エピローグ 終わりのない転生にピリオドを
人生を呪ったことはあるだろうか?
オレはある。
父に毒を盛られて殺された後、オレが目を覚ましたのは異世界の草原だった。一体どこからが夢で、どこまでが現実なのか。
わからない。わからない……。わからない…………。
繰り返される。ドラゴンを発見することろから始まり、ドラゴンと対峙し、城下町へ行ってもこの世界の人たちとは話せず、山でオオカミさんと初対面を果たすが、ケーマにオオカミさんを目の前で殺され、最後にはオレも殺される。前回と違うのは英語を話す女性をオオカミさんと一緒に助けたこと。しかし、それがケーマの忌諱に触れ、全滅させられることになったのだけれど。
とんでもないデジャブを経験したと思った。ところが、本当にとんでもなかったのはここからだった。
異世界で死んだオレはまた、オレのベッドの上で目を覚ましたのである。
予知なんかではない。これは――
――ループだ。
オレは無限ループに陥っていた。オレが生まれた世界と死んでから行く異世界で何度も死に続けることになったのである。どう足掻いても死ぬことは避けられない。オレが生まれた世界では交通事故に巻き込まれたり、毒を盛られたりして既に死んでいるが、その後も食べ物を喉に詰まらせたり、家に火を放たれて逃げ遅れたり、気づかないうちに進行していた病気が猛威を振るったり、強盗に押し入られて警察に通報しようとしたら首を絞められたり、色々なことが起こった。世界が、異世界から帰ってきたその日のうちに無理やりにでもオレを殺しに来るのだ。
異世界では主にケーマに追われていた。大勢の兵を引き連れて強襲されたり、騙されて意のままに操られている村人たちに捕らわれたり、罠に嵌められたり、ケーマがつくった魔法で呪いにかけられたり。オオカミさんやケーマとは会わないように行動したこともあったが、草原で道がある場所とは反対方面へ行ったとしても、草原に隠れていたとしても絶対に巡り会わされる。どうしてもオオカミさんを見捨てることはできなくて救おうとするのだけれど、どんな方法を用いてもオオカミさんはオレの前で死んでしまうのだ。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。何回も繰り返しているうちにオレはあることに気づいた。それは自殺をして異世界に行ってしまったということ。
異世界転生ものの小説やマンガなどの主人公は自ら命を絶って異世界にいっていない。
人生から逃げることは許されない、ということをオレは身を持って体験することになったのである。そう、どんなにつらくても人生を諦めることはしてはいけないのだ。死んだらラクになれるなんてことは決してない。
あれから何度死ぬことを繰り返したことだろう。
もう数えていない。
どうやっても回避することはできなかった。
大切な人を何度も失うことを経験し、心が崩壊する。
策を弄しても死ぬ。
何もしなくても死ぬ。
それでもオレは動かされる。
目の前で大切な人が危険な目に遭っているのだから。
ああ、誰か――
――誰か、助けて――
――完――
異世界転生、そんなに甘くない @to-wa
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