めまいの種類と私自身の既往歴

 めまいには、真性しんせいのめまい(回転性)と仮性かせい浮動性ふどうせい)のめまいがある。


 回転性のめまいは、静止しているはずの周囲のものが、円を描いているような感覚になる。

 主に内耳ないじ前庭ぜんてい半器官はんきかん前庭神経系ぜんていしんけいけい(つまりは耳)の障害で起こることが多く、脳幹のうかんや小脳の病気(血管の障害や腫瘍しゅよう)のこともある。例えばメニエール病。

 吐き気や嘔吐おうと、頭痛をともない、体位たいいや頭の位置を変えることで、めまいが酷くなるという。


 下船病も、体位を変えることで、めまいが悪化することがある。

 頭痛や吐き気を伴うが、私は吐いたことはない。


 浮動性のめまいは、足元がぐらついたり、くらくらしたり、浮いたような感覚を覚える。目の前が暗くなるような感覚や、立ちくらみを感じたりするといった体の不安定感。


 周囲が上下や左右に揺れる。


 血圧の変化や血管障害、精神神経科的な病気が原因で起こることが多く、貧血に高血圧、低血圧、自律神経失調症、更には一時的な脳循環障害のうじゅんかんしょうがいなどでよく現れるという。また、脳卒中の前触れのこともあるらしい。

 ストレスも原因の一つだ。


 めまいに難聴や耳鳴りを伴う場合は、メニエール病や聴神経腫瘍ちょうしんけいしゅようが疑われる。

 下船病も、酷い時期に耳鳴りがすることはあったが、聴力は低下しなかった。


 現在、海外で行われている下船病の治療研究は、原因を脳と考えるか、耳と考えるかのどちらかに分かれている。


 下船病を知らなかった頃、私や家族は脳脊髄液減少症のうせきずいえきげんしょうしょうを疑っていた。

 ビタミンK欠乏症のため、生後一ヶ月で脳出血を起こし、水頭症すいとうしょうになりかけた私の頭蓋内には、シャントというくだが入っている。


 シャントは、血液をおへそまで流す側路そくろのことだ。


 本来であれば、中学の時に入れ換えるはすだった。

 産まれて間もない乳児に入れたシャントでは、成長に伴って、長さが足りなくなるだろうからと。

 だが、背がそこまで伸びなかったからか、異変が起きずにそのままにしている。


 CTと診察室での簡単な検査や手足の体操のようなもので、脳脊髄液減少症の可能性はあっさりと否定された。

 聞けば、脳脊髄液減少症は、頭が後ろに引っ張られる感覚がするという。


 そういう日もあるにはあったが、少ないものだった。


 ちなみにビタミンKは、血液の凝固をうながし、ほうれん草などの緑黄色野菜、肝油(動物、主にたらなどの肝臓から採取した脂肪油)、レバーなどに多く含まれるという。


 幼児の頃にはアトピーに悩まされ、花粉症をはじめ多くのアレルギーを持つ私には、下船病もどこかでアレルギーと繋がっているような気がする。

 何せ、この病気になってからというもの、口に出来ないものが一気に増えたからだ。


 下船病患者の中には、過去に転倒して怪我をしていたり、事故で頭を打っていたりする人が、少なからずいるらしい。

 そんな患者の中には、脳脊髄液減少症も患っている人がいる。


 下船病は、昼夜を問わず、回転性のめまいと浮動性のめまいに襲われる。


 脳腫瘍などを調べるPET検査(放射性トレーサーを使ったX線の断層写真撮影)をすれば、下船病患者の脳の一部(揺れに適応しようとする部分)が、過活動を起こしていることが分かるらしい。

 つまり揺れに適応しようとするあまり、今度は硬い地面に不慣れになり、悲しいことに錯覚を起こすのだ。





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