口にすると、どうしても症状が悪化する飲食物

 毎朝、寝起きに飲むコーヒーで、症状が悪化すると気付いたのは、発症から三ヶ月経った十一月下旬のことだった。


 足元が揺れる感覚に吐き気、頭の重さや、頭を握りつぶされるような締め付けだけでなく、全身、もしくは頭部が心臓になったかのように、どくどくと大きく波打ち、膨張したり収縮したりするのを感じた。

 これはお酒を飲んでも同じだった。


 鼓動に合わせて、頭部が直径二センチほど膨らむ感覚。

 コーヒーもお酒も、飲むと血管が拡張する。

 血管が開けば、揺れが激しくなる。


 これはアレルギーのようなもので、発症して三ヶ月ほどで自覚した。


 後にテレビで知ったが、下船病はカフェインと乳製品、それにアルコールの摂取で症状が悪化するという。

 口にする頻度が高いものや、含有率が高いものからダメになった。


 その余韻は、翌日にまで引きずる。


 調べてみると、カフェインには、利尿作用だけでなく、大脳皮質や中枢神経などを興奮させる作用があるらしい。


 発症した翌年の十二月に、今度は紅茶がダメになった。

 顕著けんちょだったのは、床が波打つ感覚に、頭の締め付け。飲み始めた最初の頃は、頭痛もあった。


 カフェインは、コーヒーと紅茶だけでなく、緑茶やチョコレート、コーラにも含まれる。

 ほうじ茶やジャスミンティー(ジャスミンティーには緑茶が含まれているから)にも。


 私はなぜか、緑茶を飲むと手に力が入らなくなる。

 持っているものを落としそうな恐怖。

 あくまで私の場合だが、同じカフェインを摂取するにしても、コーヒーと緑茶、それに紅茶では現れる症状が変わってくる。

 このことが、私は不思議でならない。


 チョコパイを食べた直後、頭を締め付けるような頭痛に襲われた。


 乳製品で、最初にダメになったのは、牛乳だった。

 次にヨーグルト、それからチーズ。クリームシチューにビーフシチュー、グラタンも。

 生クリームにカスタードクリーム、それにクッキー。


 シュークリームを食べると、立っている間には、ブランコで立ちこぎをしている感覚になる。


 こうなって初めて、洋菓子だけでなく、多くのカレー粉やカップ麺にも乳成分が含まれていることを知った。

 アレルギー表示の欄に、乳と表示があるもの。


 乳化剤というのは、水と油のように互いに混じり合わない二種類の液体を、分離させずに安定に保存させるためのものらしく、乳成分とは違うらしい。


 ミルクたっぷりのパンは食べられないが、未だに食パンや多くのおかずパンは食べている。

 アレルギーに乳と表示があっても、主成分でなければまだ私は症状を感じない。


 ヨーグルトは、豆乳ヨーグルトを食べ始めた。

 カレー粉は、S&Bのゴールデンカレーととろけるカレーなら食べられる(いずれも中辛)。

 クッキーが食べたければ、バターではなくマーガリンが使用されている源氏パイを食べる。


 マーガリンの原料は、大豆油や落花生油らっかせいゆ綿実油めんじつゆなどの植物性油脂を主体にしたものが多いという。

 つまり乳製品ではない。


 アイスクリームが食べたければ、かき氷やのみかん味と桃味を選んでいる。ガリガリ君も、味の種類によっては乳と表示されていないものがある。

 意識して探してみれば、口に出来るアイスもある。


 ヨーグルトを食べたければ、豆乳ヨーグルトを。牛乳が飲みたければ、代わりにアーモンド効果か豆乳を。フルーチェが食べたければ、特濃豆乳を使う。


 断続的に地面が波打たなくなった後も、私はたまに下船病が悪化する飲食物をわざと口にして、その都度出る症状を確かめていた。

 セルフ人体実験と呼びながら。




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