発病初期からフラフラで

 朝起きると、酷いふらつきがした。

 最初の五日間は、ふらつきだけだった。


 六日経ち、TVやパソコン、携帯電話の画面を観るのが辛くなった。

 ふらつきは酷くなり、めまいと吐き気も感じるようになった。


 一週間が経つと、目を閉じたときに、自分が右回りに回転しているような感覚を覚えて、まるで独楽こまになった気分だった。

 それはどんなに頑張っても、自力で回れるスピードではなかった。

 歩行が困難になり、文字が目に入ると吐き気がした。


 九日目、手足が震え出し、こめかみに圧迫感を覚えた。

 寝る体勢だろうが、立っていようが気分は悪く、一番楽だったのは体操座りだ。


 十一日目に、国立の大学病院の、脳神経外科を受診した。

 国道を通り、家族の運転で、往復四十キロ弱の距離。この時にはまだ、乗り物に乗ると症状が悪化するなんて、思ってもいなかった。

 CTを撮ったが、原因は不明。

 この日、面白かったのは、左手が勝手にビクビクっと動いたことだ。


 病院へ行った翌日、頭がずっと熱っぽかった。

 相変わらず、めまいと吐き気は続いていて、変わったことといえば、横になって下にした方の頭の(枕に付けていた)部分に痛みを覚えたことだ。

 まるで頭蓋骨が剥き出しになり、そこに拳を力一杯押し付けられているかのような。


 九月最初の金曜日、今度は私立の大学病院へ行き、着いた頃にはぐったりだった。

 またもや家族の運転で、往復六十キロ近く。

 検査結果は異常なし。

 翌日はめまいの他に、初めてラフティング(ゴムボートやいかだで川の急流を下るスポーツ)をしているような感覚が加わった。

 仲間入りする症状は、頼みもしないのに増えていく。


 頭痛とめまいが、軽くなったり酷くなったりしながら、今度は心臓に痛みを覚えるようになった。

 発症から二十四日目のことだ。


 三十日目に、国立大学病院に近い、公益社団法人の病院の、耳鼻咽頭科を受診した。

 詳しい検査をするために、翌週にまた来るよう言われた。

 この日のめまいは、回転性のものではなかった。

 また、発病して初めて、耳鳴りがした。


 再び耳鼻咽頭科を受診するまでに、新しく増えた症状は、体に熱がこもるというか、常に熱かった。

 まるで熱中症にかかっているときのようで、水でシャワーを浴びようが、氷やアイスや口にしようが、体が熱い感覚は消えなかった。

 かといって、体温を測っても、熱が出ているわけじゃない。


 後で調べて分かったことだが、気温の変化(暑かったり寒かったりすると)でも、下船病の症状は悪化するのだ。

 だからせめて、現状維持を望むなら、快適な温度の中で、大人しくしているしかない。自分が楽だと思える体勢を、日々模索しながら。

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