第38話 運命の黄色い糸 二十三

 そのデートの日、由利加は俺より少し遅れて、待ち合わせ場所に到着した。

「ごめん~克也。待った?」

「いや、それはいいけど…。

 今日は由利加に、話があるんだ。」

「え?話って、何!?」

 そしてその後俺は、由利加にそのショッピングモールの一件を、話した。

 「で、あの男は…誰なの?」

 「なるほど~。もしかして克也、嫉妬してる?」

「そ、そんなんじゃねえけど…。」

俺はそう答えたが、鋭い由利加のことだ。俺の本心はお見通しだろう。

 「そっか。でも大丈夫。安心して。あれは…私のお兄ちゃんだよ。」

「え、お兄さん…?」

「そう。実はね、私たちのお母さん、12月が誕生月なんだ。それで私、お兄ちゃんと2人で、お母さんのプレゼントを選びに来てた、ってわけ。

 克也が疑うなら、この場でお兄ちゃんに電話かけてもいいよ。」

「いや、そこまでは…。」

『ああ、そうだったんだ。由利加のお兄さんに嫉妬して、俺って、本当にバカだな…。』

俺は内心でそう思いつつも、そこにはホッとしている自分がいた。

 「あ、克也ホッとしてるでしょ?表情がさっきまでと違うよ!」

「え、あ、まあ、いや…。」

「でもねえ克也、それって冷静に考えれば、分かることだと思うんだよね。

 だって私とお兄ちゃんとの間に、『運命の糸』、見えた?」

 『た、確かに…。』

そういえば由利加とお兄さんの間には、赤い糸も黄色い糸も青い糸も見えなかった。なるほど、確かにその通りだ。

 …えっ!?

 「ちょ、ちょっと待って由利加。それって…。」

「そう。克也、私たちの間の糸、まだ見えてる?」

「あ、ああ…。

 でも由利加がどうしてそれを…。」

「実は、私にも見えるんだ。

 運命の黄色い糸。」

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