第6話 社長から見知らぬおじさんへ
警備員に拘束されて、
オフィスから蹴り出された。
走る、走る
いや、年のせいで走る事すらままならないが
それが悪い夢であると証明するために
邸宅へ戻る。
「あのどちら様ですか」
誰も、誰も、この都市の誰もが私の事を覚えていない。
それどころか、私の痕跡の一切合切がすべて消失してしまっていた。
「そんな馬鹿な事があってたまるか!!」
私は激昂した。
私こそが、ホエールキングの社長だ。
「お前たちは私に雇われた子分だ、それを主人の顔を忘れるなど、恩知らずも甚だしい!!」
咽が張り裂けそうなほどに
力いっぱい叫んだ。
その後
警備員にボコボコに殴られ、たたき出された。
$$$
2,3日
途方に暮れ、港を彷徨う。
港の荒くれたちの酒を飲む。
笑い声、が頭に響く、光り輝くそれを避けるように暗い道を歩く。
所々に疲れた貧民たちとすれ違う。
お腹が空く。
こんなに腹が減ったのはいつ以来だろうか。
その場にうずくまる。
張り紙が剥がれて落ちてくる。
『ホエールキング求人募集、未経験者歓迎』
この期に及んで最後の頼みの綱がこれとは、なんだか泣けてくる。
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