NOVE
寮に入ってから3日経ち、今日は入学式当日よ。 ジョージは寮でお留守番兼まだ片付いていない荷物の整理係ね。
そうそうジョージと言えば! ワタシの専属執事になって2年、とうとう聞けたのよ~~~!ジョージの声! 所謂寝言ってやつだけどね。 一昨日の夜、慣れない場所で寝付けなくって、カモミールティーを飲みにキッチンに行く途中、使用人部屋の前を通ったときに「むこうさあべ!」って聞こえて来たの。 ‥‥意外にも低めのバリトンボイスだったわ‥‥
寝言で言ってる意味は分からなかったけど、ウイリアムの言う通り喋れないわけじゃないのが分かってよかったわぁ。
学園は寮の隣の敷地にある‥‥ とは言っても徒歩で20分くらいかしらね。 通学の為に沢山の生徒がこの道を歩く中「エド!」と呼ばれて振り向くとリズが嬉しそうに近づいてきた。
「おはよう、リズ。 もう部屋は片付いたの?」
「ごきげんよう、エド。 ええ、大体は。 後はテレサとマギーがやってくれているわ。」
テレサとマギーはリズの専属侍女で、あのアシュレイド家では、公爵の顔色を窺ってリズには無関心を貫く使用人が多い中、この2人だけはリズを慕ってくれて、陰ながら助けてくれるいい子達なのよ。 彼女たちが居てくれるなら生活面では安心ね。 多分実家にいるよりはあの
‥‥‥ただ、3日前に偶然見かけたジェラルドのイベント。 当事者がまったくワタシの与り知らぬ人の事なら楽しく(?)傍観できるんだけど、残念な事にジェラルドはリズの婚約者なのよね。(時々忘れそうになるけど) ゲームの悪役令嬢エリザベスとはかなり性格が変わって(変えて?)しまったから、最悪婚約破棄はされてもそれ以上の事はない‥‥と信じたい。 これ以上リズが辛い思いをするのは嫌だもの。 とにかくしばらくは成り行きを見守りましょ。そうしましょ。
「今日は講堂で入学式の後、クラスの発表だったかしら? 新入生代表はエドがやるんですの?」
「今年はジェラルド殿下が居るからね、僕の出番はないよ。」
例年ならプレイスメントテスト1位が新入生代表挨拶をするんだけど、王族がいるときは王族になるのよ。 まあワタシとしてはその方がいいわ。 別に目立ちたくもないしね。 その代わりあいさつの台本はワタシが考えてあげたのよ。
リズと他愛もない話をしながら人波に逆らわず歩いて講堂に入ると、聞きなれた若干うざい声が聞こえて来た。
「うーーっす。 エドにエリザベス嬢」
「ごきげんよう、アイオス様」
「アイオス、
「へへ‥‥ 実は夕べ。 いやさあ、忘れてたわけじゃないんだよ、忘れてたわけじゃ!」
‥‥‥はぁ~、忘れてたのね。 ていうか侍従はどうしたのよ!主人がしっかりしてないんだから部下がしっかりしないとだめじゃない! と、ワタシがアイオスに呆れているとジェラルドの挨拶が始まった。
「ほぅ‥‥ 本当に素敵ですわ‥‥ジェラルド様‥‥」 「ご覧になって、あの青い瞳‥‥ 吸い込まれそうですわ…」 「なんて凛々しいお姿なのかしら‥‥」 「でも、わたくしはやっぱりエドナーシュ様一筋ですわ」
メインヒーローであるジェラルドは見た目だけは金髪碧眼の正統派イケメン王子様ね。 壇上に立っただけで周りの令嬢達から黄色い声が上がったわ。 まあ、王子だけあって外面はいいのよねー。 あ、どなたか知らないけど最後の人、ワタシを持ち上げてくれてアリガトウ。
「暖かな春の訪れとともに、今日この日を貴君らと共に迎えられた事を心から嬉しく思う―――――――‥‥ 」
ジェラルドが代表挨拶をしている中、ふと周りを見渡していると先日ジェラルドイベントを起こしていたヒロインちゃんの姿が見えた。 確か名前はアンジェリカだったわね。 あら?気のせいかしら‥‥ 彼女ジェラルドを見て睨んでいるような‥‥。 え、でもこの間ルートに入ったのよね? どう言う事なのかしら? と考えていると、ふいに彼女がこっちに振り返り、バッチリと目があった。 すると見る見るうちに彼女の目が見開いたわ。 見られてる.... 見られてる..... めっちゃガン見されてるわ.....。
あまりの居たたまれなさにワタシから目を逸らしたわよ。 一体なんなのよ、もう。
そんな高度な(?)心理戦を繰り広げている間にジェラルドの代表挨拶は終わったらしい。 盛大な拍手の中ジェラルドが壇上を降りると、今度は在校生代表挨拶が始まる。 挨拶は生徒会長のリオンね。
リオン・フォン・サルーシュ。肩までのさらりとした艶やかな黒髪と切れ長のブルーの瞳、頭の良さを体現するような銀縁眼鏡にすらりとした体躯の、 隣国レブランドとの国境を守護する辺境伯サルーシュ家の次男よ。 これで隠れキャラ以外の攻略対象が出揃ったわね。
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