りんごの木

２１ 二人の東京デート ……ランデブー。宇宙。

　二人の東京デート　

　……ランデブー。宇宙。

「私たちって、惹かれ合う重力っていうのかな？　それとも引力？　そういう力をさ、お互いに持っているのかもしれないね」

　移動中の電車の中で、嬉しそうな顔で制服姿の林檎は言った。

「惹かれ合う力？　重力？　引力？」

　同じく制服姿の輪廻は言う。

「そう。似た者同士は引き合うってやつ。そういう力のこと」

　電車が目的の駅に到着したので、二人は電車を降りて、ホームの出口に向かった。ついたのは、上野駅。

　目的地は上野動物園だった。

「いこ」

　嬉しそうに林檎が輪廻を手を引っ張った。「うん」輪廻はそう言って林檎のあとについて移動した。

　朝からずっと林檎はすごく機嫌がよかった。

　それはきっと、林檎が輪廻とお揃いの制服を着ている（そして、その姿で外を歩ける）ということが一番大きな理由だった。

　輪廻は自分の思いつきを（ただ林檎とのお別れの時間を引き延ばすためだけに）林檎に提案したのだけど、その提案（あるいはお願い）は、林檎をこんなにも喜ばせて、そして笑顔にすることができた。

　そのことが輪廻はすっごく嬉しかった。

　二人は手をつないだまま移動をして、上野動物園の中に入っていった。動物園に行きたいと言い出したのは林檎だった。輪廻はその林檎の提案を受け入れた。そして、今日の制服デートのすべての日程は、林檎に任せることにした。（資金のほうは輪廻持ちだ。なにせ林檎は財布を持っていないのだから）

　二人は上野動物園でいろんな動物を見たあとで、動物園を出て、それから近くの美術館で絵画を少しの時間、鑑賞した。（絵画はムンク展だった）

　それから今度は原宿に移動して、そこでクレープを食べて、ミルクティーを飲んだりした。（どちらも流行りのお店で、結構並んだ）

　それから渋谷に移動をした。

　そこで、コーヒーショップにより、甘いクリームの入ったコーヒーを飲んで、それから、今度は新宿駅に移動をして、新宿の辺りを少しだけぶらぶらと散歩した。

　新宿御苑の中で緑色の森の中を散歩していると、ぽつぽつと空から、雨が降ってきた。

　今朝、輪廻のマンションを出かけるときは、空は青色に晴れ渡っていた。でも、新宿に着たあたりから、急に空模様が変わった。

　空は灰色の雲に覆われるようになって、ついに今、雨が降ってきてしまったのだった。

「林檎。このあと、どうする？」

　公園の中にある木製の休憩所小屋中で輪廻は言った。

　すると、「水族館に行きたい」と林檎は降ってきた雨を見ながら輪廻に言った。