第26話 運命の黄色い糸 十一
まあ一応楽しかったカラオケも終わり、俺たちカップル2組は、それぞれ別々に帰ることになった。
そして、その帰り道、由利加は俺に、
「何かさ~あのカップルって、いい意味でも悪い意味でも『お人好し』って感じだよね~。」
と言った。
いつものアレが始まった…と思った、その直後。
「でも、2人とも何か純粋で、いい感じだったよね。
何かああいうの、羨ましいなあ。」
…そう言う由利加の目は、どこか遠くを見ている気がした。俺はその由利加の横顔を見ていたのだが、何か、その横顔も含めて、由利加の存在が、この場所ではないどこか遠くに行ってしまったのではないか、俺はそんな風にさえも思ってしまった。
そして、そんな由利加の行き先は、決して幸せな所ではなく、悲しみに包まれた所ではないか…?俺は由利加の表情から、ガラにもなくそんなことまで思わせられた。
『俺は由利加を、そんな悲しみにあふれた所から連れ出してあげたい、もっと幸せな所へ、連れて行ってあげたい、のか…?』
俺は、自分で自分の中から出て来たそんな感情に驚いていると、
「何~どうしたの克也?もしかして、私のこと改めて、かわいいとか思ってる?」
「べ、別にそんなんじゃねえよ。」
そこにいたのは、そんな場所(?)から戻った、いつもの「腹黒」由利加であった。
「またまた~別に隠さなくてもいいじゃん!」
「だから、そんなんじゃねえって!」
俺は、少し顔を赤くしながら、そう答えた。
ただ俺はその時、
『でも、いつもの由利加と違って、今回は俺の思ってること、正確には読まれてないな…。
いや、もしかして由利加は俺の思ってること、全部分かっててあえてそれに触れない、のか…?』
俺は、ふとそんなことを思った。
「じゃ、私こっちだから。
またね、克也!」
「おう、またな!」
俺は、そんな由利加への思いを隠して、その日はそう言って由利加と別れた。
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