よく見ると、林檎は輪廻と同い年くらいの少女に見えた。

 実際に年齢を尋ねてみると林檎は輪廻に「七月七日生まれの十六歳です」と答えた。

 輪廻も十六歳だったので、二人は同い年ということになる。

 しかもそれだけではなくて、輪廻と林檎は偶然にも誕生日が同じだった。林檎は輪廻が尋ねてもいないのに、自分の誕生日を輪廻に言った。

 その自分と同じ七月七日という林檎の誕生日を聞いて、輪廻はとりあえず林檎にご飯をおごることに決めた。

 輪廻はきょろきょろと周囲の風景を見渡した。

 そして輪廻は、「……えっと、じゃあ、あそこにあるファミリーレストランでいいですか?」と、道路の向こう側にあるレストランを指差して、そう言った。

「え? いいんですか!!」

 目を丸くした、すごく驚いた表情で林檎は言う。

 きっと自分でもきっと、こんなに話がうまくいくとは思っていなかったのだろう。

「いいですよ」

 と、にっこりと笑って輪廻は言った。

 すると林檎は「ありがとうございます! あなたは私の命の恩人です!」と言って、輪廻の両手を握って、とても嬉しそうな顔ではしゃぎながらそう言った。

 その林檎の顔があまりにも無邪気で、本当の本当に嬉しそうだったので、輪廻はついにっこりと、今度は無意識に、なんだかおかしくて本当の笑顔で笑ってしまった。

 輪廻がそうして誰かの前で演技ではなくて笑うことは、本当にすごく久しぶりのことだった。輪廻はなんだかそれだけで、この林檎という少女のことがすごく好きになった。

「私、輪廻って言います。三枝輪廻です」

 そう言って輪廻は林檎に自己紹介をした。

「私は林檎です。二木林檎。宜しくお願いします」

 と林檎はもう一度、今度は深々と頭を下げながら、輪廻に自己紹介をした。

「お辞儀なんてしなくていいですよ」

 輪廻は言った。

 それから輪廻は片手を林檎に向かって差し出した。

 最初はなんだろう? とその手を見ていた林檎だったが、それが握手を求めているのだとわかると、少し恥ずかしそうにしながら手をジャージで拭いて、それからしっかりと輪廻の手を握って握手をした。

「よろしく」

 にっこりと笑って林檎は言った。

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