第32話 運命の黄色い糸 十七
そして、肝心のダリ展は…。
「素晴らしい」の一言であった。
特にその中で気になる絵は…、少々ありきたりかもしれないが、やはり彼の代表作、「記憶の固執」だ。
俺は、その作品を今まで写真やネットで見たことはあったが、生で見るのは初めてであった。そして、その「記憶の固執」を生で見ると…、
まず、絵の中に描かれているぐにゃぐにゃの時計を見て、俺は「時間」というものの存在意義を改めて問いかけられているような気にさせられた。そして、それはそれ以外の背景とも相まって、時間を超越した、夢の中にいるような気にさせられる…、これが、「超現実主義」と日本語で訳される、「シュルレアリズム」の真髄なのだろうか、俺はこの1枚を見て、そんな風にも感じた。
「克也、あの『記憶の固執』だっけ?すごい絵だったね。」
美術館の展示室から出た後、由利加は俺にそう話しかけた。
「だろ?俺もあの絵が1番良かったよ。」
「そうだね。私、もちろん美術は初心者なんだけど、何かあの絵幻想的で、何て言うか…、とにかく良かった!
ごめんね、こんな感想で。克也に聞かせられるような感想じゃないよね。」
「いや、そんなことないよ。
俺は由利加に、美術に興味を持ってもらえて嬉しいよ。」
「そ、そう?何か照れるなあ~!」
そう言う由利加は、少しドキッとしたのだろうか?俺は由利加の態度を見てそう感じたが、口に出すのを止めた。
「でも克也、今日は本当に楽しかったから、また2人で美術館巡りしようね!
私、本当にアートにハマりそう…。」
「そっか。俺も今日は楽しかったよ!
まあ俺で良ければ、ある程度のレクチャーはするから。」
「おっ頼りになりますねえ~佐藤克也先生!」
「いや、先生はガラじゃねえから止めてくれない?」
「え~何かかっこいいのに~!」
俺たちは、こう冗談を言い合って、笑った。そして、一緒に美術館を後にした。
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