2023年までの論文まとめ ⑥首の怪我が原因で?

 2022年、現在はミネソタ大学神経学部に所属されているCha Yoon-Hee(チャ・ユンヒ)准教授じゅんきょうじゅが論文で、新たな血管病因学けっかんびょういんがくのアイデアにもとづく、振動性めまいの潜在的せんざいてきな原因について発表されました。


 血管病因学とは、血管に関連する疾患しっかんの原因を研究する医学の一分野いちぶんやです。


 振動性めまい(回転性でなく、頭や体が揺れている感覚)の潜在的な原因として考えられるものは、特に頸部けいぶ(くび)の過労や外傷による頸椎けいつい(首の骨)の誤配置(ごはいち不調和)、筋肉痙攣けいれん、血管圧迫。


 それらが、首や上胸部じょうきょうぶ(胸の上部)の過剰かじょう使用や外傷によって引き起こされる場合、外頭静脈狭窄がいとうじょうみゃくきょうさく発現形態はつげんけいたいとしての振動性めまいという新しい考え方が、提唱ていしょうされています。


 外頭静脈狭窄がいとうじょうみゃくきょうさくとは、頭部や顔面からの血液を心臓に戻す役割を持つ静脈の一つ(耳の後ろから始まり、首の側面を通って鎖骨さこつの下にある静脈角じょうみゃくかくに合流)がせまくなり、頭部の血流がさまたげられることで、れや痛みなどの症状が現れることがあります。

 加えて、めまいや頭痛などの症状が生じる可能性があるということです。


 そのため、現在は行われていない新たな治療法が、出てくるかもしれません。



 同じ論文中、准教授は主に、下船病や非運動誘発性ひうんどうゆうはつせいの持続的な振動性めまい(nmPOV)と前庭片頭痛ぜんていへんずつうとの関連性においてページをいています。


 非運動誘発性の持続的な振動性めまい(nmPOV:Non-motion triggered persistent oscillating vertigo)は、めまいの一種で、患者かんじゃが静止しているときにも、継続的に揺れ動く感覚を覚える症状のこと。


 nmPOVの特徴として、乗り物に乗っていない状態でも、船に乗っているかのような揺れる感覚を自覚します。

 逆に、乗り物に乗っている間は、不快症状ふかいしょうじょうを自覚しないことがあります。

 投薬治療とうやくちりょうやリハビリテーションは、効果が限られることが多いです。


 nmPOVは、下船病と似ていますが、乗り物に乗ったり降りたりすると症状の程度が変わる下船病と違い、症状の発現はつげんパターンも異なります。


 下船病やnmPOVと前庭片頭痛ぜんていへんずつうには、めまいやバランスの問題、頭痛などの共通する症状があります。

 従って、これらは同じメカニズムにもつづいている、という可能性があります。


 下船病やnmPOVと前庭片頭痛には、ベンゾジアゼピン(抗不安薬こうふあんやくや睡眠薬など)やセロトニン再取さいとり込み阻害薬そがいやく(SSRI:こううつ薬の一種)、前庭リハビリテーション(Vestibular Rehabilitation)などが有効と報告されています。


 前庭リハビリテーションは、前庭機能障害ぜんていきのうしょうがいによるめまいや平衡障害へいこうしょうがいを改善するための運動療法で。

 特に、前庭系の機能低下によって生じる症状を軽減し、日常生活の質を向上させることを目的としています。


 具体的には、親指やカードを見ながら頭を左右、または上下に動かす頭部運動訓練。

 頭を回転させながら指標しひょうを見続ける、眼球運動と頭部運動の協調訓練きょうちょうくんれん

 バランス訓練。

 特定の頭位変換とういへんかんを行い、耳石じせきを元の位置に戻す耳石置換法じせきちかんほうがあります。



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