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「はぁはぁ」

 息を整えながら、輪廻はそのビルに設置されている大きな画面に映る映像を見つめた。

 その巨大なスクリーンの中では、〇〇町で起こった無差別殺人のニュースが速報で流れていた。そんな嫌なニュースを、輪廻は林檎を探している途中で見てしまった。


 ……縁起が悪い。

 輪廻はそう思った。


 それからその縁起が悪いニュースが流れている巨大なスクリーンと、それから、あのビルから落っこちた女子高生のことを忘れるために、輪廻はそこからすぐに移動をしようとした。(林檎の姿も見えないし)

 しかしそのとき、ふと、輪廻の頭になにか引っかかることがあった。


 無差別殺人。

 事故。

 私の目撃した、事故の現場。

 

 輪廻は立ち止まって、もう一度、(そこはもう綺麗に片付けられてしまっているけれど、あの赤い色に染まった地面と、黄色いテープが巻かれて、警察官のかたと救急車の隊員の人たちと、それから野次馬の群衆がいた)自分の目撃した事故の現場を見つめた。


 ……ホームに落っこちるところを見たんだ。

 ホーム?

 そう。駅のホームに落っこちる事故を目撃したんだ。


 輪廻は林檎の言葉を思い出す。

 

 それは、事実そのままの言葉ではないと思うけど、林檎は確かそんなようなことを言っていた。

 確かに林檎は、『駅のホームに人が飛び降りる事故を目撃したことがある』と言っていた。


 駅?

 最寄の駅?


 そこのホームに、林檎はいるの?


 輪廻は走った。

 結論は出ていない。推測も思考もばらばらだった。でも、それは輪廻の直感のようなものだった。

 林檎は駅のホームにいる。

 そう感じて、輪廻は走った。

 自分の家の最寄駅まで、全速力で走り抜けた。

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