第10話 充実した日々とキロ君




それから、色々吹っ切れた私は作業員として仕事に精を出すことにした。






うおおお、次だ、次の仕事を



冷静になって周りを見渡すと、ぽつぽつ見知った人物がいる。



「君は係長君じゃないかね」



「あなたは・・・誰です?」



「社長?」



「ほら・・・思い出さないかね」


「・・・」


本当に思い出せないようだ。

もしくは以前の私の様に余裕がないのかもしれない。

いきなり、こんな場所に居るのが社長だなんて思うまい。



なんだか少し可笑しくなった。






$$$







私はキロ君という若者と一緒に働いている。


力持ちだし、きびきび動く

中々の好青年だった。



当初、気が滅入っていた私を励ましてくれたし、社長だなんて話した時も笑わないでくれたっけ

むしろ気まずそうな顔をしていたが、



「キロ、明日は初給料だね、何か後輩におごってあげればどうだい」



「後輩って、数日しか違わないでしょうが」



「それでは、ご相伴にあずからせていただきましょうかな」



「ええ・・・」



「はは、冗談ですよ」




休憩室では笑いが巻き起こった。

なんとなく思い出す。若い頃、この会社をスタートしたばかりの頃も

こんな感じだった。





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