仕事終わりに

「レーク! あっちのテーブルにもってけぇぇ!」

「………(コクッ)」


店主から料理を受け取り言われたテーブルに持って行く。そしてまた戻ると次の料理が出来ていてそれもまた言われたテーブルに持って行く。


ここ『街の料理亭』では何時もこんな感じ。店主のミドルさんと奥さんのルムさんに娘のリッカちゃん、あともろもろの従業員によって成り立っている店だ。それでも止まる事がないぐらいお客さんが出入りしてるから幾ら従業員が居ても全然回んないんだ。

そして、一応俺もここの従業員。こんな強面ヅラをしてる俺なんかを雇ってくれた店主には何時も感謝してる。そしてここは俺とレーシアが初めて会った場所でもある。まぁ、それは追い追い話すとして、さっさと料理を運んでしまおう。


「よっ! レーク!」

「………」


俺はそっとテーブルの上に料理を置いて行こうとしたが、声を掛けられた奴に腕掴まれ、足を止める。


「………なんだ」

「相変わらず無愛想だなぁ~」


悪かったな、無愛想で………


この軍服を着ている金髪男はミリアム=ルーム。残念な事に切ろうとしても繋いでくるうざったい腐れ縁の戦友だ。俺がここで働き始めてから一度も来なかった事はないぐらい本当にうざったい奴なんだ。


ちょっとイラッとしてきたから、目の前にある包み焼きパイを食べよう。


「ん?お、おい! それ俺が頼んだ奴だぞ!?」

「しらん」

「えぇ」


うん、美味しいじゃが芋やチーズ、ベーコンをふんだんに使った街の料理亭特製包み焼きパイは旨い。それがただで食えるってのも悪くないな。


食うのを止めてくるミリアムを放って俺はパイを食べ進め。


「あぁ。俺のパイ………」

「じゃあな」

「おい! レーク! 最近レーシアちゃんとはどうだ?」


一瞬怒ってくると思ったがまさか怒らずレーシアとの事を聞いてくるとは…


「まぁ、ボチボチ────」

「おーい! レーク早く戻ってこい!」


店主に呼ばれてしまい、ミリアムには銀貨一枚渡してささっと店主のもとに戻って行った。


「………………変わったな、あいつ」


***


「あ」


仕事が終わって早く家に帰宅しようとしたら、この前レーシアが食べてみたいな事を言っていたお菓子屋が目に付いた。


(人が居ない、もしかして休みか?………いや、電気はついてるから居るな。なら、買って行こう)


俺は店に入って二つ苺のケーキを買ってから家へと帰宅した。


そして、ケーキを買って帰ったらレーシアが満面の嬉しそうな笑みで「ありがとう」と言ってくれて俺がその笑顔で死にそうになった事は言うまでもない。

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