、蹴りのコンボを休まず繰り出し、アーティはかわしたり防ぐことしかできない。


「えいっ」


 アーティの右の拳と格闘リザードの左の拳がぶつかり合った。すると、アーティの右の肘先がなぜか取れた。


「う、腕がー…って痛み無いんだった」


 アーティが取れた腕を拾ったと同時に、格闘リザードが襲いかかってきた。


「えへへ…いやーーっ、助けてー」


 アーティは挫折したのか、肘先を持ち、叫びながらボムの所まで一目散に逃げていった。


「ボム助けてー」

「逃げるんだったら足払いでもして転ばせてよ!」


 ボムがそう言うとアーティは逃げるのをやめ、追いかけてきた格闘リザードに足払いをかけた。足払いは成功し、格闘リザードはすぐに立ち上がろうとした。


「アーティ伏せて!」


 すかさずボムは、アーティが転ばせた格闘リザードに投てき爆弾を投げた。

 格闘リザードは叫ぶ暇もなく爆発し、皮膚へんと尻尾だけを残し砕け散った。

 他の4匹の格闘リザードは驚いた様子で動きが止まった。ボムはそれを見逃さず、マヒ爆弾を4つ投げた。


「うりゃあ…」


 2匹の格闘リザードはすんでのところでかわしたが、もう2匹は顔面に当たった。

 ぎゃぎゃあと鳴き、身体をけいれんさせた。2匹は近くにいたため、ボムは1つの投てき爆弾を投げ爆発させた。2匹とも砕け散った。


「ボムすごーい!」


 アーティはのんきに感心している。そのアーティに向かってボムは、


「感心してる場合じゃないでしょ!」

 と少し怒り気味だ。


 続いてボムは残りの2匹がいる足元に向かって、ピンを外した投てき爆弾を落とすように投げた。


「よしっ!」


 ボムの狙い通り地面に穴が開いた。2匹の格闘リザードは穴にはまり、動けなくなった。


「ボム決めちゃえー!」

「はいはい。やれば良いんでしょ」


 ボムは投てき爆弾のピンを外し穴の中に投げ入れた。格闘リザード達は爆風と共に砕け散った。


「ボムってけっこう躊躇(ちゅうちょ)ないよね」

「いや、躊躇したらこっちがやられるからね」

「たしかにそうかも」


 ボムとアーティは博士に言われた通り尻尾を回収し始めた。


「これけっこう重くない?」


 アーティは尻尾を持ちながら呟いた。


「そうだね。じゃあアーティは肘先取れてるから1個持って。わたしは4つリュックにぶら下げて運ぶから」

「ありがとうボム。なんで肘先取れるんだろ?博士に聞かなきゃ」


 ボムとアーティは重そうにしながら博士の研究所まで帰って行った。



 研究所に戻ったボムとアーティは博士と話していた。


「博士―!右の肘先取れたんだけどなんでー?」

「そう簡単に取れることは無いんじゃが、予想以上に力がかかったのかもしれん。格闘リザードの力が強かったんじゃな」

「じゃあ、また取れることがあるかもしれないってこと?」

「取れたらまた付ければいい。付けてあげるからわしと一緒に来なさい。格闘リザードの尻尾はそこに置いといてくれ」

「はーい。また後でねボム」

「うん」



 アーティが右の肘先を付けてもらった後、2人はボムの部屋にいた。


「ねえアーティ、ちょっと出かけない?」

「えっ、どこに?」

「近くにある町のバー、つまり飲み物とかを飲む所」

「へぇ、行ってみたい!ていうか行く!」

「決まりね」


 ボムとアーティは博士にバーに行くことを告げ、向かうことにした。



 そして時は現在、研究所近くの町のバーに戻る。


「アーティはもっと修行した方が良いよ。まあ最初だからしょうがないと思うけど」

「うん分かってる。自分でも足りないとは感じてる。博士詳しそうだから博士に教えてもらおう」

「そうね。それが良いかも」


 そういうとボムはジュースを一気に飲み干した。そして立ち上がり、伸びをした。


「もう帰ろうか。そろそろ暗くなるだろうし」


 ボムは入り口に向かって歩き出した。


「待ってまだジュースが…」


 アーティはジュースを慌てて飲み干しボムの後を追いかけた。


「マスターごちそうさま。ジュース美味しかった。また来るかも」


 そしてボムとアーティの2人は研究所に帰って行った。

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