第31話 運命の黄色い糸 十六
その日、その美術館では、「ダリ展」が、開催されていた。
「克也~、私、ダリってそんなに詳しくないんだけど…教えてくれる?」
「ああ、もちろん!」
前にも少し触れたが、俺は美術は割と得意な方だ。もちろん、美術作品に対する造詣も深い…と自分では思っている。
「ダリっていうのは、スペイン・フィゲーラス出身の画家で、」
「シュルレアリスムの代表的な画家として知られてるんだっけ?」
「何だ、知ってんじゃんかよ!」
俺は由利加の発言にそう素早くツッコミをいれた。
「あ、でもそれ最近調べた知識だよ!
ホントに、今まで美術には、全然詳しくなかったから…。」
…こいつは嘘をつくタイプではないので、まあそれは本当なんだろう。
「じゃあ、シュルレアリスムは知ってんの?」
「うん。それも調べてきたんだけど、『シュルレアリスムは現実を無視したかのような世界を絵画や文学で描き、まるで夢の中を覘いているような独特の非現実感を与える』んだよね?」
「さすが由利加、だな…。」
「あ、でも、私ネットでちょっと調べただけだから、詳しいことはホントに分からないんだ。
だから今日、ダリの作品見るの、ホントに楽しみ!」
由利加が美術に興味を持ってくれることはいいことだ。しかし、俺はふと疑問を口にした。
「でも由利加、何で『美術館に行こう』って、言ったんだ?
俺は元々美術が好きだから、いいけど…。」
「あ、それは、新たな境地に行きたい、っていうか、何ていうか…。
あと、克也が美術が好き、って前に圭太くんから聞いて、自分も興味持とうと思った、っていうか…。」
そう言う由利加は少し恥ずかしがっている、それは決して敏感ではない俺にも分かることであった。
「由利加、もしかして恥ずかしがってる?」
「もう~そんなことないよ!
早く行こ!」
俺はそんな由利加を微笑ましく思ったが、それ以上その話題を引っ張ると逆襲を受けそうなので、由利加に従って美術館内に入った。
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