1-9

 翌日。

 快晴一歩、いや、二、三歩手前のくすんだ青空の下、俺は散歩をしていた。曇天までもいかない、曖昧な天気だった。 

 楠木からの連絡待ち状態だったが、部屋に閉じこもっている道理もない。

 俺にもできることをと考えた結果、俺に縁のある場所を散策してみることにしたわけだ。

 弐姫との記憶がないとはいえ、どこかに接点があったのなら、必然的に俺の行動範囲のことになる。それほどアクティブな人生じゃない俺のテリトリーなどたかがしれているし、元々、現住所のS市は地元に近い。

 実家は5つほど離れた駅の距離で、一人暮らしをしているとはいえ、それほど隔たりはない。放任主義の親ではあるし、互いに無干渉主義な側面があるので、滅多に交流はないが仲が悪いというわけでもない。

 高校も大学も、実家から通える距離だったので、特に他県への引っ越し等の必要はなかった。

 ただ、就職にあたって、さすがにそろそろ実家から離れて社会人として生きてみるかという漠然とした理由で、今のアパートに引っ越しただけだった。もちろん、会社も実家から通える距離ではあったが、より近い場所へと移動したというわけだ。

 まぁ、その距離も実質駅5つ分では微妙とも言えなくはないが、タイミングと条件的に今のアパートが丁度良かったのだから仕方ない。

 何より、住居探しというのは面倒でしょうがなかった。

 ものを買う前にあれこれ悩んでいる時が楽しいという感覚は分からなくもないが、引っ越し先選びに関しては当てはまらない。とにかく早く決めて落ち着きたいのに、条件に合致する物件は驚くほど少ない。

 それほど高望みをしていない俺でさえそんな調子なのだから、やたら理想を掲げて探している輩は相当なものだろう。これほど住宅というものがそこかしこにあるのに、合致する物件が見当たらないというのもおかしな話だ。おそらく、業界内の一定の基準やらで横並びに様々な条件が制定されているせいで、汎用性が重視されすぎ、そこから漏れたものを探す人間には厳しいのだろう。

 だからといって俺が特別な住居を探していたというわけでもないのだが……何か話がずれている気がする。

 ともかく、俺にとってS市はもう住み慣れた場所であり、弐姫と知り合ったのならその生活圏内であるはずだという認識のもと、こうして出歩いているということだ。

 その肝心の弐姫はというと、

 「お散歩日和にはちょっと惜しい感じだけど、晴れは晴れでよかったよねー」

 などと、相変わらずのほほんと俺の斜め上をふよふよと浮いていた。

 今日はいつものワンピースではなく、なぜかゴスロリ風の浴衣衣装だ。和風メイド的なデザインで、アニメで出てきそうな出で立ちだった。

 曰く、「せっかく着替えスキルを覚えたんだから、使わなくちゃね」とのことだが、肝心なときに疲れて消えていなくなられるので、余計な力は使わないで欲しいのが本音だ。

 だいたい、自身では確認できないのに着替える必要があるのだろうか。俺以外に見られる者もいないというのに。それに近い言葉を投げると、不服そうに「それでも、乙女にはお洒落が必要なんですぅー」と多少へそを曲げたので、それ以上はつっこまないことにした。

 「さて、第一目標はここだ」

 俺はその大学に足を踏み入れながら弐姫を見上げた。

 「さっき軽く話したが、ここが俺の通ってた大学だ。おまえは高三かどうか分からねぇが、もしかしたらオープンキャンパスとかで来てたりするかもしれない。何か感じるものはあるか?」

 「うむむむむ」

 弐姫はきょろきょろと辺りを見回している。

 大学というところはかなり開かれている場所で、無関係な人間が案外平気で講義まで受けられたりもする。当然、そうもいかない場所や教室もあるが、基本的にキャンパス内には平然と入っていけるものだ。卒業してからまったく足を運んではいなかったが、俺と弐姫の関係性を考えたとき、学生という項目で交わるのは、大学くらいかと推測して立ち寄ってみた。

 もちろん、俺が在学時と弐姫の現段階での女子高生という立場とで、年齢的に辻褄は合わない。ただ、この大学における俺の痕跡みたいな何かと接点があったのではないかとの推測だ。

 暴論も暴論だが、そもそも何の手がかりもない上に、常識も通じない捜し物だ。多少破天荒でも可能性としては捨てきれない。正攻法なんて誰も知らず、取捨選択自体が賭けのようなもので、何も否定はできないのだから、何事も試してみるしかないだろう。

 とはいえ、この大学で学業優秀であったとか、何か賞を取ったとか、その手の何かをこの俺が残したはずもなく、期待はしていなかった。

 サークルも推理小説評論同好会なるよく分からないものに、幽霊部員のように名前を並べていただけである。そもそも、どうして所属することになったのか今でも不可解な経緯で入ったくらいなので、当然活動として何か残っているわけじゃなかった。いや、確か同人誌的な何かは出した気がするが、よくは覚えていない。

 そのサークルで思い出すのは、同じようになぜか所属していた江崎と知り合ったことが9割ほどを占める。

 いかにも読書好きなサークルメンバーがスクラムを組んでいる中で、場違いに社交的なイケメンがいれば、当然その存在は浮く。あのとき、たまたま居合わせたのは運命と言えなくもない。江﨑も俺も、普段はほとんど顔を出すことがなかったが、その時だけは謎の集会なるものに出席していたのだ。

 その出会いは正直、俺に対してプラスだったとしか言えない。人間関係が面倒な俺にとって、江崎の顔の広さと社交性の良さは大いに助けになった。それは今も昔も変わらない。

 そもそも、江崎もどうしてあんなサークルに所属していたのかと後に聞いたところ、将来有望な小説家志望の物書きがいるという噂を聞きつけて、知り合うために入ったらしい。実際、その物書きは現在、ベストセラーを飛ばす一流作家として名を馳せているらしい。同輩のよしみでいつかその本を読もうと思って早何年か過ぎていた。読書は好きなので読むのは面倒ではないのだが、その前段階の手に入れるというところが面倒で、いまだ実行されていない。

 それはさておき、江崎の人脈の幅広さはそうした地道な活動の賜物だというわけだ。その一人に自分が含まれているのが今でもよく分からない。一度理由を聞いたが、はぐらかされた。

 「おまえは自分で思う以上に、変わったやつだぜ?いや、悪い意味じゃなくてな。オレは人間観察が趣味なわけだが、おまえの興味指数はかなりハイレベルなんだ。カテゴリ的には……いや、まぁ、こういうのは言わないのが花か。あんま気にすんなよ、理由が何であれデメリットは何もないだろ?」

 興味指数なんて単語は初めて聞くものだったが、江﨑なりの関心度なのだろう。言わぬが花というのも、なんとなく納得できたのでそれ以上は追求しなかった。理由なんてものは、結局自分のためで、他人の理由を聞かされたところで、最終的には自らそれをこねくりまわして自己解釈で落としどころを見つけるだけだ。ならば、自分勝手に納得できるものがあれば、他人のそれは必要ない。

 自己満足で自己完結できることに、他人を絡ませるのはエゴでしかないだろう。

 そんなわけで、俺が大学のことで思い出すのは、江﨑と知り合ったことくらいだ。他にも数人、第二外国語で定期的に一緒になるクラスメイト的な友人がいたが、今ではほとんど連絡も取っていない。いや、正確にはたまにメールが来るが、俺のレスポンスが悪いので頻度がどんどん下がっているだけかもしれない。

 あるいは、今時はスマフォのアプリでつながっているのが常識のため、未だガラケーでそこに加わっていない俺が忘れられてゆくのは当然とも言える。けれど、特に問題はない。必要があれば連絡できるし、その時に話を聞いてくれるくらいの関係性は保っていると信じる。

 友人については、浅く広くではない分、いざというときに頼りにできるくらいの深度で絆的なものは育んである。あるはずだと、そう思いたい。少なくとも、面倒な俺でも、気のおけない友達にはそれなりに優しく接してきたつもりだ。簡単に手のひら返しを食らうようなことないはずだった。

 「ねぇねぇ、あきるくん、わたし、あそこ行ってみたい」

 つらつらと大学時代を振り返っていると、弐姫が何かを指さしていた。

 「あそこって……」

 視線を向けると、そこは一階がオープンカフェにもなっている食堂の建物だった。この大学最大のウリでもあり、その棟全体が食堂関係になっている通称学食ビルだ。特に変わった学部や科目があるわけでもないこの大学が、話題作りのために取った苦肉の策の結晶だ。

 各階にわりと有名所のチェーン店と、大学オンリーのメニューを追加することで、一般客にも開放して大学の宣伝としたわけだ。本業から離れたところで名を上げてもいかがなものかと思わなくもないが、結果、それなりの費用対効果はあったようで、日本で有数のお食事処がある大学としてそれなりに有名になったわけだ。他の地味な学部棟と違って、各階に宣伝的な横断幕があったりするので、余計に目立っている。

 「学食ビルのこと、知っているのか?」

 「ほえ?学食ビル?って、あれ全体がレストラン的なものなの?」

 特に記憶があったわけじゃないらしい。幾つか分かれている建物の中で、一番目につくから指さしたのだろうか。

 「ああ、全階に飯屋が入ってる。知ってたわけじゃないなら、なんで行きたがったんだ?」

 「え?だって、ほとんどの人、あそこ入っていくんだもの。何か面白いものあるのかなーって」

 「そりゃ、もう昼時だからな……」

 アパートからここまで、徒歩と電車でそれなりに時間をかけて来ている。気づけばそんな時間だった。

 「あきるくんもお腹減ったでしょ?行ってみよー」

 わざわざ混雑時に行きたくはないのだが、何のイベントもない平日であれば、場所にこだわらなければ十分スペースはある。お一人様席で待たされることもまずないことは知っていた。

 何より、弐姫は既に一直線に向かって飛んでいた。猫まっしぐら状態だ。仮転生体となって食欲はないはずだが、食べ物にはまだ何かしら惹かれるものがあるらしい。食いしん坊キャラだったのだろうか。思えば、こちらが何か食べているときは物欲しそうな目で見ていた気もしないでもない。

 俺は弐姫を追って久々の学食ビルへと足を向けた。



 席取り分析論シーティングアナリシスというものがある。

 いや、あるというか極々狭い範囲で一時期流行っていたというか、取り沙汰されていた。つまりは身内ネタだ。

 要するに、人は無意識にどこに座るかでなんとなくの性格が出るという、一種の心理テストのようなものだ。ネーミングも今考えるといかがなものか。Seatには自動詞的な座るという意味はなく、他動詞の座らせるしかなかったように思うが、まぁ、深く考えてもしょうがない。

 当時の仲間内では、例えば食堂などで一人で席に座る場合、圧倒的に端に近い場所が多くなる結果が出ていた。小心者は決して中央に寄らない。これは統一された見解だったし、そういう人間同士が集まっていたので当然の帰結でもあった。

 更に細かく言えば、端派はしはでも完全に隅を取りに行く唯隅派ゆいすみは一空派いっくうは二空派にくうはに分れる。この場合の隅とは、少なくとも左右のどちらかに壁が必須の隅であり、電車内の中央シートのような隅は当てはまらない。一空派はいわゆる隅から一つ席を空けることであり、二空であれば二つ空けるという意味だ。

 一空派はわざと一つ席を空けることで、より広く自由な空間を手にれることができる。そこが空席だからと言って、わざわざ壁と他人の間の席に割って入るような人間は希有だ。日本人らしく遠慮という概念が立ちふさがる。少なくとも小心者にはかなりのハードルの高さだ。ゆえに、一つ席を空けることで、座らずとも実質二つ席分の空間を手に入れる確率が高いと狙っているのが、一空派なわけだ。

 一方で、それでもそこを取るのが唯隅派でもあるので、一空派とは相性が悪いとも言える。彼らは片方が壁であることが安息の条件であり、その反対側に邪魔者である他人がいても、そこを優先する。プライオリティーが高いのは片側が壁である隅という条件なわけだ。

 その点、二空派は隅から二つ空けることで、唯隅派が来ても一つ席を隔てられ、パーソナルスペースを侵害されないというメリットがある。そう、要するに小心者は他人をできるだけ近くに寄せたくないという傾向があるために、隅を選ぶのである。

 翻って、隅を選びたくなるのは総じて小心者や、他人との関わりを極力避けたがる人間という性格分析になる。

 これは結局の所、それだけの話だが、それほど的外れというわけでもない。実際、江崎にこの手の話題を振ったときは一笑に付された。

 「そんなこと、考えたこともねぇわ」

 つまり、そういうことだ。小心者でもなく、他人とのコミュニケーションに苦労したりすることのない人間は、そもそもそういった事を意識したりしない。空いてる席に座れば良いだけで、隅だろうが中央だろうがおかまいなしということだ。

 ゆえに、この手の話題で共感を得ることができるのは、小心者や一人を好む人間だけだった。

 前置きが長くなったが、そういうわけで二空派の俺は、迷うことなく隅から2席目の定位置で、これまた学生時分と同じいつものBランチをかき込んでいた。Bランチはハンバーグと焼き肉が一緒になった通称肉盛りランチだ。習慣というやつは恐ろしいもので、何年ぶりかにも関わらず、俺は無意識にこれを選んでいた。

 ルーチンワークな人生万歳人間は、食べるものも大概同じだ。そこに特に疑問は抱かないし、不満もない。いつもと同じという安定さこそ至高なのである。

 そうして俺が昼飯をかっこんでいる間、弐姫はといえばワンフロアぶちぬきの大食堂をふらふらと飛び回っている。物珍しいというよりは、何か目的があって探し回っているような動きに見えた。

 もしかしたら、何か思うところがあったのかもしれない。期待薄でやってきた大学だが、本当に記憶の手がかりがあったのだとしたら、大収穫だった。けれど、現実的な俺自身がそれを否定していた。比較的楽観主義ではあったが、常に最悪を想定する慎重派でもあるので、都合の良いイメージは一切排除するようにしている。棚からぼた餅的な展開など、俺の人生にはないと知っていた。

 さっさと食事を済ませて、食後のお茶をすすっていると、ようやく弐姫がこちらへ寄ってきた。人の入りは多かったが、十二分なスペースがあるため、俺の定位置であるお一人様席の周囲はガラガラで、弐姫としゃべるくらいの余裕はあった。これが混雑時なら、完全に独り言を繰り返す狂人扱いになるところだ。

 「何か思い出したのか?」

 一縷の望みをかけて聞いてみるが、案の定答えはNOだった。

 「ううん、そうじゃなくて、何か視線を感じた気がしたんだけど……気のせいだったみたい」

 「そうか。まぁ、そういうことはよくある……ん?視線?」

 軽く受け流しそうになって、違和感を覚える。弐姫が視線を感じた?姿が見えないはずなのに?

 「ちょい、待てよ。それって、お前が見える誰かがいたってことか?」

 「わかんなーい。そんな気がしただけだったし、その後気になって色々飛んで見たけど、誰も反応してくれなかったしー」

 弐姫は少し不満げに頬を膨らませていた。

 「でも、何か感じたってことだよな?今までそんな感覚あったのか?」

 「ないないばぁー。最初にあきるくんと目が合ったときだけじゃないかな。だから、やっぱ気のせいだったんじゃないかしらん。てゆーか、なんでこんな端っこで食べてるの?せせこましくない?席いっぱいあるし、もっと広いとこで食べればいいのに」

 なんということでせう。どうやら弐姫は江﨑組所属らしい、俺のような小心者カテゴリではないことはなんとなく分かっていたが、これではっきりした。ある意味、敵だ。

 その後もしつこく聞いていくる弐姫を無視して、俺は食器を下げに返却カウンターに向かう。

 なんとなく上着のシャツを引っ張られている気がするが、気にしない。ねーねーねーとかよく分からない虫の声が聞こえるのは気のせいだろう。そういう鳴き声の虫がいた気がする、いたに違いない、要するにいる。成立するのかしないのか怪しい三段論法に近い何かで納得する。

 などとくだらない現実逃避をしていると、そこで見慣れないものを見かけた。

 学食ビルの一階は、よくある学生用大食堂が8割を占めており、残り1割がファーストフード系の1店舗と二階へ続くエレベータと階段というレイアウトだったはずだが、その階段横に俺の知らないスペースがあった。元々は何だったかは思い出せないが、今見ているものじゃないことは確かだった。

 あんなものがあれば、俺の記憶にも残る。それほどそれは異質だった。

 なぜ、そんな場所にあるのか。理由がさっぱり分からない。

 俺は食器を返すと、引き寄せられるようにそこへ向かった。

 「ねーねー、あきるくん、何処行くの?」

 「いや、あんなの、おかしいだろ?」 

 俺は弐姫に同意を得るべく振り返りながら、それを指さした。

 「あんなのってなぁに?」

 「いや、だからアレだよ、アレ」

 分かりやすく指を指しているのに何を言っているのか。俺は視線でも促すためにもう一度その方角を見て、言葉を失った。

 「……え?」 

 「どうしたの、あきるくん?アレって何よー?隠し事?あっ、サプライズ演出?もしかして何かどっきりを企んでるのかな-?」

 弐姫が何か言っていたが、頭に入ってこなかった。

 確かにそこに見ていたものが、今は跡形もなく消え去っていた。それこそ、弐姫がさきほど言っていたような気のせいだったのだろうか。

 けれど、俺は確かに見たはずだ。

 そこにはテントがあった。階段横になぜか野外キャンプで使うような薄汚れたカーキ色のテントが確かにあった……はずだ。見えていたからこそ、こうして近づいてきたのだし、違和感を覚えたわけだ。

 とはいえ、事実として今はそんなものはない。掃除用具入れのロッカーと簡易倉庫につながる扉があるだけだ。思い出してみれば、確かにそんなスペースだった。白昼夢でも見たのだろうか。

 「テントがあった……気がしたんだが……おまえ、見なかったか?」

 「ほえ?何を?テント?」

 弐姫の反応を見るに、何も見ていないようだった。

 俺の気のせいなのか。

 けれど、見間違えるような物体は何もない。一方でテントなんてものの痕跡もない。第一、そのスペースがない。締め切られたドアと倉庫の位置に、さっき見たときは開けていて、そこにテントが張ってあった気がするのだが、今現在の空間的にあり得ない。

 「疲れてるのか、俺……」

 軽く目をこすって、その場を離れる。自分の見たものなら信じる派の人間だが、見た気がするだけなら、やはり気のせいなのだろう。弐姫のように継続して見えない以上、勘違いの類いだろう。

 それにしても、なぜテントなのか。

 いや、いくら考えても無駄だ。抽象的なストレスが暗示的に何か幻覚を見せたのだとしても、それを解読できるとは思えない。考えるだけ無駄だし、面倒だ。

 忘れることにする。気持ちの切り替えは得意な方だ。

 「だいじょーぶ?あきるくん?」

 「……ああ、何でもない。それで、他に見てみたいところは?」

 その後も、学食ビル以外の大学の施設を見て回ったが、めぼしい弐姫の反応はなかった。

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