8 紙ヒコーキ

 紙ヒコーキ


 ……一緒に、空を飛んでみませんか?


「私の家に来ませんか?」

 輪廻は言った。

「輪廻の家に?」

 目をぱちぱちとさせて、林檎は言う。

「うん」

「……私が? 行っていいの?」

「もちろん」

 にっこりと笑って、輪廻は言う。

 林檎は少しの間、なんだかぼんやりとした表情をしながら輪廻のことをじっと見ていた。

 そんな林檎に向かって、輪廻は林檎を安心させるようにして、もう一度、にっこりと優しく笑って見せた。

 すると林檎はしばらくして、ゆっくりと歩いて輪廻のすぐ目の前までやって来た。

「……宜しくお願いします」

 顔を赤くした林檎は、少し下を向きながら、小さな声で輪廻に言った。

「こちらこそ」

 輪廻は言った。

 それから二人は一緒に歩いて、輪廻の住んでいるマンションまで移動することになった。


 その途中で二人は林檎の荷物を取りに行くために、近くにある公園に寄り道をした。

 その公園は都内の真ん中にある小さな公園で、その公園の中にある丸い遊具の中に林檎の荷物が置かれていた。

 それは取っ手のついた小さな四角いピンク色のトランクだった。

「これで荷物は全部なの?」

 輪廻は聞いた。

「そうだよ」

 トランクを持ちながら、林檎は答える。

「じゃあ、行こう。わざわざごめんね」

「別にいいよ」

 輪廻がそう言ったあとで、二人は手をつないで歩いて(はじめに手を握ったのは林檎からだった)、また夜の東京の街の中を歩き始めた。

 夜風が、すごく気持ちよかった。

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